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七英雄物語
作:七英雄



第1部 第4章 希望と絶望の刃 その6


アル山へ続く道。
 エグリアース達が倒したのか、絶望獣の死骸の間をファミリストンは歩いていた。
 足取り重く、山の頂上目指して進んでいたが、全く距離を稼げていない。
「・・くそ」
 ふがいない自分に情けなさを感じる。
 その時。
 一陣の風。
 ファミリストンの横を吹き抜ける人。
「・・・ハッシュ?」
 走り抜けるハッシュの姿を見たファミリストンは驚愕した。それは、ハッシュの持っている剣を見たためだ。
「先に行くぞ」
 すり抜けざまに言ったハッシュはあっという間に先へと消えていった。
 唖然と見届けたファミリストンはその場に立ち尽くした。


 セラミス王が召喚した複数の絶望獣ジャムに追われながら、ドゥージ、エグリアース、オキュラスの3人は頂上へ向けて走っていた。
 途中追いつかれそうになる度に、斬り捨てながら突き進む。
 だんだんとドゥージの足が加速する。
 エグリアースとオキュラスとの間が離れていく。
「おっ、おい、待てよ」
 オキュラスが叫んだ。
 ドゥージはその叫びを無視して足を止めない。
「エグリアースさん、あいつ、俺達を置き去りにする気ですよ」
 オキュラスはエグリアースを見た。
 後ろから迫ってくる絶望獣をドゥージは相手にする気がない。その相手はオキュラス達に任せればいいと判断し、ドゥージ本人はセラミスの元へと行くつもりなのだ。
「・・・仕方ない、戦うぞ」
 エグリアースは言った。
 ドゥージの手助けをしているようになってしまったために、オキュラスは不満気な顔をしたが、このまま逃げてる間に絶望獣の餌食になるのはごめんだ。
 2人は足を止め、剣を構え、迫ってくる怪物達を待ち構えた。


 アル山頂上。
 気配に気づいたセラミスが言葉を漏らした。
「きたか・・・パール族の戦士よ」
 遠くからドゥージの姿が現われる。
 少しだけ息を切らしているが、すぐに整えた。
「ここが・・お前の死に場所だ。セラミス」
 ドゥージは近づきながら言った。
 セラミスは高笑いした。
「くくく・・・・。先に死に場所になった者もいるがな・・・・」
「なに?」
 セラミスの視線を追う。ドゥージの目が見開いた。
 そこに倒れている人は。女は。ダヴァニータだった。胸を一突きされ、息絶えている。
「セラミスゥゥゥ〜!!」
 ドゥージの雄叫びが上がった。
「ほほう、冷酷だと思っておったが・・感情的になるんじゃの・・・」
 セラミスは挑発するように、魂無きダヴァニータの身体を足で踏んだ。
「もう・・ただの・・・塊じゃ。実験もできん」
 ドゥージの中で何かが切れた。一族の恨み、身内を殺され、その死体にも侮辱をかけるセラミスに今まで以上の憎しみが身体中を駆け巡る。
 だが、それは、セラミスの作戦であった。人間どんなことがあろうとも冷静さが一番の武器である。焦ったり、怒りはその場その場の瞬時の判断を鈍らせる。
 ドゥージはその冷静さが強い。そこを崩すしか勝機がないと思っていたセラミスの前にダヴァニータが現われたのは運が良かったといえる。
 そして。セラミスの予定通りに、ドゥージは怒りで身体を包み込んだ。
「セラミスゥ〜!」
 かつてない速さでドゥージが迫ってくる。
「ハミルよ!」
 セラミスも大声を出す。
 キシャアアアアアアア!
 突然、ドゥージの背後から、絶望獣ハミルが出現した。
 隠れていたのだ。全ては作戦通り。冷静さを失ったドゥージは周りの気配を感じる前に行動を起こしたのだ。
 普段なら察知できることを、ここでは見逃した。
 ドゥージの能力。身体を鉄の硬度にする能力は間に合わなかった。
 ハミルの大きな腕がドゥージを襲った。


「ぐっ」
 エグリアースがジャムの鋭い爪を受けた。寸前でなんとかかわしたため軽傷で済んだ。
「エグリアースさん」
 オキュラスがすかさず護衛に回る。連続攻撃は許さない。
 全神経を集中させているせいか、一進一退の攻防が続いていた。
 しかし、人間と獣。体力の差がどうしてもでてくる。どんどん低下するオキュラス達の体力に対して絶望獣ジャムの体力は底知らずだ。
 僅かだが均衡が破れつつあった。
「こ・これまでか」
 エグリアースが言った。
 それを聞いたオキュラスは激しく言った。
「何を言ってるんですか!諦めては駄目ですよ!まだ戦えます!」
「いや・・駄目だ・・体力がもたん。オキュラス、ここは俺が死ぬ気で食い止める。お前は早く頂上へ行け」
 オキュラスの言葉に首を振りながらエグリアースが答える。
「そ・そんな・何を言うんですか」
 そんな2人のやりとりの隙をついて、ジャムが襲い掛かる。剣で防御しながらかろうじて避ける。
「早く・・早く行けオキュラス!何も2人も死ぬことはない。俺だけで充分だ」
 エグリアースは叫んだ。・・・・。オキュラスの返事がない。まさか、避けられなかったのか?エグリアースはオキュラスの顔を見上げた。
 オキュラスは遠い目をしていた。その視線は怪物を見ていない。更にその奥を見ていた。
「オキュラス?」
 ジリジリと絶望獣が寄ってくる。
 気にも止めずにオキュラスが言った。
「大丈夫です。エグリアースさん。助かりました」
「なに?」
「俺達は死ぬことなく、頂上へ行けますよ」
 希望に満ちたオキュラスの顔。エグリアースはオキュラスの視線の方向を見る。
「・・・・・あ・・」
 疾走する者。
 駆け上がって来る者。
 白い髪をなびかせながら。
 大きな、自分の身体よりも大きな剣を片手に持って。
「な・・なんだあの武器・・大剣は・・」
 白髪の男、ハッシュが現われた。
「うおりゃあああ」
 ハッシュは豪快にその大剣を振り回した。
 その場に集結していた絶望獣ジャムは、気づく間もなくこの世界から永遠の別れを告げられた。


〜第4章 希望と絶望の刃 終  第5章 つづく〜












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