七英雄物語(16/33)PDFで表示縦書き表示RDF


七英雄物語
作:七英雄



第1部 第3章 ゲルニア国攻防戦 その2


 ティファレン城。城内。
 スライ将軍の快心の一撃がドゥージに炸裂する・・・はずだった。
「…馬鹿なっ」
 ドゥージの身体は傷一つなかった。確かに斬られた・斬ったのだが、動じることもなく、ドゥージは「ふん」と鼻で笑った。
「そんなものか・とんだ買い被りだったな」
「き…斬った…はずなのに」
 信じられないとスライは青ざめた。剣は物を斬ることができる。単純な常識だ。それを頭から覆ることが目の前で起きているのだ。
「俺の身体は生来より、鉄の如く硬き身体。どんな剣をもってしても、斬ることは出来ぬ。それが俺の能力」
「て・鉄の身体だと」
 だから、この大男は武器も持たずに構えることもしなかったのだ。斬られることがないからだ。
「俺の能力に、『コレ』が加わればどうなるか…」
 ドゥージの右腕が刃に変わる…。鉄の刃。一体どれだけの破壊力があるというのだろうか。
「…っ」
 スライは一旦構えたが、すぐに剣を引いた。
「ほう…」
 ドゥージが感心したように言った。
 諦めではない。防御が機能しないことを悟ったのだ。悟った上で、別の方法を考える。意固地に勝ち目のないやり方で戦っても意味がない。ならば、現状を認めつつ、最善の道を探すしかない。
 しかし、そう簡単に良い方法など思いつくわけがない。スライの頬を汗が流れる。
 ドゥージは攻撃の構えに入った。
「ゆくぞ、ゲルニアの戦士よ」
 スライは思う。マトモに受けては駄目だ。避けることが大前提だ。
 巨体に似合わない速さでドゥージが動いた。
 重い一振りが、スライに襲い掛かる。想像以上の速さで避けることが間に合わない。受けざるを得ない。スライは、身を限界まで避けながら剣で防御する。
 初めて受ける衝撃。身体に伝わる落雷ような痺れ。スライの身体は王の間の扉まで吹っ飛んだ。同時に剣が折れた。
「どうした。スライ。何があった」
 扉の向こうから、宰相のハミルが叫んだ。
「…っ」
 衝撃のため、声が出ない。王の安全を確保しなければならない。ハミル宰相に逃げることを伝えたいが、言葉が出ない。
「おい、スライ。答えぬか。ファミリストンはどうした」
 病弱な王の妨げにならないように、王の間はなるべく騒音が聞こえないような作りになっている。そのため、町の悲鳴や、城内の出来事は知るよしもないだろう。
 目の前には、ドゥージが迫ってきた。
「くぐっ・ここまで力の差があるのか…」
「その先か…セラミス王は」
 スライは折れた剣を取り、両手で持つ。目を閉じ、集中する。一か八かの賭けに出た。これからやることは実戦したことがない。成功するのかどうかはスライ本人にもわからないことだった。
 ドゥージは溜息をついた。
「もうやめておけ、何をやっても無駄だ」
「そ・そうはいかん。同じ死ぬのなら、やるだけのことはやって死ぬ」
「そうか…見事だな、ゲルニアの戦士よ」
 ドゥージは、止めとばかりに更に近づく。
「貴様らの情報にはなかったのか?我が王はニゴラス国出身だということを」
 突然のスライの問いかけに、ドゥージの足が止まる。
「当然だ、それくらいは知っている」
「ならば、ニゴラス国は魔法の国だということも?」
「当たり前だ」
 スライは不敵に笑いながら喋る。
「鉄をも溶かす、灼熱の魔法があることも?」
「何が言いたい」
「その魔法を俺が取得していたとしたら?この剣にその魔法を宿し、貴様を斬ることができるとしたら?」
 折れた剣が赤く、更に赤く、熱く、輝いた。スライは、灼熱の魔法を訓練し、剣との融合を密かに研究していたのだ。それは、ロクシーヌ国が戦っているやり方と同じであった。それはファミリストンも知らないことだった。
 ロクシーヌ国は、剣と魔法の人々が住む国。他の国との違いは、崇める神が違うのだ。太陽神アルニヴァースではなく、絶望神メンデルゴスを崇めている、いわば異教徒の国である。ロクシーヌ国の強さは、今、まさに、スライがやってる剣と魔法の融合。その力で数々の戦争に打ち勝ち、敵を退けてきた。
 スライもまたこの方法を、初めて試すことになる。
 さすがにドゥージも驚いた。こんな小さな国に、そこまで出来る人間がいるなんて思いもよらなかった。襲撃した時、兵達のあまりの弱さに情けなさを感じていたからだ。
「くらえ!灼熱剣を!」
 スライが叫んだ。
だが、その声に被せる様に、ドゥージは言った。
「いや、無理だな」
 ドゥージは左腕をかざした。すると、一瞬でスライの剣に宿っている魔法が消えた。
「…え?」
 呆気にとられるスライ。
「魔法を使えるのはお前だけではないぞ。そんな簡単に取得できるものじゃあない。未熟だからこそ、俺の風の魔法によって、簡単にかき消される程度の威力なのだ。それでは俺を倒すことはできん。魔法を使えるということには驚いたがな」
 圧倒的な差。これが、世界との差。小さな国で満足していた差。上には上がいるという図式。身を持って知ることになったスライの心境はどうなのか。
「お前はよくやった。さあ、もう眠るがいい」
 ドゥージの最後の一撃。
 スライは再度吹き飛び、その身体は扉に叩きつけられた。扉は壊れ、部屋の中が露わになった。
「初めまして…だな…」
 部屋の中には、怯えたハミル宰相、奥には老人が寝ていた。その老人こそ、ゲルニア国セラミス王。
 ドゥージは、老いてなお衰えないその力溢れる王の瞳を静かに見据えた。

つづく。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう