悪夢再び!!
現れたその悪霊の姿に、ハヤテとナギ、伊澄には見に覚えがあった。
「そんな馬鹿な!」
「私のドッペルゲンガ−・・・どうして、除霊したはずじゃ・・・」
ハヤテとナギがうめく様に言った。
21年前、ナギから分離し大混乱を引き起こし、そしてナギをハヤテに殺させようとしたナギのドッペルゲンガー。その時は伊澄によって除霊され、消え去った。なのに、それがまたハヤテ達の目の前に現れた。しかも、娘を苦しめていた悪霊として。
「おい!なんでお前が紫を!!」
ナギが怒りをあらわにして言った。
しかし、ドッペルゲンガ−は何も答えず、不敵に笑ったと思ったら突然窓から逃げ出した。
「あ!待て!!」
光がその後を追う。
「おい、光!!」
勇人もその後を追った。
ハヤテ達が引き止める間もなく、二人は窓からドッペルゲンガ−を追って行ってしまった。
「あ、勇人!!光君!!」
ハヤテがそう言った時には手遅れだった。
後に残された3人の内、ナギは紫に近づいた。
「良かった。熱は下がってる。」
苦痛から解放された紫はかわいい寝息を立てながら眠っていた。
「あのドッペルゲンガ−が体内から消え去りましたから、もう大丈夫です。」
「しかし、どうして今になって現れたんです?確か除霊したはずじゃ?」
伊澄の言葉に、ハヤテが疑問を口にした。
「恐らく、あまりに強い怨念を持ったために完全な除霊が出来なかったのでしょう。そして20年掛けて力を蓄えていたんでしょう。」
「けど、確かあいつは私の良心だろ?どうして怨念なんか持つんだ?」
ナギのもっともな疑問。
「私が思うに・・・あれは良心ではありません。少なくとも良心だけではありません。」
その言葉に、ハヤテとナギは驚愕の表情をする。
「「何だって!!」」
21年間、ずっと信じてきた事を否定されるのだから、その衝撃は大きかった。だがよくよく考えてみれば、良い考えの塊のはずの良心が人を殺す事を考える事はおかしい。
「恐らく、あれはナギの心の歪み、つまり悲しみや怒り、不安といった負の感情が意志を持ったものでしょう。時々あるんです、そうしたことが。地縛霊の一種と考えてよいでしょう。ナギは伊豆の不思議な温泉の効能のおかげと言いましたが、恐らくそれも原因の一つでしょう。ただ、最初は勉強したり運動をしたいと言っていましたから、良心も含まれてはいるでしょうが、もはやその良心は完全に封じ込められてしまっているようです。」
「じゃあ、また除霊しないといけないんですか?」
ハヤテの言葉に、伊澄が首を振る。
「だめです。あまりに負の力が大きすぎます。さらに良心の力まで融合しているでしょうから。例え今回除霊しても、根本的な解決にはなりません。おそらく、また20年もすれば力を蓄えて、三千院家へ復讐するでしょう。今回紫さんにとりついたのも、母親であるナギを苦しませるためでしょう。」
「じゃあどうすれば良いんだ?」
打つ手なしでは困る。
「まず負の力を弱まらせる必要があります。そのために、良心を負の心から分離し、引き出さなければいけません。負の力さえなくなれば良心の塊になりますから。ただ、先ほども言ったとおり、負の力が相当強いですから・・・」
伊澄はそこで黙ってしまった。
「なんにしろ、光君や勇人が追っかけています。危険かもしれないので、携帯で呼び戻しましょう。」
そしてハヤテは携帯を取り出した。
一方、追いかけていた光と勇人はドッペルゲンガ−を見失っていた。
「くそ、取り逃がした!!」
光が悔しそうに言う。
「けど、あいつは一体なんなんだ!?」
両親の説明を良く聞いていなかった二人には、正体はまったくわからなかった。
その時、勇人の携帯が鳴った。
「もしもし?・・・・父さん?・・・うん。・・・うん・・・わかった。」
電話の内容はドッペルゲンガ−の正体と、直ぐに戻ってこいという物だった。
「ハヤテさん何だって?」
「実は・・・」
勇人はハヤテからの電話の内容を光に説明した。
「・・・だから一端戻れだって。」
その言葉に、光は不服そうな表情をする。
「ここまで追ってきてみすみす逃がすなんて俺は嫌だぜ。」
「けど、伊澄さんも手を出しかねる相手だろ?光だけで勝てるのか?」
「・・・」
その言葉に、光はしばし押し黙ったが。すぐに顔を上げ勇人に言った。
「ちょっと携帯貸して。」
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