七英雄物語(24/33)PDFで表示縦書き表示RDF


七英雄物語
作:七英雄



第1部 第4章 希望と絶望の刃 その4


 グロン村が滅ぼされた悪夢の夜から半日が過ぎようとしていた。
 ゲルニア国の人間はパール族によって殺された。
 今、この島には、セラミス王、絶望獣になったハミル。パール3兄弟のドゥージ、ダヴァニータ、ステュー。ゲルニアの戦士、ファミリストン、エグリアース、オキュラス。グロン村の生き残りボズとアリシェ。そして、異国の白髪の男、ハッシュの11人しかいない。
 それも、これから始まるゲルニア国最後の戦いで、この地に立っているのは何人になってるのだろうか。


 アル山の頂上に向けて、ドゥージは歩いていた。運が良いことに、道がしっかりと示している。今のところは、道に迷うことはない。
 このまま、簡単に頂上までは行かせてはくれないだろうと、ドゥージは思う。何かしかけてくるはずだ。
 そう思ったと同時に聞き慣れた叫び声。
 キシャアアアアア。
「ふん、やはりそうか」
 ドゥージの予想していた通りだった。セラミスは必ず、絶望獣ジャムを召喚して襲わせてくるだろうと。
 地響きが鳴り、だんだんと近づいてくる。相当な数のジャムが向かってきている。
 ドゥージの両腕が刃に変わる。
 気持ちを落ち着かせるために、すぅーと息を吸って、ゆっくりと吐く。
「ゆくぞ、セラミス」
 ドゥージは、走り出し、襲いくる怪物の中に突入していった。


「今の声は」
 少し遅れて、同じく頂上へ向かっているエグリアースとオキュラス。絶望獣ジャムの叫び声に反応した。
「忘れるものか、あの怪物だ」
 エグリアースが言った。
「すぐ近くですね」
 オキュラスも頷きながら答える。
 絶望獣を扱えるのは、パール族だけではない。セラミス王も扱えるのだ。2人は、どっちの獣なのか、わからなかった。
 ただ、言えることは、パール族かセラミス王が近くにいるということだった。
「いくぞ」
 エグリアースは剣を抜く。
「はい」
 オキュラスも辺りを警戒しながら、声の方向へと走り出した。


 ハッシュとファミリストンも、アル山へ向かって、歩いていた。早く進むように急いではいるが、ファミリストンの足取りはまだ重い。自然と動きは遅くなる。
「すまんな」
 ファミリストンは申し訳ないように言った。
「仕方ない。応急処置とはいえ、すぐには動くことは出来ないさ。俺は医者でもないしな」
 ハッシュは気にすることもなく言った。
 アル山へ登る途中の道で、島の全体ではないが、ある一部分の海岸が見える位置がある。
 ハッシュは何気なくその方を見た。動きが止まる。
「どうした?」
 気づいたファミリストンが話しかけた。
「俺は、ここにくるのに、舟で向かっていたんだ」
 ハッシュが急に喋りだした。
「そこで、まあ、舟がひっくり返って・・・運良く目的地に流れ着いたんだ」
「本島からそんなものでくるなんて無茶だな。その舟も小さいものだろ?ある程度大きなものじゃないと、ここまではこれないぞ」
 ファミリストンも思わず答えたが、なぜいきなりそんな話をするのか理解できなかった。
「その時の舟があそこに流れ着いてる」
 ハッシュは指をさした。
 ファミリストンも指の先を見る。確かにその方向には、小さなボロボロになった舟が一隻見える。しかも本当に1〜2人乗り舟だ。あんな舟でここまでくるつもりだったなんて、ファミリストンは呆れた。
「ああ、確かにな。それがどうかしたか?」
「俺の武器も一緒に流れているかもしれない」
「なに?武器?お前・・専用の武器なんてあるのか?」
「俺は剣士だ。やはり自分の手にしっくりくる物じゃないとな。あるかどうかわからないが、取りに行ってくる」
 ハッシュの言ってることも一理ある。これから命を懸けた戦いの中で自分の武器は重要だ。今まで使い慣れた武器を持つことは大事なことだ。
「わかった、俺は先に行っている。早く取りにいってこい」
「すまん」
 ハッシュは海岸へと向かった。
 ファミリストンは1人で歩き出した。だが、早く進むことはできない。ハッシュが戻ってくるまでに、きっと進んでいないのだろう。ファミリストンは今の自分の状態を悔しく思った。


「肉が裂き、剣を振るう音が聞こえる。始まったか」
 目を閉じたままでセラミスが呟いた。
 パール族のドゥージと召喚したばかりの絶望獣との戦い。風が運ぶ僅かな気配を感じとっているのだろうか。
 セラミスの眉がピクリと動く。
「ほう・・・。誰よりも早く・・ここに辿り着いた者がいるのか」
 セラミスが目を開けた。
 絶望獣ハミルが唸る。
 ザザッ・・。風が吹く。森の木々が揺れる。葉が飛び交い、ほんの一瞬セラミス達の前に舞う。
 その隙を待っていたかのように、飛び出した影。
「セラミス!覚悟!」
 飛び出して来たのはパール族ダヴァニータだった。刃に変化した腕が、セラミスに向けて振り下ろされた。


つづく。 












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう