表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

《樹花草綴り》

紫陽花の秘密

作者: 藍蜜 紗成

 紫煙を(くゆ)らす貴方の指先が、とても綺麗で好きでした。


 覚えていますか? 私の事を。

 幼い貴方の避難場所だった私を。



 貴方はあっという間に大きくなって、私では貴方を隠しきれなくなりました。

 震える貴方を、私は守れなかったのです。



 見付かった貴方が泣きながら私へと伸ばした手を、私は、私は―――――――――――――――――掴めなくて……。



 暫くして戻ってきた貴方の頬は赤く、体はボロボロでしたね。

 けれどそれ以上に、貴方が引き摺ってきたモノは赤かった。


 あの時の貴方の目を、私は一生忘れないでしょう。 例えあの頃の私ではなくなろうとも、私は一生貴方の罪を許し続ける事でしょう。


 思い切り吸い込んだ煙りが、貴方の中から出ていく度に、私は私の色を思い出すのです。


 綺麗な綺麗な紫色だと、幼い貴方は無邪気に誉めて下さいましたね。

 あれから私は私の色を愛するようになったのです。

 例え今の私が薄紅色だとしても。


 あぁ、また雨です。


 貴方の吐き出す煙りは重苦しい悪夢のようで、貴方自身の目にさえ()みて、()みて。

 ケホケホと咳をしながら笑ったものです。


 ポタポタ落ちるは雨か涙か。

 私の元へとおいでなさい。

 貴方と涙を流しましょう。


 ゆらゆらと水の合間に流れる煙りは掴めなくて、伝わらなくて。

 それでも私は背負いましょう。

 貴方の闇を抱き締めて。

 貴方の罪を許しましょう。


 紫陽花は今日も、赤く紅く咲くのでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「冷淡」「無情」「移り気」これ全て紫陽花の花言葉ですが、拝読して、母性を感じました。しっとりした梅雨空にピッタリのお話でした。 そうそう、花言葉がもう一つありました。「辛抱強さ」
[良い点] うわっ! 幻想的で、秘密ぽくって、そしてちょっと艶やかな感じ。堪能させていただきました。 水色さんにとって、紫陽花の色とは、こういうバックグラウンドのもとの発色というご想像なのですね! 面…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ