生徒会長の恋 謀略編
学院際の数日前のこと。画像研究部の部室に勇人、紫、優、美沙、サエキ、由希、未来と言ったお馴染みのメンバーが集まっていた。
お菓子やジュースの乗った机を囲んで座って話し合う彼らの議題は、ずばり朴と櫻の恋の進展である。
「それで、実際の所どうなのよ?」(by紫)
「喫茶どんぐりじゃ2人とも一緒に仕事する事が多いらしいよ。そう北斗店長が言ってた。どうみても、2人ともカップルにしか見えないって。」(by勇人)
「じゃあ、それなりに進展しているわけですね?」(by優)
「生徒会でも2人とも仲がいいもんね。」(by美沙)
「是非とも2人が告白する瞬間はカメラにおさめたいです。」(by由希)
「僕はお2人との付き合いはほとんどないけど、仲が良いって言うのは見ればわかります。」(byサエキ)
「叔母さんに似て恋愛には疎いと思っていたけど、あの娘にもようやく春がきたんだね。」(by未来)
「もしかしたら、もうかなり深い仲だったりして。」(by紫)
「かもね。」(byその他全員。)
そう言って笑う全員。もし本人たちが聞いていたら、恐らく櫻は正宗を振り回してそれこそ死天使のごとく暴れ回るだろう。また、朴は勇人を上回る体力を発揮して全員に極刑を下すかもしれない。
「けど、2人とも仲は良いのに、正式に付き合ってはいないみたいなんだよね。」
紫が面白くなさそうに言う。
「確かに。朴先輩も櫻も素直じゃないよな。」
「本当だよね。正直に付き合えば楽しいのに。」
そう言って、美沙は勇人に自分の腕をからめた。絡められた勇人の方も、まんざらではなさそうだ。
他のメンバーはそんなおのろけをスルーして話を進める。
「けど、見ている側としては早くくっついて欲しいですよね。」
「本当だよね、見ているこっちがじれったくて仕方がないよ。」
こう言うのは優と未来だが、ある意味これは人の恋愛を玩具にしている不適当な発言である。
もっとも、優からしてみれば先ほど美沙が言った言葉と同じく、好きな人と想いが通じて付き合うことは素晴らしい事だという認識があって言ったのだ。それに対して、未来の方はかなり他人事と見て言ったようだが、もちろん悪気はなかった。
「まあとにかく、僕たちに出来るのは2人が無事カップルになれるように祈るだけじゃないの?」
サエキが消極的な意見を言うが、直ぐにブーイングが飛ぶ。主に女性陣から。
「そんなの可哀想よ。」
「友達なんだからもっと積極的なことを考えなくちゃ。」
「うう・・・」
サエキは黙り込む意外に方法は無かった。
「まあ、取りあえずこれからはなるべく2人が一緒になれるように私たちでサポートするべきよね。」
「けど紫姉さん。サポートするって言ってもどうするの?」
紫の言葉に優が首をかしげる。
「え!?そりゃあ・・・2人の距離が近づくように、声をかけて上げるとか」
「紫。それ絶対無理。朴先輩が櫻に近づくように言葉掛けてみたけど、全然駄目だった。」
「う!」
「2人とも頑固だからね。多分本心じゃ好きでも、どっちかが言うまで言わないつもりよ。」
身内である未来が確信したように言う。
「けど、昔理事長(ヒナギクの事)は今の旦那さん(健二のこと)にチョコを渡して告白したんですよね?なら、なんとかなるんじゃないですか?」
そう言うのは由希だ。
「そりゃあそうだろうけど。」
「まあ、これは2人の問題だから。それに、露骨なサポートは2人とも通じないから、さりげなく、わからないように2人の恋愛の手伝いをするんだ。」
「具体的にどうするんですか、綾崎先輩?」
「まあ、なるべく生徒会の負担を減らしてあげるとか。さりげなく、2人が同じ場所に向かうようにしてあげるとか。とにかく、そう言う風にやっていくしかないね。」
その勇人の言葉に、全員が頷いた。
そして迎えた学院際当日。生徒たちがまさに青春時代を謳歌するかのごとく燃え上がる日であるが、生徒会にとっても警備やら、なんやらで忙しい日である。
そんな中で、勇人の提案したさりげなく2人の恋をサポートする行動は始まっていた。
それに最初に気付いたのは櫻だった。彼女は学院内の見回りを行なうローテーションの書かれていた紙を見ていたが、その内容が先日貰った物と違う事に気付いた。
「あら?変更されているじゃない?どうしてなのよ?」
彼女が首をかしげていると、紫が説明した。
「部活やクラス企画の急な予定変更で、時間に空きができたり、変更したりする人が出たからそうなったの。それと、今年は生徒会のOBの人が仕事を手伝ってくれるそうで。」
「ええ!?何それ、聞いてないわよ!!」
「俺もだよ。一体どういうことだよ綾崎?」
今度は櫻のみならず、近くにいた朴も声を上げた。2人にとって寝耳に水のことだったからだ。
「あれ?おかしいな・・・あ、しまった!!そのことを書いた書類見せるの忘れてました。すいません、朴先輩。それに櫻。」
紫がぺこりと頭を下げるが、2人からは見えないその表情は満面の笑顔だった。実はこれ、意図的に行なった行動だった。
今回の生徒会OBとは、実は理事長のヒナギクに頼んで行なわせてもらった謀略であった。手伝うOBというのは、ハヤテや美希、泉、マリア、ナギと言った親たちの事だ。
本来根が真面目なヒナギクは、こういう恋愛事に首を突っ込むことを嫌うのだが、彼女としても母親として娘の恋愛が成就するのを願っていた。そこで、悪いと思いながら協力してくれたのだ。
それぞれの親たちも、久しぶりに青年時代に戻ったような気持ちでこの計画に協力してくれていた。特に、美希や泉は大いに張り切っているという。
ちなみに、櫻と朴がこの事に気付く事はついになかった。
「はあ。まあ、いいわ。もう時間もないし。」
「それもそうだ。じゃあ、俺は先にクラスの仕事があるから。」
そう言って、朴は生徒会室から出て行った。
普段ならここで、大いに怪しい所を調べる櫻であったが、今回は時間もないから深く追求しないことにした。
「けど、私の番はお昼に1回だけだけど、これで良いの?」
「うん。ちゃんと均等に割り振ったから。櫻は心配しないで。それに、櫻だって学院際楽しみたいでしょ?」
「そう。わかったわ。じゃあ、私の番は12時から30分で良いわね?」
「うん。」
こうして、生徒会長の学院祭の1日が始まった。 |