メール上の彼女(24/31)縦書き表示RDF


お待たせしました。24話です。
どうぞー
メール上の彼女
作:荒木ヒロ



第24話:ストップやり過ぎ


初秋。何もない田舎にもアンニュイな秋が近づいている。俺はそれをしっかりと肌に感じていた。空気が冷たくなっている。それを感じるたび、俺は下校途中に空を見上げた。そのときだけは受験を忘れた。自分が自分であることも忘れた。そして俺は風となり、寂しげな空と語り合うように思った。
空染める赤秋さん。君はあまりにも無慈悲に生まれ、唐突に死んでいく。それは私たちにとっては永遠か、刹那か。ところで君は去年の秋さんかい?それとも今年の夏さんだったのかな?俺は秋からの応答がないことを確認して、俺に戻る。そして目を細める。季節が生まれ死んでいくように、俺達も……どこかへ帰るのだろうか。そして俺は泣く。涙を拭い鼻をすする。

道端でこんなことができるのは、俺が田舎に住んでいるからだろう。人通りが極端に少ないから、誰かに見られることもない。

四季の変遷は都会よりも田舎の方が感じやすい。中でも、夏から秋に変わるときが一番わかりやすい。と言うより、俺は季節の中でそのときが一番好きだ。物憂げで、俺に何かを考えさせる。
この町の秋は突然やってくる。空気がザラザラになる感じが、鼻の奥にわかる。それは道のアスファルトの端から、橋の欄干から、山から川に、あるいは川から山に、草木を撫で絡み合い、俺を包み込みながら、凹んだ町を駆け抜ける。
風が吹いた。冷たい。俺はそれを手で転がした。風はかさかさと指から抜けていった。

そして
俺はまだ悩んでいた。今や勉強時間の半分は国語につぎ込んでいた。それでも点数は一向に良くならない。自分の力では最早どうにもならないのかも、とまで思うようになった。
治らないと言えば病気に近い。
『国語の点数(現代文)だけがなぜか取れない病』
……冗談を言っている暇はない。センター試験は刻一刻と近づいている。あと4ヵ月半。
何か解決のヒントはないかと思い、俺は予備校のサイトを見た。ホームにはセンター時計を掲示していた。俺はデジタルのカウントダウンを見つめる。目的を忘れ、パソコンを消す。現代文を解かなくてはと思う。

その夜
俺は俺が今抱えている問題を美成に打ち明けようと決心した。美成なら進学校でそのノウハウを学んでいるだろうから、解決策がわかるかもしれない。それに、一ヶ月もの間一人で悩み考え続けても、答えが出なかったのだ。俺は限界を感じていた。この不安、苛立ちを美成に取っ払ってもらおう。きっと彼女はいとも簡単に解決してくれるはずだ。俺はそういう期待を込めてメールを送る。

無題:よう。今いいか?
美成の返信はすぐにくる。これまで遅れたことがない。
Re::いいよ?どしたのー?何かあった?だって君から送ってくるなんて珍しいじゃん。いつもは私が送るしさ。
俺はベッドにうつぶせて続ける。

Re:Re::ああ、今日は用事があったんだよ。
Re:Re:Re::ふーんなに?用事って
俺はRe:共を消す。美成はこの時間だと風呂に入った後で、ベッドに寝っ転がっているはずだ。俺は美成の濡れた髪やきれいな顔を想像する。そしてその湿った細い体を腕に抱きたいと思う。
:実は、俺今国語の点数がうまく取れないんだよ。と言うより取れなくなった。前はがんがん取れてたんだけど、何で間違えるのかわからないし、選択肢が同じに見えるし、とにかくもうやばいんだ。
美成も俺に合わせてRe:を消す。
:ふーん。取れなくなったのは国語だけなの?
何となく、文字に圧迫感がある。ふと俺は美成が本気になるとどうなるんだろう?と思う。全てのことに長ける者が本気になると、何かすごいことになりそうだ。

:そうだよ。他の教科はむしろ良くなってるくらいだ。

:がんばってるんだね。偉い偉い。うん、それじゃあちょっと考えてみる。国語っていっても四つ分野があるけど、それのどれ?まさか全部?あと、取れなくなってどのくらいになる?

:ああ、わりいわりい。現代文だよ。評論と小説。今は二つ合わせて40点くらいしか取れない。だから古典と合わせると120点とか30点とかになるな。もう、マジ最悪だよ。今まで取れてた教科が取れなくなると、かなり落ち込む。特に現代文は、言ってしまえば俺のものだったからね。
少し間がある。美成が考えてくれているのだと思う。

:もし私が君だったとしても、かなり悔しいと思うよ?それに、私には君に会わなくても、君がかなり落ち込んでるってわかる。だって私のさっきの、取れなくなってどれくらいになるのっていう質問に答えてくれてないもん。そういえば君、最近ちょっと変だったよね。もしかしてこのせいだったの?
見抜かれていた。さすがの洞察力。俺は救難信号を美成に送っていたのか。それも無意識にだ。

:そうか。知ってたのか。国語は取れなくなって一ヶ月くらいだ。
また少し時間が空く。俺はドキドキしながら待つ。

:センターまで、確か後四ヶ月とちょっとじゃなかったっけ?友達が言ってたような気がする。二年生からそんなに気にしてどうすんの?って私は思うけど。
:そうだよ。一月だからな。
:うん。じゃあ、ちょっと国語やめてみようか。やめるっていうことは、何もしないってことだよ?
:え?
受験生に勉強をするなとおっしゃるの?


美成が夢に出てきました。もう末期です。。。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう