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〜殺し屋はターゲットに恋をする〜
作:セツナ



第25話 朝食と遅刻


ぴぴぴぴぴぴぴぴ・・・・・・

「ん・・・」

朝から元気よく鳴っている目覚まし時計の頭に付いているボタンを押す。それまで鳴っていた目覚まし時計はピタッと止まり、刹那は伸びをしながらゆっくりと上体を起こした。

「う、ふぁぁ〜〜・・・」

カーテンを開けて、朝の日差しを浴びる。・・・あぁ〜今日もいい天気だなぁ・・・、何だかまた眠たくなってきた・・・。・・・・ぐぅ〜・・・。

「・・・っは!! やばい、また寝るところだった」

パンパンと、2回頬を叩いておく。早く朝ごはんを食べて学校に行かなければ・・・。
着ている寝巻きを脱ぎ、ブレザーに着替える。ネクタイも締めてっと・・・・、よし、着替えオッケー。刹那は、玲菜と里奈さんの待っている居間へと向かった。
居間には、のへ〜っとテーブルでお茶を飲んでいる里奈さんと、1人分の朝食を運んでくる玲菜の姿があった。・・・ん? ちょっと待て。里奈さんの使ってる湯飲みって、もしかして・・・。

「ちょっと里奈さん!! その湯飲み俺のですよ!!」

「ん〜? 別に気にしないわよ。ちゃんと洗ってるし」

「いやいやいや!! そういうことじゃなくて!! 俺のを使わないでくださいって言ってるんですよ!! それお気に入りなんだから!!」

「うっさい!! 黙れ!!」

「逆切れかよ?!」

くっそ〜、あの湯飲みはすっげぇお気に入りなんだ。いくら里奈さんでも、ここは引いちゃいけない。何とかして奪還せねば・・・。

「お姉ちゃん!! 怒っちゃだめ!!」

「は〜い・・・」

刹那の茶碗にご飯を持って、玲菜がやってきた。・・・エプロン姿でご飯を持ってきている玲菜・・・すげぇ、いい。可愛い。あぁ、玲菜は絶対いいお嫁さんになる。相手の人羨ましいぜ、ちくしょー・・・。って、朝っぱらから何考えてんだ俺は。だめだめ、こんなこと考えちゃ里奈さんに・・・。

「・・・あんた後で顔貸しなさい」

「時すでに遅し!?」

「お姉ちゃん! 刹那を脅さないの! ほら刹那、もうご飯できてるからどうぞ」

「あぁ、ありがとう」

「今お茶淹れてくるから、待っててね」

そう言って、玲菜は里奈の使っていた湯飲みを取り上げると、キッチンのほうへ引き返していった。

「もう! お姉ちゃんったら! 珍しく自分でお茶を淹れたと思ったら・・・」

「だってぇ〜・・・あんな変な湯飲み使いたくなかったんだも〜ん・・・」

・・・里奈さんの言ってる変な湯飲みって、もしかしなくても親父の悪趣味湯飲みだよな。確かに、あんな湯飲み好き好んで使うやつなんているわけない・・・。親父の趣味の悪さが似なくてよかったよ・・・。

「・・・お姉ちゃん、あれ一応私が使ってるやつなんだけど・・・」

「すんごい可愛い湯飲みよね〜。選んだ人誰かしら? 素晴らしいセンスの持ち主だわ!」

・・・確かに、あの湯飲みを選んで買ってくるとは、ある意味素晴らしいセンスの持ち主だ。自分で言うのもなんだが、ずいぶんと変な親父を持ったものだ・・・。今は亡きお袋の苦労が偲ばれる。
そういえば、ずいぶんのんびりしてるけど、時間は大丈夫だろうか? 壁の時計を見てみると、長針が7、短針が4を指していた。・・・・・えっと、4は20分だから、7時20分?

「だぁぁぁああああああああああああ!!!! 遅刻するぅううううううううう!!!!」

時間がもう大変なことになっていた。よくよく考えてみれば、玲菜たちが来る前はパンかおにぎりを頬張って登校していたのだ。言わなくともわかっていると思うが、起きるのが遅いからためだ。そんなねぼすけの刹那が、こんなのんびり朝食を食べている時間などあるはずがなかった。
玲菜の作った朝食に手をつけず、そのまま鞄をひったくって玄関にダッシュする。・・・まずいなぁ、間に合うかな? 走ったら何とかいけるか? いや、間に合わせてみせる! 遅刻なんてしたら、博人に笑われちまうぜ!

「うぉぉおおおッぐぇ!!!」

勢いよく走り出そうとした刹那だったが、襟を掴まれて首を締め付けられてしまった。・・・うぅぅ、死ぬかと思った。のど仏が潰れかけた・・・。
・・・こんなことをするのはこの家に1人しかいない。そう! 今まさにテーブルでぐて〜っとしている里奈さんだ!

「な、何するんですか里奈さん!! 死ぬかと思いましたよ」

「あんたねぇ、玲菜ちゃんの朝ごはん食べないでどこに行くつもりよ?」

「だって、時間がもうやばいんですよ! 早く行かないと遅刻しちまう!」

「学校遅刻するのと! 玲菜ちゃんの朝ごはん! どっちが大事なの?!」

う・・・それを言われると弱いな・・・。
確かに、玲菜の作るご飯はうまい。よく三度の飯よりも何とかが好き、っていう例えがあるけど、そんな例えも玲菜の作った料理を口にすれば、たちまちにして考えが逆転してしまうほどのうまさだ。本当は、学校なんて遅刻してもいいから玲菜の作ったご飯を食べたい。キッチンから漂ってくる味噌汁の匂いが、空っぽの腹に堪える・・・。
でも、遅刻はなるべくは避けたい。いや、別に遅刻の1回や2回どうってことないのだが、だって、何か嫌じゃん? 先生に、

『木下、お前今日どうして遅れた?』

『すいません、飯食ってました』

って言うの、すっごく恥ずかしいだろ! 理由が飯食ってましただぞ?! 博人たちに笑われるに決まってる!!

「別にいいじゃないの。朝起きたら頭が重くて気持ち悪かったんです〜、とか嘘ついちゃえば」

「こんなときに心を読まないでくれます?! それと、その理由絶対酒飲んだって疑われますよね?!」

「うっさい!! 黙れ!! 早く玲菜ちゃんのご飯食べなさい!!」

「何で逆切れ?! 俺泣きたくなってきたよ?!」

あ〜もう・・・・・どうすりゃいいんだよ。玲菜の飯は食いたいけど、遅刻はできないし、ん〜・・・迷う、迷うな・・・。本当は迷ってる時間だってもったいないのに、迷わずにはいられない・・・。
刹那が腕を組んでうんうん唸っていると、玲菜がにこっと笑いかけて刹那に言った。

「刹那、早く行かないと遅刻しちゃうよ?」

「いや・・・・・・だって、玲菜の作った飯も食いたいし・・・・・」

「今日は諦めて、明日から食べてくれればいいよ。明日からはちゃんと時間通りに起こすから。はい、これお弁当」

可愛い・・・・・くそ、可愛いぜ。何だってこんなに可愛いんだ。殺し屋なんだよな? 一応俺を狙ってるんだよな? 自分の命を狙ってるんだから怨んだっていいはずなんだよな? それなのに、何で怨みの代わりに可愛い、という感情がくるんだ?! 玲菜だったら殺されてもいいかもしれない、って一瞬思っちまったぜちくしょー。

「・・・・・だったら今すぐに昇天させてあげるわよ?」

「い、行ってきますぅ!!」

玲菜の手に収まっている弁当を素早く鞄に入れ、刹那は里奈から逃げるように、そそくさとその場を後にしたのだった。
刹那が家から出て行ったのを見計らって、里奈が口を開いた。

「ねぇねぇ、玲菜ちゃ〜ん。ちょっと刹那に甘いんじゃないの〜? お姉ちゃん寂しい・・・・・」

「そうかな? 別に普通だと思うけど・・・・・」

「普通じゃないから言ってるの〜」

エプロン姿の玲菜は腕を組み、う〜ん、と唸りながら考え始めた。
まぁ・・・・・言われてみればそうかもしれない。殺し屋になってから自分と同い年の男の子とは何の関わりがなかったから、自分と同じ年の男の子、刹那に接するときの度合いがさっぱりわからなかったが、よくよく考えてみれば少しやりすぎのような気がする。

「あんまり尽くし過ぎちゃうと、あいつ調子乗ってエプロン姿の玲菜ちゃんに欲情して襲ったりするかもしれないよ〜? そうなる前に、そういうことはもう少し厳しくしないとお姉ちゃん心配で夜も眠れない!」

「あのね、お姉ちゃん」

「ん? なぁに?」

何で、私はターゲットの男の子にこんなにも尽くせるんだろう? 家事は得意だけど、刹那の家に来る前はちょっと面倒だったからお姉ちゃんと分担してやってたし、いくら宿代の代わりでもちょっとやりすぎかなぁ、って時々思うこともある。お姉ちゃんの言うとおり、刹那が調子に乗って無茶なことを言うかもしれない。私を・・・・・その、襲ってくるかもしれない。それなのに、ずっと家事を続けていられるのは何でだろう?
・・・・・・わからない。何でここまでできるのかも、どうしてやりすぎてしまうのかも。でも、ただ1つだけわかることがある。それは・・・・・

「刹那はそんなことしないよ。調子に乗ったり、私を襲ったりなんかもしないよ」

そう、なぜだかわからないけれど、刹那はそんなことしない。不思議なのだが、そう確信できる。私がどんなに家事を頑張っても、刹那はただ笑って無理しなくていいよ、って、そう言ってくれるような気がしてならないのだ。
・・・・・たまにちょっとエッチな目で見てくるときがあるけど、それだけだ。それ以上のことは求めてこない。優しい人なんだよ、刹那は。

「玲菜ちゃん・・・・・お姉ちゃん、今すっごく嫉妬したよ・・・・・」

・・・・・まずい、空気が変わった。この空気は・・・・・まずい!! お姉ちゃんがこの空気を出すときはとってもまずい!! 何がまずいかって言うと・・・・・とにかくまずい!!

「さ、さてっと、食器洗いでもしようかな〜・・・・・」

「嫉妬したから・・・・・ちゅ〜しちゃえ〜〜〜!!!」

言うなり、お姉ちゃんは私に飛び掛ってきた。え、ちょっと! きゃ、きゃあ・・・・・。

「うふふふ〜、押さえつけちゃったもんねぇ〜♪」

「や! ちょ、ちょっと、離してよ!!」

お姉ちゃんが上から覆いかぶさったせいで身動きが取れない!! ん〜! ん〜! じたばたしてみても、一向に動けない。うぅ・・・・・どうしよう、このままだと・・・・・。

「うっふっふ〜。男が何でエプロンに欲情するかわかったわ〜。・・・じゅるり」

「お、お姉ちゃん?! 今じゅるりって言ったよね?! じゅるりって!!」

「気のせい気のせい♪ それじゃいただきま〜す♪」

「嫌ああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・」

・・・・まぁこんな感じで、今日も一日が始まったとさ。






もう少しで夏休みに入ろうかな、と思っています。季節外れなのは・・・・・ご愛嬌ということでどうか一つ(汗
これからも「殺し屋」よろしくお願いします!






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