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七英雄物語
作:七英雄



第1部 第4章 希望と絶望の刃 その5


「死ねぇ!セラミス!」
 パール族ダヴァニータが飛び込んだ。
 だが、それよりも早く、絶望獣ハミルがセラミスの前に回りこんだ。
「ちっ」
 身を翻してダヴァニータは斬りかかるのをやめ、間合いをとる。
 セラミスの眼光が怪しくダヴァニータの姿を捉える。
「パール族の者か・・・お主も・・」
「パール3兄弟。ダヴァニータだ。一族の恨みを受けろ、セラミス」
 これまでのふざけた言動とはうってかわって、憎しみを含めて言い放った。
「ふん。この我が傑作、ハミルの攻撃をかわすことができ、なおかつ、倒すことができるのであれば・・・な」
 キシャアアアアアアア。
 ハミルの雄叫びが大地を揺らす。
 シュッ。と風を切る音がしたかと思うと、ハミルの姿はそこにはなかった。
「なっ」
 ダヴァニータが目を疑う。ハミルを見失ったのだ。
「ふっふっふっ」
 不敵な笑みをセラミスは浮かべる。
 ダヴァニータが後ろに気配を察知した時には。
 既に。
 遅すぎた。
 ダヴァニータは、刃がハミルと1回も交わることもなく、その場に崩れ落ちた。


「くっそう」
 オキュラスが怒りの声を上げた。
「なんでだ!なんでだよ!」
 声を荒げながら剣を振るう。次から次へと現われる絶望獣を薙ぎ倒している。
「そう言うな。この状況では仕方ない」
「だけど、エグリアースさん」
 納得いかない顔でエグリアースを見る。
 エグリアースはいたって冷静に目の前の敵と戦っている。
 複数の絶望獣の声を聞いたエグリアースとオキュラスの2人は、急いで声のした方向へと走った。そこには、途方もない数の絶望獣ジャムと交戦していたパール族ドゥージがいた。
 この時点で、ジャムを召喚したのはセラミス王だということがわかった。
 オキュラスとすれば、真っ先にドゥージを斬り倒したかったが、襲いかかってくるジャムの相手をするはめになり、ドゥージへの攻撃はしたくても出来ない。第3者が見ると、協力して戦っているように映るだろう。
 オキュラスはそれが気にいらなかった。あくまでも、仕方なしに戦っているのであって、決して一緒に協力してるわけではない。本心はジャムよりも先にドゥージの息の根を止めたいのだ。
「やめておけ、オキュラス」
 隙あらば、ドゥージを狙っているオキュラスをエグリアースは諭した。下手に意識をバラバラにすると、集中力が途切れてしまい、命を落とす原因になる。まずは、今やるべきことをするしかない。絶望獣ジャムをせん滅することだ。
「きりがないな」
 ドゥージは呟いた。これほどの数の絶望獣を召喚するとは、セラミスの力は侮れない。
 ちらりと、オキュラス達を見る。
「おい」
 ドゥージに突然話しかけられて、オキュラスは驚いた。
「ここを抜けるぞ」
「・・・・は?」
 ドゥージは大きく刃の腕を振り回し、ジャム達を吹き飛ばした。僅かだが、道が出来る。ドゥージは駆け出した。そして、振り返り呆気にとられているオキュラスをもう一度見る。
 意図を悟ったエグリアースもドゥージの後に続いた。
「こい、オキュラス」
「えっ?えっ?エグリアースさん?」
 さすがのドゥージもこれだけのジャムを間を抜けることは不可能だ。ここを切り抜けるには、エグリアースやオキュラスと一時本当に協力してでも抜けないと脱出は困難だ。こんな所で道草している場合ではない。一刻も早くセラミスの元へ行かないといけない。
 3人は、ジャムに追いかけられながら、頂上へ向かって奥へ奥へと進んでいった。


 海岸。
 ハッシュは、打ち上げられているボロボロになった舟を見下ろしていた。
 自分が乗ってきた舟。よくここまできたものだ。我ながら感心する。
 ハッシュは舟の辺りを探り始めた。運が良ければ、あるはずだ。自分専用の武器が。
 引っくり返って船底を露わに出している舟本体を元に戻した。
 自然とハッシュの顔が笑顔になる。どこにいくこともなく、流されることもなく、ハッシュの武器は堂々と、そこにあった。


 森の中。
 ステューは前触れもなく、いきなり起き上がった。
「うわあ」
 驚いたボズが大声を上げた。
 ステューは辺りを見回す。そこには、同じくらいの男と女、ボズとアリシェしかいなかった。痛みが走ったので右腕を見た。包帯がしてあり、血が止まっていた。思わずボズを見る。
「・・・お前が・・・・」
「まあ・・全部アリシェだけどね」
 ステューの問いかけに、ボズはアリシェを見ながら言った。恥ずかしそうにアリシェは俯いた。
「・・・・・・っ」
 礼を言いかけたが、ステューは口を閉じた。よく考えれば、子供とはいえ、憎っくきゲルニア国の人間である。恨みのある国の者に命を救われたことがわかれば、どんな叱咤を言われるか・・。だが、救ってもらったのは事実である。
「ありがとう・・」
 戦闘能力は桁外れでも、ステューはまだ子供である。心の奥にまだ素直で純粋な気持ちが残っていたかもしれない。セラミスとパール族という宿命さえなければ、普通の子供として生活しているはすだ。
 ほっとした表情になったボズは恐る恐る聞いてみた。
「僕はボズ。君は・・・」
「ステュー。俺の名前はステュー」
「ステュー、君は、あの、その」
 言いにくそうなボズの心境を察して、ステューは答えた。
「敵か?ってことだろ」
「え、あ・・・うん」
 ステューは大きく息を吐いた。嘘はつけない。ついてもすぐにバレるはずだ。むしろ知ってて聞いているのかもしれない。
「・・・・・敵だ」
 ステューは言った。
 アリシェは口を押さえ、ボズの後ろに隠れた。
 ボズはやっぱりという顔だったがショックは隠せなかった。
「お前らの・・知り合いや・・家族を・・殺したのも・・俺だ」
 この場におられないと思ったのか、ステューは立ち上がり、歩き出した。
「・・・・・・すまん」
 一言告げて、ステューはアル山の頂上へ向けて森の奥へ消えていった。


つづく。












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