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七英雄物語
作:七英雄



第1部 第4章 希望と絶望の刃 その2


「そんな馬鹿な」
 ファミリストンの悲痛な声が、町中に響く。
 ティファレン城下町内。
 パール族なる得体の知れない者達の襲撃、村の壊滅、町の全滅、城の崩壊、ゲルニア国は絶滅寸前まできていた。
 そこでの真相。部下達が見てきたことの報告を聞いて、ファミリストンは素直にその事実を受け入れることはできなかった。
 スライ将軍の死。ウィスケルの死。セラミス王が絶望獣を召喚したこと。その王が全員の命を狙っていること。
「ですが…事実です。将軍」
 悔しさを滲み出してオキュラスは言った。
「我が王が召喚した、あの怪物が、ウィスケルさんを殺しました。そして・・・アル山へと飛び出していったんです」
「…王がさらわれたという可能性はないのか」
 僅かな希望にすがるようにファミリストンは聞いた。
 言い難そうなウィスケルを見て、エグリアースが口を挟んだ。
「確かに我々は、王が怪物を召喚したところはみておりません。しかし、抵抗するわけでもなく、怪物に身体を預けながら去っていった王のその姿は…」
 ファミリストンはエグリアースの続く言葉を制した。
「もういい」
 力なくファミリストンは言った。
 話が一旦止まったのを見て、ハッシュが喋った。
「…それで、どうするんだ?」
「当然追うさ」
 オキュラスが間髪入れずに力強く言った。その瞳には決意が表れている。
「セラミス王のこともあるが、もう一つ、あのパール族は許せない。あいつもアル山へ向かっているはずだ。決着をつけてやるんだ」
 エグリアースもキュラスの言葉に頷いた。家族や仲間を次々と殺された怒りは、王よりもパール族に向けられている。実際、手を下していったのは、あの3兄弟なのだ。
「そうだな…確かめるしかないな」
 ファミリストンも言った。まだ半信半疑の彼は、自分の目で、耳で、確かめないと確信に変えることはできなかった。
「将軍は、深手を負っています。後からきてください。我々は先に行ってます」
 オキュラスはハッシュの方を見た。
「ハッシュ…将軍を頼む」
「わかった」
 ハッシュの返答を聞くと、エグリアースとオキュラスはアル山へ足を向けた。
 2人が見えなくなるのを確認して、ハッシュがファミリストンに話しかけた。
「良い部下だな」
「ああ、まったくだ」
 ファミリストンは、ふっ、と笑う。
 本来ならば、ファミリストンの回復を待って、万全の準備を整えれば、戦力として安心してアル山まで行けるはずを、あえて、エグリアースとオキュラスは先に行く判断をした。
 それは、ファミリストンへの気遣いだった。今回の件で相当なショックを受けたファミリストンは、ああは言っても、事実を目の当たりにはしたくないはずだと認識した2人は、ならば自分達で解決することを選んだのだ。
 だが、2人が思っている程、ファミリストンは落ち込むような人間ではない。
「ハッシュ、すまんが、早急に手当てを頼む。早くあいつらに追いつかねばならん」
 無理して起き上がろうとするファミリストンをハッシュは支えた。
「ああ、わかってるよ」
 ハッシュも、ふっ、と笑い、手当てを始めた。


 約半刻後。
「ところで…」
 手当てを受けながら、ファミリストンが急に話し出した。
「そろそろ教えてくれてもいいんじゃないのか?」
「なにをだ?」
 ハッシュはとぼけた。
「お前がここに来た本当の理由を」
「…」
 ハッシュは黙っていたが、仕方ないという風に肩をすくめた。
「当たり前のことだが、太陽神と絶望神の戦いは知っているな」
「今更なにを言うんだ。当然だろう」
 この世界の神話ともいうべき戦い。太陽神と絶望神。このバロゲニアガルドが作られた最初の戦い。これがなければ、今のこの世界は存在していない。誰でも知っている話だ。ファミリストンは馬鹿にするように言った。
「その絶望神が、この世に復活する」
「なんだと?」
 ファミリストンは絶句した。神話の神が、存在して、しかもこの世界に再び現われる?そんな途方もない妄想など聞く耳はないと思いかけた。だが、脳裏に過ぎる。ダヴァニータが出現させたあの異形の怪物を。その怪物こそ、まさに神話に出てくる絶望神に仕える獣、絶望獣ジャム。実物を目の前で見た今のファミリストンは絶望神が復活する話を笑い飛ばすことは出来なかった。
「その話はどこから…?」
「俺の師匠から」
 ハッシュは話を続ける。
「絶望神が復活する。しかし、対抗するには太陽神しかいない。必ず太陽神もこの世に復活するはずだ。その時に、太陽神を守るべき戦士が、英雄が必要なんだ。この島に行けば、その英雄に会えるといわれてきた」
「ちょっ、ちょっと待て。いきなり話がとんでもない方向へいっているぞ」
 ファミリストンは慌てて話を遮った。
「太陽神も復活するって?その神を守るための英雄が、このゲルニア国に?」
「そうだ、俺は、ファミリストン、あんただと思っている」
「なっ」
 ファミリストンは目を丸くした。突然の急展開に思考回路がついていってない。
「俺はいたって真面目だ」
 ファミリストンは思った。ハッシュはそうそう軽はずみで嘘をつくような人間ではない。なぜかこの短時間での付き合いなのだが確信がある。ここまで言うのだから、ハッシュの中では本当なのだろう。
「俺も詳しくは師匠から聞いていないが、俺の役目はその英雄を探すことだ。七人の英雄を」
 ハッシュは手当てが終わったのか、立ち上がった。その姿を目で追うファミリストンに付け加えた。
「さあ、行こう、まずは先にやらねばならないことがあるだろう。この話はその後だ」
 差し伸べるハッシュの手をファミリストンは「そうだな」としっかり握った。


つづく。












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