家族旅行 出発編
光と一哉が会った翌日の事。
「一緒に旅行?」
ナギが受話器に向かって言う。そう彼女は丁度電話中。相手は咲夜だ。
「そや。今年はゴールデンウィークに会っただけやから、夏休みに家族全員でどこか行こうや。なんなら伊澄やマリアさんの家族も誘って。」
20年前の中学生当時、お互い毎日のように会っていたが、お互い大人になり忙しくなり、最近は会う機会はめっきり減ってしまった。年に一回か二回だ。そういうわけで、咲夜が各家族合同の旅行を提案してきたのだ。
「私は良いが、ハヤテや皆の予定を聞かないとな。」
「そうかい。うちは家族全員一致やで。なんか一哉がえろう喜んどったけど。」
「ふーん。」
そしてその日の夕方。
「いいんじゃないですか。たまにはそういうのも。」
三千院家と姫神家が揃う夕食の席上、ナギは電話の件をその場に揃った全員に話した。そして、マリアからは先ほどの返事が返ってきた。
「そうですね。僕も良いと思いますよ。予定ならなんとかなると思いますし。」
ハヤテも賛成した。ちなみに、彼の予定が空くイコールはナギの予定が空くになる。なぜなら彼が執事兼秘書としてナギの予定を管理しているからだ。
「マリア、姫神はどうだろう?」
姫神はあいにくとこの時いなかった。
「勝さんなら多分大丈夫だと思いますけど。」
「そうか。お前たちは?」
ナギは子供たちの方を見た。
「僕はOK」
「私も。」
「私もです。」
「私は・・・弓道部の合宿は7月中ですから、それ以外ならいつでも。」
上から順に勇人、紫、優、そして真理奈の返事である。
「そうか。それなら大丈夫そうだな。なら、咲夜にはそう伝えておこう。」
こうして、三千院家と姫神家の合同家族旅行への参加が決まった。
「ところでナギさん。行き先とかは?」
ハヤテが聞いてきた。
「それはまだ決まっていないけど。」
「だったら伊豆にしませんか?今年はまだお母様のお墓参りしていませんし。」
「伊豆か・・・」
ナギにとって伊豆は思い出深い地だ。そして彼女の母親である紫子のお墓もそこにある。毎年命日に御参りしていたのだが、ここ数年は途絶えがちになっていた。今年はまだ行っていなかった。
そして伊豆なら、三千院家、愛沢家、そして鷺ノ宮家も別荘を持っていた。そういう面ではホテルを取る必要もなく都合が良い。
「それがいいな。だったら明日咲夜に電話しておこう。」
そしてさらにその翌日。ナギは咲夜に電話をした。
「そういうわけだから、うちとマリアの家族は全員OKだぞ。」
「そうかい。こっちもOKや。あと伊澄さんとこも参加するって。なんなら他にも誘ってええんよ。」
「他にもって・・・」
と、ここでナギはあることを思い出した。
(そういえば、勇人には彼女が出来たんだったな。二人の仲をより親密にさせる良い機会かも・・・)
「わかった。子供たちに友達を誘っても良いよう言っておく。それで、日付はいつにする?」
「そやな・・・お盆はどうや?丁度紫子さんも地上に帰ってくる事やし。」
「けど人で混みそうだしな・・・」
20年経って大分直ったが、ナギの人見知りはまだ若干残っていた。
「じゃあ2,3日ずらして8月の17日ぐらいなんかどうや?」
「17日か・・・わかった。」
この後、全員の予定が丁度揃ったため、旅行の日程は8月の17日からの二泊三日となった。
これが、子供たちにとっては楽しく、そして少し怖い思い出を作ることとなる。
そして旅行に行くメンバーは最終的に、三千院家、姫神家、愛沢家に鷺ノ宮家、そして桂家プラス瀬川美沙となった。合計21人。
ただし、これだけの人数だとさすがに全員一緒に移動する手段は無い。ナギはヘリコプターでの移動を求めたが、さすがに21人全員乗り切れるヘリなどない。あってもそんな物は軍用だ。
そこで、ハヤテはある考えを出した。
「いい機会ですから、子供たちにはそれぞれ公共交通機関を使わせましょう。」
庶民出のハヤテらしい意見である。もっとも、これには子供たちには社会体験をさせるべきという、彼の考えがあった。
結局、この意見がとおり、子供たちは全員公共交通機関で移動となった。ただし、さすがに愛沢家の姉妹はまだ小さいからという理由で親たちと共に移動する事となった。
そして、最終的に以下のように移動する事となった。
勇人・紫・一哉・美沙→特急列車
真理奈・櫻・澄香→特急列車
光・優→高速バス
勇人たちと真理奈達は別々の列車に乗る。お盆ではなかったが、列車が混んでいたために、席が取れなかったからだ。光・優のグループが高速バスで移動する理由も同じだ。
こうして、夏休みの旅が始まる。
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