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スーパーアルティメットマン

作者: 影山洋士

SF=すこし・ふしぎ


怪獣は突然現れた。しかしそれを倒す者も突然現れた。




20XX年、怪獣は日本の農村地帯のS市に突然現れた。体長30メートルで2本足の恐竜のようなその異形は正に怪獣と表現する他なかった。



目撃者達の報告によるとその怪獣は突然空に現れた黒い穴から出現し、現れた後は何が目的かも分からないがその場をウロウロしていたようだった。

しかしウロウロと言っても体長30メートルの巨体、周囲の轟音と地面の揺れはかなりのものだったらしい。倒壊する建物も少なからずあった。




住民たちがその怪獣の姿に恐れおののいている時、その者は現れた。




シルバーと黒のツートンカラーの体、顔は無表情に固定され、よく言われる宇宙人「グレイ」のような顔をしていた。こちらも体長30メートルの巨体、その者はどこからか分からないが空を飛んでやってきた。


そして怪獣の前の地面に降り立つと、いきなり怪獣に対して向かっていった。


凄まじい轟音を上げ激突する両者。怪獣は恐ろしい叫び声を上げる。


暫くはお互いを破壊し合おうと激突を続けていたが、ツートンカラーのその者は突如後ろにひるがえってジャンプすると手をクロスさせ両手からビームのようなものを出した。

そのビームは怪獣に当たり、怪獣は轟音と共に砕け散ったのであった。



そのニュースはたちまち世界中に伝わり世界中でトップニュースとなった。

近隣住民が撮影した動画は動画サイトでも記録的な再生回数を数えることとなる。



政府では早速緊急対策会議が行われた。

しかし結局は状況把握だけで精一杯だった。



世界がまだその話題で持ちきりの頃、またもや日本に怪獣が現れた。


空中に出来た黒い穴から現れた怪獣は、前回とまた違う色と形態の怪獣だった。

今度はあらかじめ状況を予測していた政府だったので、スクランブルで航空自衛隊を出動させた。


しかしその自衛隊機が現場に到着するより早く、またあのツートンカラーの謎の巨人が現れたのだった。

またもや激突する両者。ひとしきり戦ったあと、最後にはツートンカラーの巨人がビームで怪獣を破壊して終結するのだった。


去っていく巨人。世界中の研究機関が分析してもどこから来て、どこに去って行くのかは分からなかった。



二度の現象を目撃して、世間はこのツートンカラーの巨人を「人間を救うヒーロー」だと認識し始めた。

名前も「謎の巨人」から、アメリカのタブロイド紙が名付けた「アルティメットマン」に定着していった。


この頃にはもうアルティメットマンの熱狂的なファンも現れ、早速フィギュアなども造られ売られるようになっていた。




そして、三度目の怪獣の襲来がやってくる。

またどこからともなく飛んでくるアルティメットマン。

今度も両者は戦い、アルティメットマンが勝利するのだが、今回は一つの事件が起こった。


それは怪獣とアルティメットマンが戦い崩れた建物の下敷きになって一人の老人が亡くなったことだった。

しかし、アルティメットマンの活躍に興奮していた世間にその事故は注目されなかった。




そして、四度目の怪獣の襲来。

またもや現れるアルティメットマン。


しかし今度は決定的な出来事があった。


怪獣とアルティメットマンが戦う最中、一人の主婦がアルティメットマンに踏まれ亡くなってしまったのだった。

写真週刊誌に掲載されるアルティメットマンの巨大な足跡と主婦の死体。



この事件の後、世論は真っ二つに別れることとなった。




『そもそもアルティメットマンは必要な存在なのか?』




これまで怪獣が能動的に何らかの破壊活動を行ったことは確認されてなかった。

怪獣はいつもウロウロしているだけで、寧ろ困っているようにさえ見える時もあった。



そしてもう一つの疑問、




『アルティメットマンでなければ怪獣は倒せないのか?』




航空自衛隊でも倒せるとの軍事評論家の意見もあった。




アルティメットマンは必要だ、いや必要ない。世間が侃々諤々の議論を広げる中、五度目の怪獣の襲来があった。



しかし今度少し様子が違った。

アルティメットマンがなかなか現れなかったのだ。


その結果、航空自衛隊の方が先に怪獣に到達してしまった。

到達してしまった以上攻撃しなければならない。

初の実戦に悪戦苦闘する自衛隊機。

しかし何度かの攻撃でとうとう怪獣を倒してしまったのだった。



今度は航空自衛隊の快挙に湧き上がる世間。

一気にアルティメットマン不要論が多勢を占めることとなった。


アルティメットマン不要デモを行う団体。そのデモの中にはかの被害者の主婦の遺族もいた。

アルティメットマンを敵に回すべきではないとテレビで説く有識者。



そして、六度目の怪獣の襲来。


今度も自衛隊機が先に到着した。怪獣に攻撃する自衛隊機。怪獣は素早く動く自衛隊機に対応することは出来ない。



そんな中、アルティメットマンが飛んできた。


別の緊張感に包まれる現場。


アルティメットマンは現場に降り立つと、怪獣と自衛隊機の戦いを動かずに、その無表情な顔でじっと眺めていた。

ニュース映像で見るその姿は意外に猫背だった。



怪獣、アルティメットマン両者に注意を図る自衛隊。しかし今度も自衛隊機が怪獣を倒すことに成功した。

アルティメットマンは最後まで動かずにその様子を眺め、そしてゆっくりと飛び去っていった。




そんなある日、怪獣が現れる例の空中の黒い穴がまた現れた時、いつ現れたかも分からないアルティメットマンがその黒い穴を掴むと「バチンッ」と握りつぶしてしまった。


何事もなかったように飛び去っていくアルティメットマン。



それ以来怪獣もアルティメットマンも二度と現れることはなかった。





しかし世界には大きな変化があった。

世界中の国が軍事戦略を見直せねばならなくなったのだ。

あの怪獣が自国に現れたらどうするべきか。或いは怪獣を軍事利用出来ないものか。

そしてアルティメットマンの研究。


結果的にそれぞれの国は国同士のいがみ合いをしてる場合ではなくなり、結果的に世界は少し平和になったのだった。









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