引き継がれた想い
「どういうことなの?」
泉が理恵に聞く。その表情は不安の表情をしていた。
(嘘だよ。信じられない。嘘って言って!!)
彼女は心の中でそう思っていた。しかし、理恵は嘘と言ってくれなかった。
「母は、6年前に家族旅行の帰り道の交通事故で死にました。お父さんもお爺ちゃんも。私だけが助かりました。母が私を抱きしめてくれたおかげで、私は助かりました。」
希望は裏切られた。
「そんな・・・」
泉は夫に先立たれている。これ以上親しい人の死を見たくもなかったのに、突きつけられたのは厳しい現実だった。
「お母さん。大丈夫?」
友の死を知らされ、顔色を悪くした母に、美沙がよりそった。
「うん。大丈夫だよ。」
「そうか。理沙が・・・じゃあ君は今どうしているんだい?制服を着ているんだから白皇の生徒なのかい?」
今度は美希が聞く。
「今は横浜のおじさんの家に住んでいます。この服は母の遺品の中にあったものです。今日のことは、以前住んでいた神社の方が、わざわざこっちの住所を探し出して知らせてくれました。昨日連絡が来て。あの、花菱美希さんですか?」
「え!?そうだけど。」
いきなり名前を尋ねられ、少し驚く美希。
「あ、やっぱり。母の大切にしていたアルバムの写真の女の子に似ていたので。じゃあ、そちらは瀬川泉さんですか?」
「そうだよ。で、こっちが娘の美沙ちゃん。」
泉が娘を紹介した。
「よろしくね理恵ちゃん。」
「こちらこそ。」
「私の娘も紹介するよ。由希だ。」
美希も娘を紹介した。
「川西美希。よろしく。」
「よろしく。」
3人はお互いの笑顔で見合った。
その光景は、かつての3人娘を思わせるものがあった。
(あ・・・)
(懐かしい・・・)
美希と泉は何かデジャブみたいな物を感じた。
だが、親友の一人が知らぬ間に消えてしまったことはやはり2人にとって大きな衝撃だった。
泉の口から自然に言葉が出た。
「理恵ちゃん。今度お母さんのお墓を教えてくれるかな?」
泉が聞いた。
「はい。母もそうしてもらえると喜ぶと思います。」
「あのいい所すいませんが、タイムカプセルを掘り出しましょうか。」
ここまで思いっきりハブられていたハヤテの言葉に、5人は現実に引き戻された。
「あ、そうだったなハヤ太君。」
「ごめんね。」
というわけで、早速ハヤテとワタル、さらには勇人や光たちがシャベルを使って地面を掘り始めた。
しかし、意外と深く埋めてしまったのか、中々見つからなかった。
ようやく勇人のシャベルの先に金属の物体が触ったのは20分後のことだった。
「あった!!」
その後、慎重に周りの土を掻き分け、カプセルが完全に掘り出された。
蓋が外され、それぞれが20年前に入れたものを取り出した。
20年前に埋めたのは、それぞれ思い出の品と手紙である。
埋めた品は様々だった。ハヤテは白皇の生徒手帳。ナギは最初に作った同人誌。ヒナギクは生徒会長の腕章。ワタルは、DVD。伊澄は何故かよくわからないがお札。泉は髪飾り。美希は当時情報収集に使っていた手帳。
そしてそれぞれ手紙を読み、笑ったりした。
そして、最後に主を失った理沙の品は理恵が取り出した。包みに包まれていたのは細長い物だった。
「これ、マイク?」
「それは理沙が部活で使っていた物だ。」
そして、彼女は手紙を開いた。
20年前、理沙が未来の自分に宛てて書いた手紙。
何が書いてあったかは、理恵以外に知る者はいない。ただ、彼女が涙を流したことだけは事実だった。
彼女はお礼を言うと、静かに去っていった。
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