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〜殺し屋はターゲットに恋をする〜
作:セツナ



第45話 刹那と理恵の順番


ゴムボールを取ってきた里奈と恵利と入れ替わりに、今度は刹那と理恵がゴムボールを取りに校内へと入っていった。
月明かりのみの校舎は結構不気味なうえ、歩くたびに鳴る足音が妙に響く。何だか、後ろに誰かいるのではないか? という感じがしてどうも落ち着かない。
しかし、そう感じているのは刹那だけで、理恵は別にそういう風に感じてなどいなかった。
理恵は、別に幽霊や暗闇が怖くないというわけでもないし、霊感がまったくないから心霊現象なんてへっちゃらだ、というわけでもない。
むしろ恵利と同じで、暗いところは苦手だし、昔家で幽霊を見たことがある経験があるため、なるべく暗いところでは1人にならないように気を付けているくらいだ。特におばけ屋敷なんていうものは絶対に駄目で、小さい頃入ったっきり1度も入っていない。
そんな怖がりの理恵が、どうしてこんな不気味なところを歩いているのに平然としていられるのか? それは・・・・・

{ふ、2人っきり!! せ、刹那とこんな近くで!! ふふ、2人っきり!!}

なんというか、怖がっている余裕がない、というべきなのだろうか。校内を歩く怖さよりも、刹那の隣を歩く恥ずかしさのほうが上回っていて、怖がっている余裕がないというのが理恵の怖がらない理由だ。
校内には誰もいない。スカートの丈や、ネクタイのチェックをしに、いつも休み時間に校内を見回りに来る先生はここにはいない。休み時間に、友達同士でだべっている生徒だっていない。今この空間に、刹那と2人きりなのだ。誰にも邪魔されず、今夢中になっている男の子と2人きり。
こんな誰もいない所で、こんな暗い場所で、年頃の男の子と一緒なのだ。もしかしたら刹那が編秋を起こして・・・・・襲われるかもしれない! いや! 刹那に限ってそんなことはないはずだ! 自分が好きになった刹那はそんなことはしないはず!
それでも! それでも万が一ということもある! 世の中に絶対はない、刹那が100%襲ってこないなんていう保障はどこにもないのだ!
も、もし襲われたらどうしよう!? いや! そう・・・物事には色々準備というものがあって、いきなりそういうことになるのはちょっとあれかなぁ〜なんて・・・・・。

「あ、あの、理恵さん」

「ふぇ?! え!? な、何よ!!」

「その・・・・・あの、顔がすっごく真っ赤になってたから。大丈夫ですか? 具合悪いんですか?」

「だ、大丈夫! 大丈夫よ!べ、別になんともないから心配しなくてもいいわよ!!」

「そうですか? 具合が悪くなったらすぐに言ってくださいね」

変な妄想をしているときにいきなり話しかけられたから、少しどもってしまった。・・・変な子だって思われてしまったらどうしよう。まぁ、いまさらか。
でも、やっぱり変なことにはならなそうだ。やっぱり、刹那は優しい男の子だ。自分のことを心配して声をかけてくれた。こんな優しい人が、自分にそんなことをするわけないじゃないか。
そう思って、刹那の顔をじっと見つめていると、視線に気がついたのか、刹那がくるっと顔を理恵のほうへと向けた。となれば、自然と顔が向き合う形になるわけで、せっかく顔の紅潮が収まってきたというのにまた赤くなってくるというわけで・・・。

「な、なな、何よ!!」

「えっと、その、言いにくいんですけど、ひょっとして怖いのかなぁって」

「こ、怖いって、あ、あたしがこの程度で怖がるって思ってるの!?」

「だって、何だかさっきから挙動不審じゃないですか。だから怖がってるのかなって思って」

・・・まさか全部刹那のせいだ、なんて言えるわけがない。

「べ、別に怖くなんてないわよ! こんなところ、別になんともないんだから!!」





ガタガタガタ!!!!!





「うぉ!!」

「!!!!????」

理恵がそう言った瞬間、廊下のガラスがガタガタと揺れた。カタカタ、という風が吹いたような優しい音ではない。誰かが意図的に音を出そうとして出した、そんな感じの強さだ。
さっきも言ったが、校舎には誰もいない。先生だっていないし、生徒もいない。警備員が回っているのかもしれないが、生憎この学校に警備員など雇う余裕などないからそれは考えられない。
もしかしたら、博人たちが驚かそうと思ってやったのかもしれないが、ここは3階で、しかも外には足場になりうるベランダも何もない。あるのは細い木1本だけ。それを登るのには相当の勇気が要る。細いゆえに、いつぽっきり折れてもおかしくないからだ。
いくらいたずらが好きな博人といえど、命を懸けてまで驚かす真似はしないはずだ。・・・・・まぁ、しようとしても、危ないといって恵利が止めることはわかっているが。

「な、何だ? 何で風が吹いてないのに・・・・」

「・・・・・・」

いくら刹那と一緒にいる恥ずかしさが強いからといっても、さすがにこれは駄目だったようだった。赤かった顔がみるみるうちに青ざめていき、口をパクパクさせている。何だか、放っておいたら泡でも吹いてしまいそうな勢いだった。
刹那は、ガタガタと窓ガラスが鳴らせた正体を確かめようと、ゆっくり窓に近づいていった。本当にゆっくり、一歩一歩慎重に、ゆ〜っくりと窓に近づいてみる。

「ん?」

近づくにつれ、窓の隅に黒いものが見えた。なんだろうか? もしかしたら、これが原因だろうか?
その正体を見極めようと、刹那はさらに近づいて窓ガラスを開けた。そこにいたのは・・・・・

「にゃぁ〜ん・・・・・・」

「ね、猫か。何だ、びっくりして損したよ」

「ね、猫・・・・・。心臓が止まるかと思った・・・・。でも、何でこんなところに?」

「たぶん、木に登ったまま降りられなくなって、必死に窓に移動したってところですかね。ま
ったく、間抜けな猫だな」

「にゃ〜ん・・・・・」

猫はよほど怖かったのか、刹那をじっと見つめるだけで一向に動こうとしない。・・・ひょっとしたら腰が抜けたのか?
刹那は腕を伸ばすと、猫を抱きかかえた。なんにせよ、こんなところに置いておくわけにはいかない。持って帰らなければ。

「・・・とりあえず、戻りましょうか。猫を持ったままボールは探せませんし」

「まぁ、逃げちゃうかもしれないからね。・・・・・あぁ怖かった」

ゴムボールの代わりに猫を拾った刹那と理恵は、とりあえず引き返すことにしたのだった。


ガラスの音の正体なんてこんなものしか思い浮かびませんでした・・・
実は幽霊だった?! なんてのも面白そうだったんですけど、猫が好きだったので、ねこにしちゃいました・・・
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!






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