真夜中のゲーム
「眠れないな。」
夜勇人はベッドの中で呟いた。
光や澄香も加わり、昼間は全員で楽しく遊んでいたのだが、何故か寝付けない。恐らくその原因となっているのは紫のあの一言だろう。
「お前澄香の気まで引いているぞ。」
勇人としては澄香をただ助けただけなのに、澄香まで自分に恋愛感情を抱かせるとは思っていなかった。
「まずいな。」
(真理奈に櫻、さらには澄香まで自分に好意を持つなんて・・・・・これじゃ本当に父さんの二の舞だよ。)
これで美沙も気が有ると知ったらノイローゼになってしまうかもしれない。
「だめだ!こんなこと考えていたら本当に眠れなくなっちゃったよ。・・・・・・・・・・ちょっと外を歩いてこよう。」
そう言うとベッドから抜け出し、部屋の外へと出る勇人。
既に時間は午前2時を回っている。廊下の電気は消され、あたりはシーンと静まりかえっている。
「夜の屋敷って結構不気味だな。」
普段は見ることの無い屋敷の様子。人気も消え、真っ暗になった廊下を歩いていく勇人。
歩いていくと、何か恐怖のような、それとも違う幻想的な感じになる。
適当に歩き回っていたが、気付くと部屋から随分と離れた場所にいた。
「そろそろ戻った方がいいかな・・・・・・ん?」
勇人は少し先にある扉から明かりが漏れているのに気付いた。
「誰だろう?」
勇人はその明かりが点いている部屋に向かって歩いていく。
この時期、この時間まで起きている人間は三千院家にはいない。
かつて夜更かししていたナギも、結婚後は滅多にそんなことはしない。
扉の前まで来て、勇人はその部屋が何であるかわかった。
「ビリヤード部屋!?」
勇人はそっと部屋の中を覗く。すると、一人の少女がキューを持って立っていた。それを見て、勇人は扉を開けた。
「真理奈!何やってるんだ!?」
そこにいたのは真理奈だった。彼女は驚いて勇人を見る。
「え!勇人君!!あなたこそ何やっているんですか?」
「いや、ちょっと寝付けなくて。散歩でもしようと思って。お前もそうなのか?」
「まあ、そんな所です。眠れないなら勇人君もどうです、一緒にやりませんか?」
真理奈が勇人にすすめる。勇人には特に断る理由は無い。
「じゃあ、僕もやらしてもらおうか。」
勇人は近くにあったキューをとる。
二人は早速ビリヤードを始める。
ちなみに、真理奈は母親譲りでとても上手い。ただし、彼女の場合は電子系のゲームは苦手だが。
一方の勇人も、そんな人たちに囲まれて育っているからそれなりに上手い。第一、真理奈とはまるで兄弟のように育ってきたのだから、それなりに彼女の癖もわかる。
二人はそれぞれ一進一退にゲームを進めていく。
しかし、二人とも何も言わず、時間が進むにつれて何かぎこちない、気まずい空気になっていく。
((何かしゃべらなきゃ。))
二人ともそう考え始めた。そして、先に口を開いたのは。
「あの、勇人君?」
真理奈だった。
「え!な、何?」
「勇人君は女の子に興味ないんですか?」
「え!!」
いきなりそんな質問を受けるとは思ってもいなかった勇人は、沈黙してしまった。
(え!え!真理奈がそんな質問するなんて・・・・・)
そんな事言われてしまうと、目の前の真理奈を意識せずにはいられない。深夜3時。目の前にはピチピチの女の子。しかも、寝巻き姿。勇人の心に動揺が起こらないはずが無い。
一方、言った真理奈の方も少し狼狽していた。
(わ、私一体何言ってるんでしょう?な、なんでそんな質問を!!)
二人の間に、さらに気まずい空気が流れていく。
「ご、ごめんなさい。変な質問をして、じゃあ質問を変えます。・・・・・勇人君には、好きな女子はいないんですか?」
質問を変えたものの、それもまた勇人にとっては困った問題であった。
(え!!さっきよりはいいけど、そんな直球で言われても!!)
勇人はどう答えていいものか、迷う。真理奈が自分を好きなことを知っている。しかし、今自分には好きな人はいないと言ったら、彼女を傷つけるのではないかと。
(正直に言うべきか?・・・・・・・それとも誤魔化すか?・・・・・)
迷う勇人。しかし、ここで優柔不断な態度を取ってはいけないと思った。じゃないと、本当にハヤテの二の舞になりかねない。変に誤魔化して、誤解を受けるようなことはあってはならない。
勇人は腹を決めた。
「正直に答えるけど・・・・・・・その、僕には今・・・・・特定の好きな人はいない。」
|