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第21話ですよおお。
メール上の彼女
作:荒木ヒロ



第21話:孤独と模試


俺は起きて携帯を見た。時間は12時。俺は数学の講習をすっぽかしたことに気づく。まあしょうがないかと思う。美成がいない。俺の携帯に美成は一通のメールを送っていた。
「朝ご飯?昼ご飯?を作っておいたよ。レンジで温めてから食べてね?それと、ぐっすり寝てたから起こさないで帰るから。実は今日、あっちの家に行くんだ。また一人暮らしなの。それじゃ、体に気をつけながら、勉強がんばれ。寂しくなったらメールしてね。多分私からすると思うけど笑」
美成は進学校に近い下宿に戻る。

俺は返信をうつ。けれど全て消す。なんだかタイミングが悪いし、早く支度をしないと、昼からの英語に間に合わない。俺は夜にしようと思う。
食卓にはオムライスがあった。俺はそれを美成の指示通りに温めてから、ケチャップをかけて食べる。
黄色い山をスプーンで切るように食べていく。薄い膜の下にチキンライスが現れる。
家は静かだ。両親はまだ帰ってない。
美成が座っていた椅子に、美成の姿を乗せる。そして、遠く離れていく美成のことを考える。
俺はふと思う。
昨日、美成は俺に自分が寂しい思いをしていると、伝えたかったんじゃないか。美成が遠くの進学校に通っているのは、もちろん大学に入るためだ。しかし、それは本当に美成の意志だったのだろうか。美成はそれまでの友達と離れ、家族と故郷からも離れた。そして自分で言うのも何だが、今、愛する人からも離れようとしている。それは俺が思っている以上に孤独なことなんじゃないか。だから大学に入る意味が見出せなくなっていた。
それを、俺は頭ごなしに説教してしまった。美成の気持ちも考えずに。
俺は大学に入れれば、何を捨てても良いと思っていた。しかし、それはまだ俺が何も捨てていないから、言えるのであった。無理に何かを捨てなければ得られないものもある、ということを俺は知った。

「美成……」
愛する名前を声に出してみる。俺はオムライスを食べ終わった。美成の残した影が、俺の家から薄れて消えた。


誰が美成を孤独にするのだろう。そもそも何をもってして孤独なんだろう。一人でいることが孤独なのか。それとも大勢でいることが孤独なのか。ああ美成に会いたい。そんなことばかり考えながら、夏休みは過ぎていった。毎日朝起きてご飯を食べて、学校に行って勉強して、昼に弁当を食べて、家に帰ってきてまた勉強してご飯を食べて、風呂に入ってさっさと寝る。単語帳を開くときもあった。その繰り返しだ。
美成とは毎日メールをした。せめて心だけは一緒にいたいと思った。美成の孤独を和らげたいと思った。そして衣子ともたまにメールをした。でも俺の心に衣子はもういなかった。すでに俺から衣子に送ることはなかった。
繰り返していた。そして夏休みは開け、学校が始まった。

「今度の模試、お前受けんだろ?」
昼休み、俺は進路指導室で俺が受ける大学の配点、ボーダーライン、出題される教科を確認していた。もう俺は何度もそれをしていた。バッチリ暗記している。これが試験問題に出ればいいのに。
『筑波大学・社会国際学類』
教科は、センターが国語、英語、地歴、数学の4教科。英語はリスニングを含めて200点に換算。筆記160:リスニング40点。国語は現代文と古典の200点。地歴は多くある中から一つ。数学は2でも1でも良い。計600点。俺はそのうち83%、とらなくてはならない。2次は国語、英語、数学か地歴から一つ、の3教科。
難関大学だ。だから俺は周りから無理だと言われ続けていたのだ。

進路指導室で話しかけてきたのは、夏から勉強を始めた友達だ。俺と彼は気のおけない仲で、よく競馬の話をした。かけない麻雀もやった。彼はバドミントン部の部長だった。こいつなら頭も良いし、夏からでも間に合うのかもしれない。
「当たり前だ」
「何教科受ける?」
「四教科。俺筑波だもん」俺は平気に言う。
「はぁ、がんばってください……」友達は高崎経済大学志望だった。
「お前に言われなくても、もうやってるよ」
「だろーな」
俺は昼休みという時間をほとんどここで過ごしていた。
教室はうるさすぎる。

「お前、今合計で何割ぐらい取れるの?」友達が俺の隣に座って聞く。友達も俺と同じことをする。
「だいたい全部合わせると、七割くらいかな。英語は最近あがってきたし、国語はやらなくても八割いけるし、数学は1Aでかなりいけるし、政治経済も講習でかなりきてるから」
「ふーん」
友達は最近、ことあるごとに政経の重要単語を口にする。俺はそれを聞くたびにまたか、と思う。

「2次の筆記の対策やってるの?」友達は資料を閉じた。彼も今更見る必要がなかった。
「大丈夫だ。自分の心配でもしてろ」
「むううーん」

そんな感じで、味気ない高校生活は続いた。ただ勉強を繰り返す。恋人は遠くにいる。俺は早く卒業したいと思うようになっていた。


そして模試が始まった。
大丈夫だ。落ち着いてやれば、今の俺なら八割は行く。焦るな。
俺は内緒でガムを食べる。本当は禁止されている。でもそうしないと、力が出ないと思う。こういうのを信じるわけではないが、噛んでないとどうも気分が乗らないのでそうする。

英語。
俺は多くの受験生がやっている形とは逆に長文を後回しにするタイプだ。ずっと自分のやりやすいスタイルを貫いてきた。
政治経済。
頭の中で、友達が言ってたことを復唱した。チャタレー夫人、東大ポポロ、宴のあと、オンブズマン、臨時国会、秘密会、等々。
友達は意外なところで役に立った。
数学。
今日受ける教科の中で一番わかりやすい。数学はひねった考え方をすれば、意外と見えてくる。というコツがある。俺はさくさく解いた。
国語。
……………………あれ?
国語は一番点数が取れる教科だった。でも、俺は今何をしている?

選択肢が全て同じことを言っているように見える。


もしもし?もし模試の点数が悪かったらどうしましょうかね?
……知るか











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