夏休みも恋の予感
勇人と美沙が両思いになったのは良かったが、問題も発生した、櫻と真理奈である。
二人ともさすがに勇人と美沙の間を引き離すようなマネをするほど子供ではなかったが、さすがに心理的ダメージは大きかった。
なにせ、付き合いがそれなりに長い自分こそはと思っていたのに、突然表れた美沙に勇人をネコババされた形であったからしょうがないと言えばしょうがない。
しかし二人とも悲しみに打ちひしがれていた時間は極めて短かった。自らが負けたことは素直に認めるだけの度量が二人にはあったからだ。
そういうわけで、最終的に2人も勇人と美沙の間を認めている。
そうやって慌しくもあったが、7月はあっという間に下旬に入り、そのまま夏休みとなった。
夏休み。それは勇人や紫達にとって待ちわびていた季節である。高1であるからまだ受験を気にしなくていい。宿題も出されるが、元々秀才組の彼らにとっては手間を取られるような物ではない。つまり青春を満喫できるのだ。
さてそんな中、ある決意を固めている人間がいた。
「今度こそ紫さんに告白するぞ!!」
そう決意するのは、久々に登場の愛沢一哉である。
父親からの遺伝かはわからないが、彼は紫のことが好きである。しかし、告白はしていない。というか、恥ずかしくて出来ないと言ったほうが正解である。
しかし、この夏休みこそは絶対に告白すると決めていた。
「けど・・・どうやって告白しよう・・・」
一方で、告白するとは決めていなくても、大きく心が揺れ動いている人物がもう一人いた。
「優・・・」
ポツリとそう呟くのは、伊澄とワタルの息子である光だ。
「なんであいつの顔ばっか頭に浮かぶんだろう・・・もしかしてこれは恋?」
もしかしてではなく、実際に恋である。
彼にとって初恋である。
ちなみに、光は優とかなり付き合いがある。彼女を彼が実体化したということもあるが、彼女は元々ドッペルゲンガ−という存在であったせいで、霊感が相当強い。だから、光がたまに仕事を手伝ってもらう事もあった。
以前の伊澄と咲夜の構図に近い。ただし、優の場合は霊感が強い分、札を操って簡単な術を使うことも出来た。
その上達ぶりは伊澄を唸らせた程である。
「恋か・・・どうすればいいんだろう?」
しかしながら二人とも、どう相手との距離を縮めるかはわかっていなかった。
数日後、レンタルビデオタチバナ新宿店。
気分転換でもしようと、一哉はこの日DVDを借りにやってきた。すると、カウンターには光が座っていた。
「あれ?光が手伝いなんて珍しいじゃん。」
「よう一哉。澄香から急に頼まれてな・・・俺あんまり商売ごと得意じゃないのに。」
ワタルに外見は似ているが、商売の才能はあんまりない光。父親の才能は娘の澄香の方が強く引いていた。
この店は橘グループ復活の原点ともいえる店だ。20年経って店は改築し、当時よりも大きくなっているが、週に数回澄香が手伝っている。
今回光はその代わりを頼まれたらしい。本人には商売の才能はないから、あまりやる気のしないことである。
しかし、それはそれで一哉には好都合だった。丁度今は他にお客さんの姿はなかった。
「あのさ光相談していいかな?」
「うん?いいけど、何?」
「実はさ・・・」
一哉は光に、どう告白すれば良い物か相談してみた。
「ふーん。一哉は紫が好きなんだ。けどどうすれば良いって聞かれてもな・・・俺だって自分のことで困っているのに。」
「え!?そうなの?」
一哉が驚いた表情をする、
「なんだよその言葉。なんか俺がまるで恋なんかしないみたいな言い方だな。」
少し苛つきながら言う光。
「いや別にそんなことは言ってない。で、お前が好きなのは誰なんだよ?」
光は顔を赤くしながら言った。
「優。」
「優・・・ああ、こないだ三千院家に加わった。」
あれから三千院家には行っていなかったが、彼女とは白皇で何回か顔を合わせていた。
「そう。でもさ、女の子を好きになるのなんか初めてだから、どうすれば良いのかと思ってさ。なあ、どう思う?」
これには一哉も困った。聞くつもりが逆に聞かれてしまった。
「そんなこと言われても・・・」
一哉としては、「だったら告白すれば。」と言いたかったが、自分が出来ない手前そんなこと言うのは気が引けた。
光は光で、一哉に「告白する位の勇気出せよ!!」と言いたかったが、自分が悩んでいる手前言いにくい。
お互いどう答えれば良い物かわからなくなってしまった。
気まずい沈黙を破ったのはある人の言葉だった。
「お二人ともどうしたんです?」
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