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〜殺し屋はターゲットに恋をする〜
作:セツナ



第39話 定番中の定番


博人と理恵が魚を捕まえてやってきたのは、刹那がライターで流木に火を点けてから少しあとだった。
驚いたことに2人の捕まえてきた魚はかなり多く、刹那たちは目の前に置かれた大量の魚を見て目を丸くしていた。・・・・・何の道具もなしにこれだけ捕まえてこれるとは、すごいとしか言いようがない。是非目の前で捕まえるところを見せてもらいたいものだ。
魚は博人がどこから出したのか、カッターナイフで削った流木の余りに刺して焼いて食べた。調味料がなかったからあまり味はしなかったのだが、こればかりは仕方ない。
昼食のあと、何かお話しでもしようということになり、焚き火の火を海水で消してから、ぐるっと輪になって話し始めた。

「何ぃ!? ナンパだとぅ?!」

博人がいきなり声を張り上げたのは、刹那がナンパのことを話し始めたときだった。ナンパがあったのは博人たちが魚を捕りにいっている間だから、当然博人はこのことは知りようがない。

「お前らがいない間、大変だったぞ。特に恵利なんか里奈さんの後ろに隠れるくらい怖がってたし」

「何だと?! くっそ!! ってかお前守ってやれよ!! 何のためにお前を残してたと思ってるんだよ?!」

「いや、何と言ったらいいか・・・・・俺が出る間もなく里奈さんがやっちゃったみたいな・・・・・」

え? と、驚いたように博人は里奈を見た。まじまじと見つめられている里奈は、にこっと笑顔で博人に微笑みかける。しばらく、じぃっと里奈を見つめて・・・・・、再び刹那に視線を移して一言。

「嘘つけ!! できるわけねぇだろ!!」

「本当だっての!! 外見に惑わされんな!! 羊の皮を被った悪魔だぞ!! っていだだだだだだだだ!!!!!」

「ん〜? どうしたのかな刹那〜?」

にこ〜っと、笑顔のまま里奈は刹那の脇腹を抓っていた。それも指だけではなく、めりめりと爪も食い込んでくるものだからものっすごく痛い。ってかやばいくらい痛い!! マジで痛い!! 千切れる千切れる!!

「刹那? 何か言うことはないかしら?」

「ごめんなさい! ごめんなさい! いやなんかもう本当にごめんなさい! 俺が悪かったです!! 悪かったですってヴぁ!!」

「聞こえないわ〜、全然聞こえないわ〜。聞こえるまでずっとこうしてなきゃね〜」

「あんた嘘ついてんじゃないよ!! っていだだだだだだだだだ!!!!!」

やばい!! 本当に痛い!! マジで千切れる!! ア〇〇ンマンの顔の如く引き千切られる!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

「お姉ちゃん!! っめ!!」

「はぁ〜い・・・」

玲菜に怒られ、渋々と刹那の脇腹を抓っていた手を離す。抓っていた部分は、見事というくらい綺麗に爪跡が残っていた。通りで痛いはずだ。

「・・・んで? 結局どうなんだ?」

「あたたた・・・・・。里奈さんが追い払ったのは本当だよ。どうやって追い払ったかは見てないからわからないけどさ」

大体の見当はついてはいるが・・・。おそらく素手で殴り飛ばしたのだろう。哀れ、ナンパ男達。今回は相手が悪すぎた。今度はもっと安全にやろうな。

「・・・・・本当かそれ?」

博人が信じられないのも無理はない。あの交通事故のような音がした現場を実際に見なければ、女1人で男2人を追い払ったことなど信じられるわけがない。いや、実際に見たとしても信じられないと思うが・・・。

「博人君、本当だよ。里奈さんが追い払ってくれたんだよ」

「・・・まぁ恵利が言うんだから本当らしいな」

「お前恵利の言うことだったらすぐ信用するのな」

「もちろんだ! 俺にとって恵利の言うことが世界の真理だ! 宇宙の法則だ!」

「博人君・・・・・」

「恵利・・・・・」

「はいはい、いいからいいから。それで、このあとどうするんだ?」

もう博人と恵利のいちゃつきに慣れた刹那が、博人に質問する。

「おっと、恵利の可愛さにまた我を忘れていたぜ。次はな・・・・・あれだ、定番中の定番のあれだ」

定番中の定番? 海水浴で定番っていったら・・・・・悪いがビーチバレーくらいしか思い浮かばない。まさかこのまま同じことを博人が続けさせるわけないだろうし・・・・。一体何をするつもりなのだろうか?

「あれって、何だよ?」

「くっくっく、それじゃトップバッターは刹那、お前でいくか」

「ん? うわ! な、なにすんだよ!」

「大丈夫だって、ほら動くな」

いきなり博人が、刹那の視界を遮るようにしてタオルで頭を巻いた。もちろん、何をされるかわかったものではないので、刹那はじたばたする。・・・・・なんだ? これが定番中の定番? 目隠しがか? そんなことする定番なんて、あったっけ?

「よし刹那、今俺の指が何本立ってる?」

博人がそう言ってくるが、目隠しをされているので見えるわけがない。よし、ここは適当に言ってやれ。

「・・・・・3本?」

「よし、見えてないな。しっかり結べたみたいだ」

どうやら外してしまったようだ。・・・くそ、何だか少しだけ悔しい。実際は何本立っていたのだろうか? すごく気になるのだが・・・。

「よし、じゃあ立て」

「? 一体何させようっていうんだよ」

博人の肩に捕まり、ゆっくりと立ち上がる。一体何をされるというのだろうか?

「・・・まぁ、回すのは面倒だからいいか。準備万端だ!」

「あ! もしかして、スイカ割りやるつもりなの?」

理恵がはっとしたように言うと、博人はにやっと笑って言った。

「その通り! スイカ割りですよ! スイカ割りこそ夏!! って感じじゃないですか!! これやらないとこの夏は始まりませんよ!!」

・・・なるほど、スイカ割りか。それならば定番中の定番というのも頷ける。一体何をさせられるのかと思って少しヒヤヒヤしてしまった。

「でも、どこにスイカがあるの博人君?」

「あそこに落ちてるじゃないか。ほら、今ちっちゃい子が割ろうとしてるやつ」

「犯罪だよ馬鹿野郎!! 何ちっちゃい子のスイカを盗ろうとしてんだよ!!」

「いいじゃん、あの子目隠ししてるからばれねぇよ」

「俺たち滅茶苦茶最低ですね!!」

「ってのはまぁ冗談だ。スイカならもうセッティングしてある」

「あら、本当。いつの間に置いたのかしら?」

目隠しをしているから刹那にはわからないが、スイカは確かにセットされていた。結構大きいサイズで、下には割れても大丈夫なようにビニールシートが敷いてある。・・・本当に、いつのまに用意したのだろうか?

「ってことで一番手刹那!! 行ってこい!!」

「おう!!」

博人から棒が手渡され、刹那は前に進んだ。しかし、スイカがどの位置にあるのかわからないから適当だ。いや、もしかしたら勘が当たってスイカのほうに向かってるのかもしれない! そうだ! そうに決まってる! 確信はないが、なぜかそう思える! 今自分は、スイカロードを歩いている!!

「そこよ!! 振り下ろしなさい!!」

里奈の声が刹那の耳に入る。やっぱり、勘は外れていなかった! 俺の勘は当たってたんだ!

「ていや!!」




スカッ!




・・・・・手ごたえはなし、どうやら外れてしまったようだった。しかもスイカに掠ることもなく、寂しく砂を叩いただけだった。
どれくらい惜しかったのか、それを確かめるため刹那は自分の視界を遮っていたタオルを取ってスイカの位置を見るが、肝心のスイカが・・・・・ない。後ろを見てみると・・・・・あった。しかもすごく遠い位置にあった。

「あら〜残念。外れちゃったわね〜♪」

「外れちゃったわね〜♪ じゃねぇやい!! 何嘘教えてんですか!! 全然近くなかったじゃないですか!!」

「あたしを信じたあんたが悪い!!」

「どう考えても嘘ついたあんたが悪いでしょ?!」

「はい、刹那残念でしたっと。じゃあ次は・・・・・」

刹那と里奈のやり取りを見ていた博人は、ぐる〜っとみんなを見渡して次の挑戦者を選んでいた。刹那から里奈へ、里奈から玲奈へ、玲奈から恵利へ、そして恵利から理恵に視線が移ったところで、博人がにやっと笑った。

「それじゃ理恵さんいってみよう!」

「ア、 アタシ?! まぁいいけど、当たるかな・・・」

「あ、理恵さん。タオルつけましょうか?」

そう言って刹那が近づくと、理恵はとつぜんトマトのように真っ赤になって叫ぶようにして言った。

「だ、だだ、大丈夫よ!! そそ、そんなの1人でつけれるわよ!!」

「わ、わかりました! それじゃ、はい。がんばってくださいね」

刹那からタオルを受け取ると、理恵は見えないように周りが見えないようにタオルを巻き、棒を構えた。さすが元ソフトボール部というだけあって、構えが様になっていた。・・・いや、スイカ割りのフォームに様も何もないのだが。

「姉さん! もっと前です!」

恵利の言葉の通り、理恵は前進した。スイカまであと5メートル。

「もう少し前ですよ理恵さん!」

玲奈の言葉の通り、もう少しだけ前に進む。スイカまであと50センチ。これはもう棒を振り下ろせば当たる距離なのだが、向きがまだわからない。ここで振り下ろすのは危険だ。

「もう少し右向いて理恵ちゃん!」

「って何で俺のときは嘘ついて理恵さんのときはちゃんと教えるんですか?!」

「うん、もう少し右・・・・・そうそう、そこよ〜!」

「って無視ですか?!」

騒いでいる刹那をよそに、理恵は棒を振りかぶり思いっきり振り下ろす! 棒はスイカ目掛けて一直線! 外れることはない軌道だ! これは間違いなく当たる! のはずなのだが・・・・・。






ポーン!!






・・・・・なんで、スイカが割れることなく跳ねてるのだろうか? 割れるはずのスイカは、理恵に叩かれた反動で空中に跳び上がっていた。ってちょっと待て。スイカが跳ぶわけないだろ。空中のスイカをよ〜く見てみる。・・・・・あれは、もしかして・・・。

「スイカじゃなくてスイカの色したビーチボールじゃないかよ!!」

「あちゃ〜、ばれちゃったか。まぁ叩ければいいかなって思ってな」

「本物かと思っただろ?! ご丁寧にビニールシートまで敷きやがって!! 見事騙されたよ!!」

「だろ? 結構わかんないもんだろ?」

頭を掻いて博人がははは、と笑う。・・・・・本当に心の底から騙されてしまった。よくよく考えてみれば、こんな立派なスイカがあるんだったらわざわざこんなことには使わず、さっきの昼食の場で食べてしまっていたはずだ。スイカ割りをやる、という時点で、ビーチボールだと気がつくべきだった。・・・くそ、何だか無性に騙されたことが悔しい。
でも、落ち着いて考えてみれば、本物を使うよりこうやってビーチボールを代用したほうがいいのかもしれない。こうすれば割れて食べられなくなった部分だって出ないし(もともと食べたりはしないが)、割れることがないから何回も叩いて遊ぶことができる。何より、こうやって騙したりできるわけだし・・・。

「まぁ楽しめればいいじゃんか! さて、次は玲奈ちゃんいってみるか!!」

「はい!」

「がんばってね玲奈ちゃ〜ん!」



・・・・・こんな感じで、時間は過ぎていきましたとさ。






定番であるスイカ割りですが、実際海でやる人ってあまり見かけませんよね。
海編はおそらく次で最後になるだろうと思います。
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!






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