下校
部活を一通り見終わると、勇人と紫の二人は下校した。
だが、二人はなんだかんだ言って良家の子供である。かつてナギが幾度も命を狙われていたように二人も何度か命を狙われている。
この日も、影から彼らを狙う怪しい影が。
その暗殺者は、二人の通学路沿いにあるアパートからライフル銃を使って待ち構えていた。
「来た!!」
ターゲットの二人が歩いてきた。ライフルのスコープを覗き込む暗殺者。
「相手は所詮高校生。鉛弾を撃ち込めばそれで決まりよ。」
任務は楽勝と思っていた。
「子供を撃つのはちょっと気が引けるが、仕事だからな。」
暗殺者は引き金に手を掛ける。
だが、次の瞬間スコープが割れ、さらに銃にも凄まじい衝撃が走る。暗殺者もその衝撃で後ろに倒れる。
「うわ!!」
何がなんだかわからないうちに、暗殺は失敗していた。
「まったく、馬鹿なことをやる大人が多くて困るよ。」
勇人が手の上で石を持ちながら言った。
「けど勇人また腕上げたね。」
紫が言う。勇人はゆうに50mは離れている場所のライフルを一瞬の内に見つけ、そして石を投げて破壊していた。さすがハヤテの息子だけある。
そして紫にとっては、驚くに値しない、もはや見慣れた光景だ。
そんなこんなで二人は三千院家に帰ってきた。
「「ただいま。」」
「おかえりなさい。二人とも。」
そう言って。メイド姿のマリアが二人を出迎える。
真理奈の母親のマリアも今や40の声を聞こうとしている。なのに、外見はどう見ても17歳当時のままだ。多分真理奈と並んだら姉妹と間違われてもおかしくない。
もっとも、そのように歳と外見が不相応なのは何もマリアだけではないが。
「真理奈はまだ部活かしら?」
「「はい。」」
マリアの質問に二人揃って答える。
今まで毎日3人は一緒に帰って来ていた。中学まで勇人も紫も一応部活には所属していた。勇人は野球部、紫は陸上部であった。
二人はハヤテの血を継いでいるのか運動は得意だ。ただし、常人のレベルから見れば出来すぎている。
何せ勇人は中3でハンドボール投げの記録が45mだったし、紫は同じ歳で50mを5秒で走っていた。
紫は母親のナギに外見はそっくりだが、上記の様に運動は大得意だ。これはハヤテが小さいころから外で遊ばせていたのが影響している。ちなみに、同時期にナギは二人に12時間ぶっ通しでアニメを見せようとしてハヤテとマリア、そしてハヤテの兄の勝から猛反発を受けた。
実際、小さい子供にテレビを見せすぎは危険なので真似してはいけない。
ところで、マリアは今も三千院家で働いているわけではあるが、屋敷に住んでいるわけではない。しかし、三千院家の敷地内に住んではいる。
実は、マリアはナギに勧められて、空いていた別館に家族で住んでいる。もっとも、食事は2家族で一緒に食べると言うように、屋敷と言うよりは部屋感覚である。
そういうわけであるから、同い年である勇人、紫、真理奈は兄弟の様な感覚で育ってきた。そして、それが真理奈に「私は勇人君のことを一番知っている!!」という自負心を持たせているわけであるが、それはまあ別の話だ。
話を元に戻す。
「夕食まではまだ時間があるので、取りあえず部屋に戻って荷物を置いて勉強でもしていて下さい。」
マリアに言われ、二人は自分の部屋に戻る。
さて、母親のナギは中学生の歳で高校レベルの勉強が出来ていたが、この二人はというと、やはり良くできる。もちろん、三千院家の子供として、小さいころからそれなりの教育を施されてはいるが、それを省いても良くできる。ただし、ナギが万能であったのに対し、二人には弱点があった。
まず勇人は数学が苦手であった。ただし、あくまでナギや紫と比較したらの話で、普通から見れば良くできる。ただどんなに本人が努力しても伸び悩んでいる。これはもしかしたらハヤテの不幸体質を少しばかり含んでいるかもしれない。
一方の紫は美術がだめであった。これは高校に進級すればもはや成績には響かないが、ただし本人は相当に気にしている。母親のナギが漫画を描くのが好きであったから、自分はどうして出来ないと思ってしまうらしい。この紫の弱点にはハヤテもナギも頭を捻った。だが、その反動かはわからないが、文章力はすごい。現に国語の授業で簡単な童話を作る事があったが、その時はクラス全員が感動するほどの作品を書き上げている。
二人は部屋に入ったが、紫は鞄を置き着替えると、直ぐに部屋から出た。そして隣の勇人の部屋の扉をノックした。
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