第26話:結論のない迷宮という名の独り言
美成とのメールの後
俺は机に座って腕を組み、美成のアドバイスについて神妙に考えていた。
といっても格好だけだ。脳みそでは
勉強するな。美成怒ってないかな。勉強するな。美成怒ってないかな。の繰り返しだ。
俺は癖なのかシャーペンを親指、人差し指、中指で支えている。授業中もこうしていることが多い。問題を考えるときはこれがないと落ち着かない。
美成とのメールからこれまで、それを走らせてない。やる気がないではない。
俺よりもずっと頭の良い奴から国語の勉強をするなと言われ、なんかこう、勉強というものはやればやるだけ出来るようになる。そして良い点数を取れば良い。と思っていた考えが、違っていたような気がするのだ。
俺はある時、ループから抜け出して思う。
根本から考えてみよう。初めの部分を考えてみよう。
自問自答する。
なぜ俺は今まで勉強してきたのか?
どうしてちっさいころから
小学校に行き
中学
高校
まぁ大学、と出なくてはならないのか。
義務だからじゃね。それが当たり前だから。
……こんな受動的なものじゃなくて、もっと頭使って考えろ。
俺は自分を一蹴する。
そうだな……法で罰せられるからか?
確かに、親は子供を学校に行かせないと自分が捕まる。それは親の保身でもあり自己防衛。
でも親は自分の子供に最低限のルールを知ってほしいとも思っている。
それを他の場所に委託してるのか?時間がなかったり、能力がなくて?
まず、学校がなかったら、それすらもできないな。
ふん。それにもし親が全部自分で教えられて且つ学校がないなら、先生はいらない。給料もいらない。そうなると先生だった人たちは食えなくて死ぬかどうにかして貧しく生きる。
しかし、そうなると、生まれるはずだった経済活動つまり資本の流れが生まれない。
例を挙げると、先生だった人、ないし先生になるはずだった人、はお金がなくて車を持てない。そうすると車屋の車が売れなくて車屋が困る。本来売れるはずだった車が売れないからな。今度はそのせいで部品屋が困る。車の需要(欲しいよぉの気持ち)が減ったから、車をあまり作らなくなるからだ。車をあまり作らなくなると税金が減る。今度は国が困る。
あくまで仮定の話で、世界は折り重なって出来ているから、一概にはこうも言えないけどな。
また、ちぃぃさい基準で見たときの場合だ。
俺が好きな感じで言うと、微視的な基準。
ふうんと声に出す。俺はふうんと思う。
でも、最後は国にまで広がっていたけど……
わかりやすい形でやってるんだから、無視しろ。
俺は俺に強く言う。確かにわかりやすいと言えばそうだ。
続けるぞ。
と俺は俺に言う。お前が俺に言う?俺がお前に言う?
どうでもいいだろべつに。
そうだな。
何も車屋だけが困るわけじゃない。
給食は食べなくて良いから、給食費も納入されない。
となると給食のおばちゃんは必要なくなって、休職するか求職する。
すると今度はその人達が買うはずだった食べ物が売れない。
そのとき、なんと、農家も同時に困る。作物が売れないからだ。
農家が困ると、次は作物を運ぶ運送業者や農林水産省の偉い連中が困る。
そうか。何だ。学校に行かないと色々困るからなのか。そして俺も困らないために行くのか。
……そんな甘い考えと結論で良いのか?
俺は俺をジト目であきれながら見る。
まぁいいんじゃねえの?
ふん。学校がなくなると、大学で出会った俺の両親も出会わなくなるんだぞ。
これはつまり俺が生まれないということだ。
……それがどうかしたか?
俺は自分の命をいささか軽視しているが、それは美成にも出会わないということだぞ。
……それは困るな。というより、そんなの嫌だ。絶対に嫌だ。
俺はそんなこと認めねーよ。
認めないと言っても、そういうことになるのだから、仕方がないだろう。
俺はつくづく甘いな。脳みそをもっと使え。
ちゃんと考えてるだろ。
俺が今こうして俺と話しているのはどうしてだ?
うーん。大体自分と話す奴がいるか。
俺は俺と話してるだけだ。
言ってしまえば独り言のようなものだ。気にするなよ。
俺が好きな学術的な言い方をしてみろ。
うるせえな。そっちのほうがかっこいいだろーが。
さっさとしろ。
へいへい。……あーと、なんだ。俺がなぜ自分と、そして他人と意思の疎通を図れるのか。
そうだ。
媒体としての言語を持っているから。そう。日本語という道具を持っているからかな。
俺はその媒体とやらをどこで形成させ、どのようにして手に入れた?
学校でひらがなを習って漢字を習って……学校がないと俺達はしゃべれないのか?
そうはいってない。勝手に作り出したかも知れん。
だが言葉がないと美成としゃべることも出来ない。
でももし開闢から人間に言語を話す習慣がなければ、俺達はそれに染まっていただろう。
なぁに、人間が全員無口になるだけだ。そして得体の知れない飯、まぁ便宜的に呼ぶがな。いいか?このように何かを何かに例えたり出来ないのが言葉のない世界だぞ?
を食って。
……うん?違うか?もしょもしょくちゃくちゃして
これも違うか?ごっくんして咀嚼して
あるいは何かしらの表現できない音で?
もう俺の言いたいことがわかるよな。
言葉がないとそこに何があるか、何をしているのかもわからないのか?
指さしてううああ言ってりゃわかるだろうよ。
じゃあ。そうなったとき、セックスはどうする?
は?そいつが女かどうかも知らないんだぞ?
抱き合ってりゃ勃起するだろ。そしたらけつの穴にでも入れるさ。
子孫を残せないだろうが。
ったく。俺にわかるわけないだろう。じゃあ、適当に、この辺きもちいいのおお、だからあなたのでっかい何かでぐりぐりしてーってやってる間に子供が出来たんだよ。
常識知らずは他にも子供を作るぜ?
どういうことだ?
あっちでやって子供をつくって、今度はこっちでってなるだろーが。
そうなるとどうなる?
そうだな。性病が蔓延して人間が死滅するか、血が濃い奴が生まれるな。
やばいんじゃねえか?
俺はなぜやばいと思うんだ?
学校で教わったからだ。いや違うな。学校は俺が予めなぜか知っていたことに付随しているだけだ。何で俺は勝手に妹や姉ちゃん(いるとすれば)とやってはいけないって思い始めたんだ?
誰もやってないからだろ?周りの奴が。
始めにしなくなったのはどうしてだ?
危険だから。タブー。宗教的な問題。
原始にそんなもんがあるか。
そうだな、結果としてつまり実際にやってみて、ダメだと判断したからだ。
俺も知ってるだろ。姉ちゃんとやった子供がどうなるか。
言うなよ。差別だぞ。ちゃんとした人間だ。
それがステレオタイプという偏見だったらどうする。
俺にはやらない自信がある!
わかったか。これ以上無駄な思考をさせるな。
学校とは常識を製造するためのところだ。
なんだか後味が悪いな。
そうだろうな。だがこれではっきりしたじゃないか。
学校は常識を製造し体に道徳として焼き付けるところだ。
俺が社会で生きていくためには集団生活を知り、順応しなくてはいけないから。
みんなが好き勝手なことをしていたら、世の中大変になる。
レイプ略奪窃盗殺人麻薬。
俺がやられたりしたらたまんないことが普通におこる。
吐き気がした。緑の液体を沢山飲まされた気分で胸に触れる。こする。
真夜中。俺は寝ていたらしい。あれは夢か?
電話がなった。いつしたのかバイブになっていた。
着信「バカ衣子」
俺はかなり迷って出た。 |