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GSO グローイング・スキル・オンライン 作者:tera
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「久しぶりだな! しばらく見ないうちに魔法使いらしく、……なってないみたいだな!」

 何もしないのは身体が鈍る。
 かといって夜の森を奥までいくのは躊躇われる。
 気軽にログインログアウトできるアイテムがあれば良いのに。

 そんな訳で、道場に顔を出してみた。
 相変わらず道着を身につけた子供や主婦、おっさん達が汗水ならして鍛錬してる。
 師範代は俺の恰好を見て笑っていた。
 腰に刺してるのはレイピアとヌンチャクだしな。

「活躍は聞いているぞ! せっかく紹介状書いたのに残念だ」

「その節はどうも」

 第二の町には脚すら踏み入れてない。
 噂によると、第一の町は活気づいているが、第二の町ノークタウンではまだまだ根強くバッシングが残っているというのだ。

 難儀なもんだ。
 プレイヤーによる攻略拠点が出来たものの。
 今度はこっちに人が集まって、てんやわんやだとか。
 プレイヤー都合で動くのは仕方ないが、レイラ達みたいに町の近くに攻略拠点を作るプレイヤーが現れるのも待つしか無いのだろうか。

「今日は普通に鍛錬か?」

「はい、最近身体が鈍っているようなので」

 師範代は「着替えて来い」と奥を示す。
 頷いて更衣室に入ったが、その時思いだした。

 道着、売っぱらった件に付いて。
 流石にレザーシャツとパンツで取り組むのは、嫌だな。
 道場に来たら道着。
 これは確定事項なのである。


【道着】所持者:マルス
毎日洗濯されて綺麗。

[借りますか? yes/no]


 棚の中に綺麗に畳まれている道着を手に取ると。
 そんなメッセージが出た。
 綺麗でも流石に汗の匂いは……?
 ゲームだから大丈夫だよなと思って嗅ぐ。

 ほのかな男の香りがする。
 おえええ。
 そうだ、魚とか生臭いよなこれ。
 良く出来てるゲームだこと。

 もちろん借りましょう。
 そして道場へ。

「む、マルスのか。自分のはどうした?」

「師匠との鍛錬で破れました」

「ああ、スティーブンさんか。あの人は怒らせると怖い。俺もガキの頃に勝手に森や川に遊びに行ってしこたま怒られたんだ」

「そうです、厳しいです。無かったので知ってる人のを借りました」

「まあスティーブンさんなら仕方ない。でもマルスはもうすぐ来るぞ」

 げっ、マジですか。
 どうしようかなと思ったら道場の入り口から叫び声が。

「何故僕のを道着を使っている!」

「すいません、色々と事情があって」

 詰め寄られていると師範代が助け舟を入れる。
 道場で喧嘩騒ぎが起きたら不味いだろうからな。

「よし、仕方ないから新しい道着をやる。ボロボロになったら内に持ってくれば修復くらいは出来るから」

 それを先に言え。
 危うくクレーマーになってしまう所だったが、ぶっちゃけ俺も立つ瀬が無い部分がある。
 双方合意の上で新しい道着が貰えるなら、それでいいじゃないか。

 これからも道場は使うから。
 絶対に無くさないようにしようと心に誓った。

「生暖かい、それあげますから、僕に新しいのを使わせてください」

「いえ、これは元々貴方のを借りたのです。その道着は師範代が私に新しくくれたものなので、すいませんこちらの道着はお返しします」

「今度こそ倒してやる!」

 道着を交換すると、揃って道場へと出た。
 マルスは手にグローブを装着し、準備万端だと言った風だ。

「いつでも試合できます!」

「慌てるなマルス。先に基礎からだ、どれ、ローレントの基礎も俺が直々に見てやろう。着いて来いよ」

「はい」

 そう言って師範代は、道場の壁際を軽く走り出した。
 板間をグルグルと駆ける音が響くが、誰も気にしてない様だった。

「魔法使いなのに良く耐えますね?」

 所々でマルスの小言を右から左に流しながら走る。
 徐々に上がって行くペースに追いつけなくなって来たぞ。
 鈍っている。
 というより、魔法職は元々体力が少ないのは織り込み済みだが。

 まさかここまでだったとは。
 そりゃ猿公に負けるわな。
 そして俺がバテ始めたのを確認した師範代が徐々に走る速度を落として行く。

「次だ!」

「はい!」

「……はい」

 マルスは少し汗をかいているが、まだまだ余裕そうだった。
 俺は普通にHPバーが少しずつ減って行く状況だった。
 何かのペナルティですかこれ?


【ステファン】Lv:???
職業:格闘家
称号:師範代


 汗一つかいてすらいない師範代のレベルは見えませんでした。
 なんつーこった。
 マルスは?


【マルス】Lv:10
職業:町人
称号:初段


 レベル10……。
 魔法職ってば、飛び切り体力低く設定されてるのかな。
 HP以外にも体力に関係する何かがあるんだろうか。

 そして、基礎型と呼ばれる型を行って行くのだが、これは思い思いの動きでいいらしかった。
 マルスはステップを踏みながらシャドーボクシングの様。
 だが、確りとした型が出来ているのでスポーツ空手といった印象を感じた。
 俺はどうしようか、まずは心を落ち着かせるのが大事だ。
 心身ともに、休めないと。
 座禅を組み目をつむった。

 音が聞こえてくる、道場の門下が武具を振るい、拳と拳を突き合わせる音。
 次第に、自身の心音と呼吸。
 そして深い沈黙の中へと身を投じて行く。


[新しいスキルが解放されました]


 ……え?
 いかん、集中力が!

 一度集中したものが途切れると一気にダメになる。
 目に、耳に、感覚にシャットアウトした情報が戻って行く。

 瞳を開けると目の前には師範代が居た。
 うわびっくりした!
 僅かに顔が歪んでしまう。

「……俺の良く知る魔法使いの瞑想とは違う」

「師範代、ただバテて休んでいただけでしょう?」

 目の前に座り、曇り無き眼で俺を見つめる師範代。
 マルスはその様子をみて鼻で笑っていた。

「よし、マルス。一本勝負をやってみろ。ローレントもいいな?」

「はい」

「はい、基礎でばててる奴。この間はまぐれだってことを指南してやりますよ!」

 師範代の「初め」の声が響く。
 マルスは低い姿勢でタックルをしてくる。
 戦法を大きく変えた様だった。
 大方、投、極めの練習を行っていたのだろう。

 僅かに横に交わし、ヘッドロックする。
 そしてその勢いのままマルスの脚を押し上げ後転。
 あっという間に立場は逆転。
 俺が馬乗りになってマルスを押さえ込むと言った形だった。

「うぐぐぐぐぐ!!!」

「まて、止めだ。次は俺が相手になろう」

 同時に締めも行っていたので、マルスの顔は真っ赤になっていた。
 首をおさえながらゲホゲホと喉を鳴らしている。

「さっき俺を鑑定しただろ?」

 気付かれてました。
 ここは素直に鍛えておく。

「レベルは見えたか?」

「いいえ、見えませんでした」

「まぁいい、さっきの呼吸法は武術スキルで【息吹】に近い。そしてその上には身体強化系譜の上位スキルに【闘気】と呼ばれるものもある。レベルと共に武道場での修練を積み五段以上を取らなければ取得は出来ない!」

「なっ!?」

「すなわちローレント、お前の武術の腕前はソレに近いものだ。俺の見立てでわかった」

 師範代が言い放った言葉に、マルスが信じられないという顔をする。
 五段?
 ほぼほぼ名誉段だな。

 スキルがどうとか言っていたが、ソレを覚える事が出来るのか。
 それとも五段の資格が無い限りスキルは手に入らないのだろうか。
 そういえば、スキルが解放されましたってインフォメーションが流れていた。
 確認する。


【フィジカルベール】
・軽減Lv1/5
・熟練Lv1/5
・消費Lv1/5
・詠唱Lv1/5


 どうやら、身体を魔力の層で覆い、ダメージを軽減するスキルの様だった。
 パラメーターの総数から察すると、普通に初期スキルのような気がしないでもないが、何故今頃になって解放されたのだろうか。

「フィジカルベールというスキルとは違うんですか?」

「闘気は魔法ではない。よって詠唱など必要ないからな!」

 そしてひと呼吸置いて師範代は言う。
 魔法職でも、覚えようと思えば覚えるのだが、根本的な体力の違いから使い勝手は悪いかもしれない。
 それでも物理攻撃力が上昇するスキルなんだって。

 まあ名前から予想はついていた。
 実際は腹圧を高め、意識を丹田に落とす訓練のようなもの。
 重心の置き方を学ぶ為の技術である。
 このゲームではスキル効果としてそれが攻撃力に直結している様だった。

「こうですか?」

 度肝を抜いてやる。
 闘気がどんなもんか知らんが、息吹くらいだったら誰だって出来る。
 トモガラだってそうだ。

「……魔法職にしておくのが惜しいくらいだ。気をつけろ、半端なスキルレベルじゃ、体力は徐々に減って行くぞ」

「え?」

 HPバーを見ると体力が少しずつ減って来ていた。
 そして師範代がスキルを伝授してやる。
 と、蹴りかかってくる。

「うわ!」

「どうした? スキルブックだと思ったか? そっちでもいいが、組み手を交わす事で貰えるスキルは最適化されて手に入るぞ! 俺に認められなければならんがな!」

 だったら望む所だ。
 回し蹴りを受ける、痺れるような衝撃が左腕に走る。
 そして、真っ正面からの拳。
 相変わらず早いが、手加減をしているのがわかる。
 手刀受けで乗り切る。

「今までの技、スキルで伝授してやろうかっ!?」

「結構です!」

 そんなものスキル使わなくたって出来る。
 フィニッシュには重量にスキル補正をプラスした【スラッシュ】と。
 問答無用で前に移動し突く攻撃の【スティング】がある。

「息吹が切れてないの偉いぞ!」

 HPは減ってるから切りたいんですけどね。
 この分では闘気まで辿り着いたとしても使えるスキルなのか危うい。
 猛攻を回し受けで捌き、そのまま引いた上と下の手で顎と金的を狙って行く。
 当然躱されるが、すぐ引き戻し、両手を前に構える。
 前羽の構えだ。
 まずは相手の攻撃を捌け、そして隙を見よ。

「まだまだ!」

 右上段蹴りを前に出した左手で掛け受ける。
 そして大きく足首を掴むと引っぱり身体を引き寄せる。
 バランスを崩した師範代の道着を掴み揺さぶる。

 ここまで事前作りをした上で、左右どっちでも良い。
 揺さぶりに反射して耐えようとした所を、隅落とし。
 柔道の神と呼ばれたジジイが愛用していた技。
 俺に出来ない訳が無い。

「覇ッ!!!!」

 耐性を崩した所で、師範代の身体に光が灯る。
 俺の手は大きく弾かれ、そのまま投の勢いを利用してバク転。
 そこでHPが一割を切って俺の負けになった。

 マルスは何が起こったかわからないと言った様子だった。
 師範代はよれた道着を着直すと俺の前に立って礼をした。

「さっきのが闘気だ。身体能力向上にプラスして、攻撃力と防御力が上昇する。……残念だったな」

「いえ、勉強になりました」

 それにしても闘気か。
 卑怯な技だな。
 弾かれたのは防御力の上昇と言うものが関与しているのだろうか。

 正直、最近負け越し続けてめっちゃ悔しいです。
 顔に出さず、悔しさを噛み締めているとインフォメーションメッセージが流れた。


[師範代から身体強化スキル【息吹】を伝授されました]
[同時に身体強化スキル【息吹】の最適化を実行します]

【息吹(最適化)】
・効果Lv3/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv10/10
※称号”道場二段”スキル。

[黒帯、及び軽兎フロッギーブーツの効果を身体強化スキル【息吹】に適用させますか?]
[適用させた場合、身体強化スキル【ブースト】の適用効果が無効されます]
[適用させますか? yes/no]


 ここはノーで。
 ここぞという時に使うスキルとして取って置こうと思う。

「魔法職だから、いくら完璧にこなせていても初期の効果は三割ほど。そして熟練度が高かろうと、消費を上げなければ体力は減って行く。スキルレベルマックスでパッシブ効果に変わる。まあ今のままでも使いどころさえ間違わなければ起死回生のスキルとしてかなりの性能だ」

 そう豪語する師範代の言う通り。
 実力が拮抗している時に使えばかなり有利になる。
 それほどのスキルだと思った。

 相変わらず使い勝手は悪い。
 だが【エナジーボール】どこか、【アポート】以外の魔法スキルに一切スキルポイントを使用していない俺からすれば、こうやって派生外のスキルを取得できるのはありがたかった。

「そしてこれをやろう、新しい帯だ」

 受け渡されたのは黒帯。
 もう持っているのにと思いながら受け取ると。
 再びインフォメーションメッセージが流れる。
 今日鳴り過ぎ。


[称号”道場二段”を獲得しました]


 なに!?
 さっそく鑑定する。


【黒帯(二段)】
軽くて丈夫な素材で作られた帯。
色で階級と性能を表す。
・防御Lv2
・身体能力系スキルレベルボーナスLv1
・耐久100/100


 前の黒帯と比べて、防御レベルが上がった程度だが。
 それでも大きい。
 一部フロッギーブーツと表記が違う部分があるが。
 一体それにどういう意味があるのだろうか?

 それは追々考えるとして。
 ゲームの中と言えど、ガチで戦うと精神がつかれる。
 いつのまにかローレントと書かれたロッカーがあった。
 そこに道着を直して道場を後にする。

 五段以上になれば、闘気を習得できると師範代は言っていた。
 いずれだ、いずれ取りに行ってみようかな。



ーーー
プレイヤーネーム:ローレント
職業:無属性魔法使いLv14
信用度:80
残存スキルポイント:0
生産スキルポイント:3

◇スキルツリー
【スラッシュ】※変化無し
【スティング】※変化無し
【ブースト(最適化・補正Lv2)】※変化無し

【息吹(最適化)】new
・効果Lv3/10
・消費Lv1/10
・熟練Lv10/10
※称号”道場二段”スキル。

【エナジーボール】※変化無し

【フィジカルベール】new
・軽減Lv1/5
・熟練Lv1/5
・消費Lv1/5
・詠唱Lv1/5

【メディテーション・ナート】※変化無し
【エンチャント・ナート】※変化無し
【アポート】※変化無し
【投擲】※変化無し
【掴み】※変化無し
【調教】※変化無し
【鑑定】※変化無し

◇生産スキルツリー※変化無し
【漁師】※変化無し
【採取】※変化無し
【工作】※変化無し
【解体】※変化無し

◇装備アイテム
武器
【大剣・羆刀】
【鋭い黒鉄のレイピア】
【魔樫の六尺棒】
【黒鉄の双手棍】
装備
【革レザーシャツ】
【革レザーパンツ】
【河津の漁師合羽】
【軽兎フロッギーローブ】
【軽兎フロッギーブーツ】
【黒帯(二段)】

◇称号
【とある魔法使いの弟子】
【道場二段】new

◇ストレージ
[スティーブンの家の客間]
セットアイテム↓
[カンテラ×2]
[空き瓶×8]
[初級HP回復ポーション×3]
※残りスロット数:7

◇テイムモンスター
テイムネーム:ローヴォ
【グレイウルフ】灰色狼:Lv1
人なつこい犬種の狼。
魔物にしては珍しく、人と同じ物を食べ、同じ様な生活を営む。
群れというより社会に溶け込む能力を持っている。狩りが得意。
[噛みつき]
[引っ掻き]
[追跡]
[誘導]
[夜目]
[嗅覚]
[索敵]
[持久力]
※躾けるには【調教】スキルが必要。
ーーー
どうやらもやしが悪くなっていたようです。
皆さんもそろそろ夏場、食べ物の扱いは気をつけて。
明日も7時更新。
明日は再び師匠スティーブンとの修行です。


お読み頂きありがとうございました!
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