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DRAGNEEL
作:DEG



第二章


鉱山がぼんやりと太陽の光に照らされ始めた。


ハンター達は、既に鉱山に向かっていた。

アリューもまた、彼等に続こうと酒場で準備をしていた。

レイラはアリューに弁当を持たせると肩を叩いた。

「はい、いってらっしゃい。またあんまり遅くならないようにね。」

「…………。」

アリューは無言でレイラに別れの一瞥をくれると、足早に鉱山の採掘場へ向かった。



既に男達が宝探しに熱中している中、アリューは支給された道具を持って鉱山内部に入っていった。





鉱山は以前にある程度採掘が進んでいたため、内部には割と路が多く作られていた。

とはいえ、その路は鉱石採掘の為に掘り進められたため、基本の順路でしかなかった。


ハンター達は自分勝手にそこら中を掘り進んでおり、下手をすればどこで落盤が起こっても不思議ではない状況だった。





アリューは危険が少ないまだ誰も手を付けていない(無論、以前の発掘者達が掘った後だが)人気のない場所を発掘していた。


しかし鉱石採掘にもあるポイントがあるように、遺物発掘にもよく出る場所と出ない場所があった。


アリューの掘り進めている場所はその出やすいポイントからかなり離れていたため、人がいないのは当然の事だった。








アリューはしばらく掘り進めた後、手を止めて近くの地面に座り込んだ。


アリューはこのポイントを三日も掘り続けていた。
しかし未だに何一つ出てくる気配はなかった。


アリューは土のついた体を払い、赤くなった自分の手を眺めた。



アリューは溜め息をつくと、また無気力感に襲われた。


周りにはランプが所々に吊られた薄暗く、肌寒い土の路以外何もない。


目の前には微かに照らされている無意味に赤くなった手がある。


あと何日掘れば宝が出てくるのか解らない黒い壁がある。





アリューはしばらくすると立ち上がり、また壁にシャベルを挿し始めた。






と―――

カツン、と何かが触れた感触がした。


アリューは一瞬ドキッとした。

いよいよ自分にも運が廻って来たと思うと胸が高まった。


アリューはもう一度場所を確認すると、その回りを掘っていった。



それは割と大きな物だった。
アリューは心臓が脈打っているのを感じながら更に掘り出し、ようやく取り出して地面に置いた。


どうやら箱のような物だったが、かなり風化してから埋まったのかまわりはボロボロになっており、鍵のようなものが付いていたがそれすら機能していなかった。


アリューは箱を開けようとした。
その瞬間、
「グウゥ…」と彼のお腹が鳴った。

夢中で気付かなかったが、いつの間にか昼になっていたようだった。(ここに時計というものはなかったが、アリューの体内時計がそう告げていた。)



アリューは一旦箱を置き、朝レイラに渡された弁当に手を付けた。

これは彼の唯一の楽しみだった。


言うまでもなくその量は少ないものではあったが、アリューにとってはレイラの作った弁当はこの暗い淋しさの増す鉱山内で唯一、自分が独りではない事を感じられる物だった。


中身は小さなパンに焼いた肉を挟んだものが二つ、それに昨晩の料理の残りの野菜が入っていた。

アリューはパンを一つ手に取った。

「……いただきます。」

一人で彼は呟くとパクパクと弁当を食べ始めた。

食べながらアリューは箱を手元にやり、鍵のついた場所を眺めた。


鍵が付いているほど大事な物だったのだろうか?

アリューは箱の中身を想像しながら、ゆっくりと壊れた鍵をとろうとした。

鍵は外れ、地面に落ちた。

アリューは箱の蓋に手を掛けて、緊張しながら中身を覗いた。









中にはなにやら本のような物が入っている。

蓋を完全に開けてみると、大きな本が一冊入っている以外は何も見当たらなかった。

それをしばらく眺めるとアリューはそろそろと本を開いた。



が、アリューの予想通り中に書いてあるのは全く見たことのない古い文字ばかりだった。

さらにパラパラとめくっていくと、何か描かれているページがあった。



掠れていてよく見えないが、牙の生えた動物が火を吹いているような絵が描かれている。
その動物のものか解らないが、翼らしきものも一緒に描いてあった。





アリューは特に興味が湧かなかったのか、一つ目のパンを食べ終わると同時に本を閉じた。



すると、本を閉じた拍子に箱の中で何かがカタッと動いた。



アリューはもう一度箱の中を調べた。



隅の方に何かが落ちている。

「……指輪……か?」

手に取ると、すっぽりと指に入りそうな古ぼけた金属の指輪だった。

まだ新しく見える程に状態が良く、光沢もある。



これはかなり金になる、と感じたアリューは少しにやけてきた。


そして残りの弁当を素早く貪ると指輪を箱に戻し、道具を片付けて鉱山の外へ箱を持ち出した。












鉱山で出土した遺物は、一度管理人ゲイルに見せなければならない為、アリューは直ぐさまゲイルのいる発掘本部に出向いた。


ベースキャンプのテントからは宝を持った男達が出入りしている。

しばらく待った後、テントからル・グェン=ゲイルが姿を現した。


「やぁ、次は君だ入りたまえ。」


アリューはゲイルの姿をみたことがなかった。
今まで一度も会う必要がなかったからである。


ゲイルは学者のような落ち着いた雰囲気を醸し出しており、アリューはそういった人物に出会うのは初めてだった。



テントに入るとゲイルは椅子にフワリと座り、髪のない頭をかいた。

アリューはすぐにどうすればいいかわからなかった。
するとゲイルが催促した。

「どうした?何か見つけたのではないのかね?」

「あ…あぁ……」

アリューはそそくさとゲイルの前の机に箱を置いた。

「ほぅ、かなり大きいな…中には何が入っているのか…」

ゲイルは箱の蓋を開け、本を眺めた。

「……これは……」

「中には…何かよく解らない文字が書いてあっただけだぜ。」

ゲイルは頷くと箱から本を取り出し、まじまじと読み始めた。

「…読めんの?」

しかしアリューの質問を無視し、ゲイルはさらにページをめくっていった。
アリューは黙ってその様子を見ていた。






と―――不意にゲイルの表情が一変した。

突然狂気すら感じられる笑みを浮かべ、本を閉じるとアリューに向き直った。


「よく見つけてきてくれたな!これは……そう、とても…素晴らしい物だ。ああ…そうとも…」

アリューはわけがわからず黙っていた。

ゲイルはなお不適に笑い、気付いたように喋り出した。

「ああ代わりの金を渡さなければな。好きな金額を言いたまえ。」

しかしアリューは突然の成り行きに困っていた。

「えっ…と……」

「ん?なんだ言いにくいのかね?では…」

そう言うとゲイルはおもむろに近くにあった鞄を手に取った。

「さぁこれに一億の財産が入っている。これでは不満かね?」

いきなり法外な数字を聞いたアリューはどう答えていいやら解らず、もごもごと言った。

「いや…別に…」

ゲイルは機嫌良く
「では」と言うとアリューの手に鞄を押し付け、相変わらずニヤニヤしながら本を抱えた。

アリューは残った箱に気付いて席を立とうとしたゲイルに尋ねた。

「あの…この箱の…」

「ああ構わん構わん、後は好きにするが良い。」

ゲイルは本以外には全く興味を示さずにさっさとテントの奥に引っ込んでしまった。


アリューは唖然としていたが、箱の中の指輪だけ取り出すとゲイルに押し付けられた鞄を持ってテントを出た。






とにかくこれでやっと楽になる。



あんな本に異様に魅入っていたゲイルの様子は腑に落ちなかったが、アリューはとりあえず宝を見つけた事に満足していた。


アリューは脚を速くして酒場に戻り、いつものようにカウンターの席にドカッと座った。


しばらくして、レイラがアリューの存在に気付いてカウンターへとんできた。

「随分早いじゃない!何かあったの!?」

心配そうな顔をしているレイラを見てアリューはニヤニヤした。

「…?何よ、なんで笑ってるのよ。」

しかしアリューはまだ笑いながら飲み物を催促した。

レイラは不思議そうな顔をしながら酒を出し、アリューはそれを一飲みすると満足そうな顔になった。

レイラがハッとしてアリューに顔を近づけた。

「…なんか見つけたの?」

アリューはゆっくり頷き、少し寝てくる、と言って鞄を持つとゆったりと二階へ上がっていった。









この時彼が見つけたものが、後に彼にどんな運命をもたらすか、アリューには知る由もなかった。





日は沈み、外は暗い夜になろうとしていた。














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