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GSO グローイング・スキル・オンライン 作者:tera
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 既に森ではなく山のゾーン、南東部分である。
 真南にはバトルゴリラが降りて来て、ファイトモンキーもバトルゴリラも、古代牙獣の眷属とか言う今まで見たこと無い特殊能力を備え、荒れ狂っている。

 出て来るのはコボルトクリフのみか?
 どうやらマイナースタンプ、喧し鶏も出没する様だ。
 群れを見つけて何度か蹴散らした。
 なら、空は?


【オニオオハシ】Lv5
赤く巨大な嘴を持つ鳥。
嘴はかなり鋭く危険。

【ヤマオオハシ】Lv13
黄色く大きな嘴を持つ鳥。
嘴はかなり鋭く危険。


 特定の木を止まり木として利用しているようだった。
 六十センチ程の個体が、黄色い嘴を持つヤマオオハシ。
 頂上でこちらを見据える一際大きく赤いのは、オニオオハシ。
 オニオオハシ、目測でも一メートルを越える大きさを感じさせる。

 そして彼等のテリトリーへと足を踏み入れる。
 いきなりアクティブとなり襲いかかって来た。

 文字通り大きな嘴を開いて噛み付く。
 そして、鋭い爪で掴み、つつく。
 集れて、手甲を掴み腕を突かれた時はいたかった。

 斧と違って剣に破壊力は期待できない。
 ヌンチャクで嘴を叩き折って行く。
 相手に武器が無くなればこっちのもんだ。
 嘴を折られたオオハシ達は、アイデンティティーを失ったが如く、放心して倒し放題だった。
 硬い分、剣とも互角に渡り合える必殺の嘴。
 自慢の嘴なのだろうが、黒鉄の前にはただのケラチンだ。


【山大嘴の嘴】素材
根本からポッキリ折れた黄色い嘴。
飾りとして値が付くこともある。
鋭く軽い。

【鬼大嘴の嘴】素材
根本からポッキリ折れた赤い嘴。
魔力が通っており、かなり硬く鋭い。
微かな攻撃補正が期待できる。

【山大嘴の羽根】素材
装飾品として使用可能。

【鬼大嘴の羽根】素材
装飾品としても、矢羽としても使用可能。
微かな攻撃補正が期待できる。


 肉は落としませんでした。
 だが、オニオオハシの嘴と羽根は新素材として使えそうだった。
 残念ながら爪が解体でドロップできなかった。
 まあ良いだろう。

「あれ? 誰だあいつ」

 先を行くとトモガラがプレイヤーを発見した。


【十八豪】職業:水属性魔法使いLv25
見習い商人


 なんとなく、名前に見覚えがあった。
 急に明るくなったトモガラが、手を降り出す。

「じゅうはちごう! じゅうはちごうじゃん! おーい! じゅうはちごう!」

「ん? 誰だい?」

 振り返った女性は、金髪ショートカットに青い瞳。
 装備は黒いインナーに革製らしき袖が千切られたワイルドなジャケットを羽織っている。
 レギンスにスカート、茶色いブーツ。
 ベルトの代わりに締めているのは黒帯みたいだな、何となくお洒落に気を使ってるのだろうか、結び目を少しズラしていた。

「……つよし? もしかして剛?」

「ゴウだよ。そう言うあんたらは……、トモガラにローレントじゃないかい?」

 思い出した。
 バトルコミュニケーション・オブ・エンカウントというゲームで、トモガラのギルド[奔放流]に所属していた女性プレイヤーだった。

 その時の名前は十八剛。
 ずっと”じゅうはちつよし”だと思っていた。
 年齢は永遠の十八歳。

 かの戦闘ゲームでは、アビリティと呼ばれるスキルの様な物を取得するんだが、トモガラと同じような廃人タイプであるこの女性。
 全体的なアビリティはかなり取得難易度が高い物ばかりで、戦闘スタイルに囚われず、超絶無双する姿とその冷酷な青い視線から人造人間やら氷結女帝と呼ばれていた。

 氷結女帝って多分、深夜バトル終わったら必ず「缶チューハイ飲んで寝るわ」って言ってたから付いた名前なんじゃないかと思う。

「あんた達、このゲームでもその名前でやってんのね」

「まあ、呼ばれ慣れてるしな、ってかお前もこのゲームやってたんだな」

「まあね」

「相変わらず廃人だな!」

「あんたに言われたくないわよ」

 トモガラの発言に、キリッとした青色の視線が俺達を射抜く。
 バトコミュでもこの視線でたじろぐプレイヤーも沢山居たのだが、心も射抜かれるプレイヤーもそこそこ居た。

「ローレントも、コイツに誘われたわけ?」

「頭を叩くんじゃねー」

 トモガラの後頭部をパシパシ叩きながら言う彼女に頷いて答えておく。
 すると、相変わらずねと踵を返した。

「ソロなのか?」

「あんまりつるむ様な奴らが居なくってねえ、レベル帯も合うような人いないし、大体一人でやってるのよ……」

「そのレベル帯だったら第一陣だよな? 初陣でかっ飛ばしてたなら俺と顔合わせくらいしてそうだったのにな」

「このゲームってスキルが大事じゃない? 攻略なんて興味ないんだよ、強そうなスキルを探してクエストばっかりやってんのさ」

 軽口叩きつつ会話するトモガラと十八豪。
 そんな中気になったことを聞いてみる。

「戦士とかじゃなくて、なんで魔法使い?」

「あんたも魔法使いじゃないか……、て、剣とヌンチャク?」

 俺の装備をマジマジと見た十八豪は、呆気にとられたようにそう言うと、トモガラの襟を持って揺さぶり始めた。

「あんた! またローレントで遊んでたのかい!?」

「ちょ、今回はちげーよ」

「バトコミュの時だって糞みたいなアビリティばっかり覚えさせてたじゃないかい?」

「いや、今回は本当になんもしてないって! おいローレントもなんか言えよ!」

「トモガラが全部悪い」

「ほら! このタコ!」

「おい! ちょ、あんまり揺さぶんないで」

 流石に馴染みの顔にはトモガラも強く出れないのか、なされるがままになっていた。
 というか、トモガラにこんなこと出来るのは奔放流に居た奴らだけだったりする。
 俺はそこまで深く関わったことも無いけど。

「自分で魔法選んどきながら、スラッシュ取っちゃったんだよ」

「馬鹿じゃないの?」

 鋭い視線でそう言われると、何も言い返せなかった。
 ゲホゲホしているトモガラは放っておく。

 そして、話の流れでパーティを組むことになった。
 何となく、懐かしい感じがする。

「魔法使いだけど、杖は?」

「そりゃこっちのセリフだよ」

 丁度姿を表したコボルトクリフ。
 そこへ、十八豪が一歩前に出る。

「ま、見てなって。生産系の攻略組よりも、ノークタウンの先まで足を踏み入れたアタシのお気に入りのスキルをね」

 彼女の手から丸い水球が出現して射出される。
 ドパンと音を立てて、そこそこの質量を持った水球はコボルトクリフに直撃した。
 水と言えど、纏まった質量を持つそれは、当たればかなりいたいだろう。
 コボルトクリフのHPが一割削れていた。

 怯んだ所へ、駆け出した十八豪。
 そのまま勢いを付けて肘鉄を相手の顔面にヒットさせる。
 ヒット&アウェイで、そのまま距離を取った彼女は、追撃とばかりに水球を再び射出する。

 だが、コボルトクリフもギリギリで転けるようにそれを回避する。
 そのまま四足歩行で低く接近すると、十八豪に牙を剥き出しにして噛み付いた。

「……十八豪!」

 ガードした十八豪の腕から飛沫が飛び散った。
 噛み付かれたか?
 思わず名前を呼んでしまった。

 俺の心配を裏切るように、血飛沫かと思われたものは、どうやらそうではなかったらしい。
 彼女の腕が粘性の水に包まれて、歯を防いでいた。
 何だあれ。

「フフ、心配してくれるってのかい?」

 振り返って余裕そうに笑う十八豪は、そのままコボルトの目に指を突っ込んだ。
 悲鳴を上げるコボルト。
 HPがガッツリと減って行く。

 追い打ちは水球だ。
 最初の物より大きな水球は確かな質量を持って、コボルトクリフに射出され、押しつぶした。

「見応えあるだろ?」

 妖艶に振り返って笑う十八豪。
 手斧が回転しながら彼女の顔先を横切った。

「このハゲ、喧嘩売ってんの?」

「ちげーよ、コイツら纏まって出てくるだろ。ってかソロでこのフィールド居るなら既に知ってるだろ」

 何かが倒れる音がして、十八豪が振り返ると。
 彼女の丁度後ろからコボルトクリフが忍び寄っていた。

「あっそう」

 額に斧が突き刺さって倒れるコボルトクリフを見ながら、十八豪は力が抜けたように呟く。
 眉が上がってしまった表情は、切れ目美人形無しだな。
 実は俺も接近には気付いていた。
 こっそり手に投銛をストレージから引き寄せていたのだが、無用の心配だったようだ。

「じゃ、次は俺らが手のうち披露かな。ローレント、斧取ってくれ」

「あいよ」

 散々カッコつけて見せつけてくれたお礼に、俺も無詠唱でトモガラの手斧を引き寄せる。
 うお、ぱっくり割れて中が丸見えだぜ。

「は?」

 俺が手斧を転移させたところを見て、十八豪が眉を捻った。
 まだまだ、だ。
 ローヴォに目線で合図して、コボルトクリフの背後を取るように仕向ける。
 そして四体のコボルトクリフを前にして、俺とトモガラの無双が始まった。

 得物は鬼子の長剣だ。
 今日のマイブームと言える。
 成長というパラメーターがある限り、使って損は無い。
 と、思う。

 ま、惜しげも無く【アポート】使って戦おうか。
 ヌンチャクを腰から抜き様に投げる。
 剣も投げる。

 先に当たって地面の落ちたヌンチャクを、手元に転移させてそのまま怯んだコボルトの顔面を叩く。
 HPを二割程削った。
 コボルトが怯んだ隙に蹴り飛ばして転がす。

 隣から剣が突き刺さったコボルトが襲い来る。
 ヌンチャクを振るうが、コボルトが持っていた木製の小盾で流石に防御されてしまった。
 武器は剣もあるんだな。

 手元に鬼子の長剣を引き寄せる。
 剣を握って、抜いて、再び斬るという一連の動作を【アポート】を挟むことで短縮。
 そのまま握った剣を首もとに突き刺した。
 出血ペナルティは、HPがどんどん減って行くんだ。

「グギャ」

 頭を抑えて起き上がりつつあるコボルト。
 こうべを垂れているようにも見える。
 なるほど、断罪一閃。
 処刑人の如く、鬼子の長剣をその首筋に振り下ろした。

「ぐわう」

 せっかく後ろから構えていたローヴォが、必要ないなら待機でいいでしょ。
 と言ってそうな視線と声を送って来た。
 ワシャワシャと撫でてやると、すこし鬱陶しそうにしながらも、本人な満更でもない様子だった。

 トモガラは?
 長く大きな千斧の柄に腕と顎を乗せて、黙ってこっちを見ていた。
 ああそう、そっちは既に終わってるのね。

「やっと終わったか」

「ああ」

 遅くて悪かったな。
 剣はまだ慣れてないんだ、と胸の内で言い訳でもしとく。

「……トモガラのスキル構成は何となくわかるけど、ローレント、あんたのは一体?」

「そっちが教えるなら俺も教える」

 交換条件だ。
 俺のスキル構成の一部を教える代わりに、彼女のスキル構成の一部を教えてもらった。


・十八豪の持つスキル(一部)。
【一意専心】
攻撃用スキルのパラメーターを上限解放する。
一つのスキル、一つのパラメーターしか不可。
上位派生が取得不可になる。

【無詠唱】
魔法スキル使用時、詠唱が必要なくなる。
無詠唱発動の場合、魔法のパラメーターに大きくマイナス補正が掛かる。
フル詠唱の時間をかけた場合、パラメーターに微弱なプラス補正がかかる。

【粘水】
全ての水魔法に粘性を持たせる。

【アクアベール】
水魔法。
水の被膜を精製し身を守る。


 【一意専心】と【無詠唱】が目を引くスキルだ。
 だが、俺的にこれが意外とよさげだよなと思うスキル。
 それは【粘水】である。

 効果は、全ての水魔法に粘性を持たせる。
 それだけだ。
 だが、単純なスキル程、色んな物に応用が利く。

「詳しく言うつもりも無いけど、あたしの水の一撃は重いよ?」

 そんな彼女に対して俺は、【アポート】【フィジカルベール】とそれからつながる【魔纏】くらいしか教えれることは無かったのである。

「あたしも初段の黒帯はもらったけど、そんなスキルがあるなんて知ったらさっそく取らなきゃね。今度紹介してよ、ローレント」

「う、うん」

 美人に耳元で囁かれたら、肯定するしか無い。
 仕方の無いことだったのだ。
 何はともあれ、俺の開示した情報は、彼女の中で使えると判断されたらしい。
 よかったよかった。

「まて、どこで手に入れたんだ?」

 ある意味、触れてはいけないタブーだったりする。

「は? 教えるわけないだろ? あたしはローレントに教えないし、聞くつもりも無い。ローレントもそうだろ?」

「ああ」

 願ったり叶ったりだな。

「けっ」

 人造人間、もとい氷結女帝である十八豪のツンとした言葉を受けて、トモガラは悪態をついて進み始めた。
 もしかして、自分だけなんか良い感じのスキル持って無くて羨ましいのか?
 基本的に無難な選択で最前線を突っ走るトモガラは、そう言う間違いが少ない。
 俺は基本的に適当にやって失敗することが多いんだが、トモガラは本当にその辺が抜け目ないと言える。

「なんだい? まさか羨ましいのかい? そら、欲しけりゃくれてやるよ」

「てめー! 女だからって容赦いねーからな!」

 手斧片手に【ハイブースト】【ハイマッシブ】【ポテンシャル】と身体能力系スキルを全て駆使したトモガラは、飛んで来たかなりの質量を持つ水の塊を弾くと飛びかかる。

 それを前にして、十八豪は怯むこと無く水球を撃ち続ける。
 バジョンバジョンとフィールドに大きな衝撃音が鳴り響くが、これはコイツら也の一種のコミュニケーションだ。

 そう言うことにしてアイテムボックスから取り出した固いパンを千切って口に放り投げた。
 あ、ローヴォもいる?

遅れました
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