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愛の花、その香り―  作者: 深崎 香菜
第一部 高校生
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04 ~気持ち side Aika~

 予想外の展開に、驚きを隠せないでいた。なんとか冷静を保ち、いつものように返してみるけれど、声が少し震えしまう。


 あの日以来、愛花はあたしと距離を置いた。寝るときはいつも一緒だったのに別々で寝ようと言い出した。

 引きとめようと、いつものように強引な手に出たけれどその日の愛花の反応はいつもと違って見え、その分切なくなり手を離してしまった。


 話はするけれど、壁が出来てしまったあたしたち。やはり大学までついていくというのはやりすぎたのだろうか。

 いや、やりすぎなのだろう。けれどあたしは愛花と離れるなんて考えたこともなかったから、半日と言えど離れるのはいやだった。

 あたしたちは双子。同じ学校で、同じ学年でも家族や親戚が同じクラスになることはほとんどない。くじ引きでクラスが決まると聞くが、その辺は考慮されているようだ。

 あたしのような人間は、きっと愛花が同じクラスなら他に友達を作ろうとしないだろう。幼い頃から一緒だったのだから自然とグループが出来てしまう。

 それを防止するためなのか、そうなっている……と聞いたことがある。

 でも、クラスが離れていても同じ建物の中にいる。放課後迎えに行けば愛花は一緒に居てくれるし、休み時間に会いに行けば相手をしてくれる。

 今では慣れたものだけど、あの相沢真美という女をどれだけ憎んだことか。休み時間になれば愛花を連れ出す。あたしに会わせてくれない。

 なんとかして二人を引き離そうとしたけれどそれはもう手遅れで、あたしは仕方なく相沢真美と愛花の友情関係を認めた。

 このことに関して、相沢真美は気づいたのかあたしに直接話を持ちかけられたことがある。「あなた、異常よ?」と。



 それから、休み時間はできるだけ愛花に会いに行くのを我慢した。相沢真美とあたしがもつ愛花を「好き」な気持ちは違うものだ。

 相沢真美は「LIKE」であたしは「LOVE」なのだから。

 その違いを意識すれば……とするとあたしは平然を保つことが出来た。愛花もあたしが嫌な顔をしなくなったのを境に、相沢真美との話を聞かせるようになった。

 愛花が笑ってくれるのなら、別に友人関係に嫉妬する必要は無いんだ。こうしてあたしの腕の中に戻ってきてくれるのなら。


 けれど、最近愛花が話す折原という女には嫌な予感しかしない。

 愛花を見る目、愛花と話すときの表情。全てがあたしと被って見える。きっとアイツは愛花に恋をしているに違いない。

 そう感じた所為か、気づけば折原恵美に目を向けていた。

 でも、相手の気持ちだってハッキリわからない。勘違いかもしれない。

 それに、愛花自身は友達だと思っているのだから、どうすることもできない。

 そう思い、嫉妬心を押さえつけていたときの愛花の言葉にムっときたあたしは、少し冷たい態度を取ってみた。



 その後の展開にあたしは驚き、頭の中が爆発しそうだ。

 愛花があたしを追いかけ、そして「好き」と言った。どこにもいなかいでと、泣いた。

 これは、「LOVE」の好きと受け取ってもいいのだろうか? この状況で「LIKE」で言われても本当に困るし、拍子抜けだ。

 だからあたしは敢えて聞いてみる。愛花にもわかるように。


「……今日、一緒に、寝る?」


 その言葉の意味を理解したのか、愛花は一瞬言葉を詰まらせる。

 愛花の返事次第であたしの想いを封印してようと、そこまで考えたとき……

 背中越しに愛花が頷くのを、感じた。

 あたしたちは自然と手を繋ぎ、そのまま何も言わずに歩き出す。手と手の暖かさが心を落ち着けてくれた。




 家に着き、自室に入ったかと思うと愛花は目も合わさずに部屋から飛び出していった。

 後を追おうか迷ったけれど、あたし自身イマイチ状況がわからないままでいる。「

 いつも冷静を装ってはいるけれど、時々訪れる混乱。混乱すると、あたしはいつもおかしくなる。自分でも止める事が出来ないくらいにだ。

 なのに、今日はそうはならない。ただただ戸惑いだけが残るだけだ。

 それからしばらくして母から夕飯だと呼ばれた。リビングに下りてみると愛花は既にいつものあたしの隣の席に座っている。

 何も言わずに隣に座り、並べられたお皿にあたしたちの好物が並んでいるのを見て笑いかけるが目を逸らされてしまった。


 その態度に腹が立ち、愛花がソースに手を伸ばしている隙に皿の上のチキンカツを一切れ盗る。

 そのまま何も言わず口に放り込み、味噌汁を飲んだ。

 今までそんなことしたことないあたしの行動に両親は目を丸くしていたがそんなの気にしない。

 愛花はソースをかけようと皿を見て首を傾げるが気づいていないようだ。

「マナ。美味しいね」

「え、あ……うん」

 素っ気無い返事に寂しさを感じる。

 なに……? さっきのあのデレ~ってしたのはナシだっていうの?

 そう考えるほど愛花の態度はおかしかった。


 お風呂に入り、明日の用意を終わらせると愛花の横顔を盗み見る。何度も教書を出し入れして何か慌てているようにも感じられた。

「用意終わった?」

「あ、の……ま、まだなのっ」

「ふぅん?」

 その様子じゃ用意はとっくに終わっているのだろう。あたしはそんな愛花に背を向けてしまう事にする。

「あたし先に寝るから」

「え……!? う、うん」

 緊張したように返事する。今日は一緒に寝るって言ってたのに。

 ムっとしながら愛花を無視して部屋の電気を消す。それはないだろうと愛花が驚き振り返るまでに後からそっと抱きついた。

「え、あ、アイちゃん……」

「ねえ。どうしてそんな態度とるの? すっごく悲しいんだけど」

「あ、あの、これは……」

「さっき言ったこと、後悔してるんだ? それであたしが先に寝ちゃえば問題ないって?」

「ち、ちがう、違うの」

「違わなくないわよ。じゃあどうして目を逸らしちゃうの? どうして同じ教科書出したりしまったりしているの?さっきからのマナの行動、おかしいんだもん」

 愛花は目をぎゅっと閉じ、泣きそうな顔をする。そんな顔をしたって許すつもりはない。だって、愛花が悪いんだから。

「ねえ、マナ?」

 聞いても答えない。苛立ちを感じ、無理やり唇を奪ってやった。

 飢えを感じるほど、愛花の唇をついばむ。閉じる唇をこじ開け、あたしの唾液を流し込む。

 愛花はそれに素直に応じてくれている。じゃあいったいなんだというのか。

 そっと、服の下に手を差し入れ柔らかい胸に触れる。寝る前だからブラはしていないようだからそのまま直接。


「~~っ」

 冷えた手に反応して、ビクンと身体を跳ねさせる。何か言おうとしているのか、何度か唇を離そうとするがあたしはそれを阻止した。

 漏れる声や吐息。それをすぐに消してしまうあたし。そんなことが十分も続けば、お互い息が詰まりようやく唇を離した。

 離れた唇は透明な糸を引き、あたしを興奮させる。愛花はというとぼーっとしてそのままペタリと崩れこんだ。


「嫌じゃ、ない、の……」

 言葉に詰まりながらも、愛花がつぶやく。あたしはそれに答えず耳だけを傾けた。

「アイちゃん、にね、好きって言ったの、後悔してないよ。ただ、恥ずかしくて……どう接すればいいのかとか、わかんなくって。今までは、その……アイちゃんに強引に……って感じだったのに、今回は、違うから。合意の上って、やつじゃない? それで、その……」

 目を泳がせながらぽつり、ぽつりと話す愛花。何度か目を合わせようとこちらを見るものの、またすぐに逸らしてしまう。

 イケナイコトをしてしまった子供のようで、それがまた可愛らしい。ま、実際あたしたちの関係が“イケナイコト”なんだけれど。

「じゃあ、マナ。マナの言った、好きっていうのは、あたしと同じって事でいいの? あたしの勘違い? 教えてくれないと、不安になるよ」

 これが自分の声なのか? と思うくらいの切なげな声が静まり返った室内に少しだけ響く。

 声の調整をしないといけないのはわかっているのだけど、自分が思っているよりも焦っているんだろう。

 その所為か、声は震えるし、不安気で……。こんなのじゃいつものあたしじゃない。

「あの、そ、の……え、っと……」

 この反応を見るからに、あたしと同じ気持ちでいてくれると思える。だけどこの子はどこまで焦らすのだろうか。むしろ、その自覚はあるのだろうか。

 いまだ目を泳がせたまま、ハッキリしない妹に小さな苛立ちを感じながら返事を待つ。

 けれど一向に「えっと、その……」の続きを言おうとしない。あたしが小さく溜息をつくと、慌てたように顔をあげ泣きそうな顔をする。……煽られてるのかな?

「その続きは言うと後悔するから言わないの? それともただ単に言いにくい、だけ?」

「あ、ぅ……後者……」

「なら、いいわ。言葉なんてもう、いらない」

「え?」


「キス、して。愛花から。」


 あたしからの要求に妹はただ、目を見開くだけだった。


完全リンクってわけじゃないですが、

前回の話し、次回の話は微妙にかぶってます。

それはまあ、愛花視点と愛香視点と考えてください、はい。

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