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〜殺し屋はターゲットに恋をする〜
作:セツナ



第3話 殺し屋は居候!?


「恐喝に強盗に殺しだぁ?!そんなことした覚えなんかないよ!!」

「・・・・・・本当に?」

「本当だよ。されたことはあるかもしれないけど・・・・・・・・」

食事のあと、玲菜はターゲットに確認を取った。率直にだ。あなたは恐喝、強盗、殺しの常習犯ですか?と、あっさり、ストレートに。
やっぱりと言うか、ターゲットはそのことを否認した。だが、それが事実なのか嘘なのかはまだ確定できない。

「ふぅ・・・・・・・・。ま、いいかな・・・・・・」

倒れていたところを助けてもらった手前、話してもいいか。そんな考えが頭に浮かんだ。

「はっきり言う。私はあなた、木下 刹那を殺しに来たの」

「は、はぁ?!」

玲菜は、自分はある殺し屋の一員として働いていること、そして今回のターゲットが刹那に決まったことをできるだけ細かく話した。ターゲットも最初は笑っていたが、ずいぶん前から起きている『悪徳議員、謎の失踪事件』のことを思い出すと、玲菜の話を馬鹿にしようとはしなかった。

「・・・・・・・・・・つまり、俺がその恐喝やら強盗やら殺しをやってるっていう情報が玲菜の会社に流れてきたから殺しに来た、ってことか?」

「そう。でも・・・・・・」

「俺はそんなことをするやつにはどうしても見えない、ってことか。何だか嬉しいな」

少しだけ笑うと、刹那は大分熱が引いた玲菜に聞く。

「それで、玲菜はこれからどうするんだ?俺を殺すのか?」

「ううん、一応様子見になる。少なくても、悪いことしてるっていう確証を得るまでは殺さない」

「ははは、そりゃよかった。俺もまだ死にたくないからなぁ〜」

本当に玲菜の話を信じているのか疑わしくなるくらいに刹那ははしゃいでいた。普段ではありえない刺激的なことがあったからなのか、それとも笑っていなければやっていられないからなのか、よくわからない。

「ところでさ。・・・・・・・・・俺とお前、前に会ったことないかな?」

刹那の表情ががらりと変わり、急に真面目な顔になった。

「わかんない、たぶんないと思う」

会ったことがない、と口に出したものの、玲菜もまたターゲットを見た瞬間そのような感覚に襲われていた。まるで、小さいときに一度だけ会って、それからまた何年か経ってから再び会ったみたいな、おぼろげな感覚。

「さて、っと」

だが、今はそんな感覚にひたっている場合ではない。やるべきことがあるのだから。

「お、おい。まだ寝てないと・・・・・・」

「ちょっと電話貸してね。連絡するから」

そう言うと、玲菜はドアノブに手をかけてゆっくりと開け、出て行く寸前にこう言った。

「そうそう、私しばらくここに住むから。よろしくね」

とんでもないことを言ったはずなのに、それが当然のようにさらっと言ってみせたので、刹那は玲菜の言葉を理解するのに少し時間がかかった。

「あぁ、よろしくな〜って・・・・・・は、はぁあああああああ??!!!!」



+++++



幸一は愛娘からの電話の内容を聞いて驚かずにはいられなかった。

「えぇ!?ちょ、ちょっと玲菜ちゃん?!」

「そういうことだから、私しばらくターゲットの家に住むから、心配しないで」

「いやいやいや!!!心配どころありすぎっしょ?!相手は恐喝、強盗、殺しの常習犯なんだよ!?そんなとこで寝てたらきっと襲われると思うなぁ〜・・・・」

「大丈夫だよ。刹那はそんなことしない人だし、なによりも私強いから、心配しなくてもいいよ」

「じゃ、じゃあせめてターゲットの住所教えて?ね?お父さん心配で心配で夜も眠れない!!」

「寝なくていいよ。住所教えるとややこしくなるから」

「父の心配は皆無!?しかもややこしくなるって玲菜ちゃんはお父さんを何だと思ってるのさ?!」

「う〜ん・・・・・馬鹿?」

「うわ直球!!娘に馬鹿って言われたよ!!お父さんショック!!」

「・・・・・・もう切るね。お父さんと話してると疲れる」

「反抗期真っ只中!?もしもし!?玲菜ちゃん?!もしも〜し・・・・・」

ツーツー、という受話器の音は、玲菜との電話が切れたということを教えていた。大きなため息を1つ吐いてから、幸一は受話器を置いた。

「うえ〜ん、僕の可愛い玲菜ちゃんが〜・・・・・・」

「しゃちょ〜」

「あんなに健気で優しくて純粋だった僕の可愛い玲菜ちゃんが〜・・・・・・」

「しゃちょ〜〜」

「あんな凶暴そうな男と一緒の家に住むなんて・・・・・・」

「しゃちょ〜ったら」

「あぁぁああ・・・・・僕はどこで育て方を間違えてしまったんだろう・・・・・」

「・・・・・・っふ!!!」

「ひべ!!!!!」

何回も話しかけているのに無視している幸一の横っ面を思いっきりぶん殴る。綺麗に一回転して無様に床へと叩きつけられた幸一は、「ぎぎゃぎゃぎゃぎゃ」やら「えびびびびびび」などと現代日本語では理解できそうもない奇声を上げのた打ち回っていた。

「いつまでも人の話無視してっからでしょ?それより!!あたしの玲菜ちゃんは!!どこ!どこ!!どこなの!!!」

「ぐぇ・・・・ちょ、ま・・・・・・里奈・・・ちゃ・・・・・ぐるじ・・・・・・」

「玲菜ちゃんはどうしたって!?今の電話玲菜ちゃんからだったんでしょ!?どうなの!!」

倒れ伏していた幸一の胸倉を掴み上げ、力任せにブンブン振る。
いくら威厳がないといっても、日本大企業社の社長である幸一を掴み上げ、記憶が飛ぶのではないかというくらい頭を振らせているのは、幸一の娘、そして玲菜の実の姉、「佐々木 里奈」である。見たものは息を呑まずにはいられない程の美人である玲菜の姉だけあって、その美貌は玲菜に勝るとも劣らない。
この会社一番の殺しの実績を上げているのは里奈だ。ターゲットを消すまでの時間、コスト、方法、タイミング、全てが完璧で、里奈なしではこの会社の実績は半減してしまうと言われているくらいの実力を持っていた。現在、里奈の中でブームとなっている殺し方は斬殺。業物の日本刀で頭を落とし、首から出る血の噴水を見るのがこの上なく楽しいらしい。戦国時代にいたのなら、間違いなく千人斬りをやってのけただろう。
ただ、最近は玲菜のほうにも気をかけており、玲菜が殺したターゲットの証拠などは全て里奈が隠滅している。仕事になれば鬼になる里奈も、玲菜といると途端に駄目になってしまうという弱点があった。いくら仕事を熱心にやっていても、玲菜の姿が目に入ったら磁石の如く玲菜に急接近し、そのままべったりしてしまう。そう、里奈は極度のシスコンなのだ。
―――これは余談だが、一昔玲菜の貞操が里奈のせいで危機にさらされたという噂が立ったのだが、事実はわからない。
日本刀という重いものを振り回せる腕を持つ、今玲菜のことを心配している極度のシスコン姉。その里奈が、手加減なしで胸倉を掴んで首をぶんぶん振れば、

「・・・・・・・・・・・」

「あれ?お父さん?どしたのよ?」

幸一が気絶したのにも頷ける。



+++++



電話から帰ってきた玲菜はバフッとベッドの中に潜り込み、そのまま瞼を閉じた。

「あの・・・・・・・・さ」

「ん?何?」

瞼を閉じながら言う。上半身を起こして喋るのもめんどうなのか、それとも体がまだ本調子じゃないのか、よくわからない。

「何で一緒に住むのか、よくわかんないんだけど・・・・・」

「だからさっき言ったでしょ?本当に悪人かどうか確証を得るまでは殺さないって」

「言ったけどさ、それが住むのとどういう関係が・・・・・・・・・」

「身近にいたほうがわかりやすいでしょ?一緒に住んだほうが、あなたがどういう人物なのか見極めがつきやすいし」

「で、でもさ。男女が一緒の家で住むってのは・・・・・・・」

「問題ないよ。刹那は変なことしないから」

「なんでそんなことわかるんだよ・・・・・・・」

「・・・・・・くぅ・・・すぅ・・・・・・」

「話の途中で寝んなよ・・・・・・」

やれやれ、と呆れながらも玲菜に毛布をかぶせ、空っぽになった鍋とすっかりぬるくなった水の入った洗面器を持って部屋を出た。両手が塞がっているので、肩でうまくスイッチを押して明かりを消し、足を使ってドアを閉めた。

「あ・・・・・・・・」

バタンとドアの音が耳に入った瞬間、さっき玲菜が言った「刹那は変なことしない」という言葉がよみがえってきた。玲菜は体の調子が悪いので完全に眠りに入っている。その間に何かしらできたはずなのに、刹那はしなかった。

「玲菜の言った通りになっちゃったな」

ははは、と苦笑いをしながら、刹那は階段を下りていった。
―――明日から、何だかとても大変になりそうだ。そのことが刹那の頭から離れなかった。


もうお気づきかと思いますが、「殺し屋」は5日ごと更新です。
・・・自分、書くの遅いんで・・・申し訳ないです・・・
ご感想くれると嬉しいです。ぜひよろしくお願いします。






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