第19話:ダイニング・ウェディング
美成を信じる俺。
それは愛を信じる俺。
俺は美成が好きなだけだ。そう。美成の美しさ、優しさ、可愛さ、頭の良さが、そういうのを上げると尽きないけど、好きなんだ。そして美成という人間を愛したいんだ。
確かにちょっと前まで、俺は愛なんて嘘ッパチだと思っていた。もしかしたら俺が知らないだけで、本当にそうなのかもしれない。けどそれでも別にいいんじゃないかと思う。あきらめるわけじゃない。言葉で説明できない何かが、俺の心の中に生まれたんだ。多分それは暖かい『感情』だと思う。美成を見ていると膨らんでいく『感情』……それを俺は信じたいんだと思う。
昼、美成が作ってくれたチャーハンを二人で食べる。
俺はまずスプーンで少しすくう。目の前にそれを持ってくる。ご飯一粒一粒が光っているのを確かめる。そして美成を見る。美成は俺が食べ始めるのを待っているようだ。優しい微笑みを俺に向けている。
俺はそれを口に入れる。ゆっくり噛む。うまみがじゅわっと口の中に広がる。奥歯がそれをつぶす。飲み込む。それは俺を幸せにする。
「うめぇっ!うまいよ!美成!これすげぇうまい!」
俺はこんなにもうまいチャーハンが作れるものなんだと思う。そして美成が俺に作ってくれたから美味しいのかなと思う。そしてまた嬉しくなる。
「そう?よかった」
美成も口に含む。
「……すごいなぁ。俺のレパートリー、カップ麺くらいだもんな。お湯わかして注ぐだけだよ。それは料理っていわねーけどさ。なぁ?これだけうまく作れるんだから、普段からやってんだよね?他に何作れるの?」俺はこれからもずっと作ってくれたらいいなと密かに思う。一人で食べるカップ麺もいいけど、これの比じゃない。
「ううん。一回誰かが作ってるの見れば、簡単に出来るよ。これ作ってたのはお姉ちゃんだけど、きっとお姉ちゃんよりもうまくできたと思う。私は、あの……別に自慢じゃないけど、作ったこと無いものでも、その作り方っていうか手順がわかれば作れるよ。それに大体のものはこんな感じじゃないのかなって想像して作れるよ」
美成はさくさく食べている。俺はあきらめるように笑う。
「すげ。料理の天才ってやつ?」
「そんなんじゃないよ。うーん……そうだなぁ、私は言ってみれば想像力がたくましいだけ。頭で考えれば大抵のことは出来ちゃうの。料理でも勉強でもスポーツでも。こうこうこうしてできあがりって想像したことを、ただやれば良いんだもん。簡単でしょ?でもさ、それは理解できることじゃないとダメみたいなんだよね。今まで私は人を好きになったことも、男の人とつきあったこともなかったんだ。告白はされるよ?一日に何十人も言ってくるから。でもその人達を前にしても、何も浮かんでこない。その人とつきあってどうこうするってことが想像できないの。だって愛とか理解できなかったんだもん。そもそも愛ってなに?ってね。考えても考えても、答えが出ないの。愛って何?で止まっちゃうんだよ。でも、君は他の男の子とは違ったの」美成は淡々と、だが真剣に言った。俺は次の言葉を待つ。そして俺はスプーンを止める。美成は相変わらずさくさく食べながら話す。
「昨日初めて君に会ったとき、その瞬間に、私、初めて想像できたの。君と私がキスするのを想像できたの。君を好きでいることが愛なんじゃないかって思えたの。ホント、私嬉しかった。運命の人なんじゃないかって思った。すごくドキドキしたんだよ?」
美成はにっこり笑う。そしてもう一口。
「そうだったのか。じゃあもしよければ、ずっと想像し続けてくれないかな?俺とのことをさ。俺と色々やってるのを想像して、それを行動に移してよ。こんなこと言うのはちょっと恥ずかしいけど、俺は美成の作ったご飯を、美成と一緒に食べながら生きていきたいと思うんだよな。それだって、一度経験したから簡単だろ?だから……これからもさ……」
俺は思ったままに言う。なんだかプロポーズっぽいなと思う。そして美成の目を見る。美成の目は潤む。
「えへ。いいよぉ?君が望むなら、私はずっとずっと君にご飯を作り続けてあげる。これからも一緒にご飯食べよう?そしてずっと……あはは、なんだかプロポーズみたいだって考えてない?」
「考えてたよ」
俺は笑う。頭をかく。
「今のがプロポーズの言葉なら、私たちはもう夫婦?だよね?」
美成は照れ照れだ。俺もそれを見て、恥ずかしくなる。
「そうだな……誓いますって感じかな」俺はスプーンを置いて、右手を挙げて言う。
「私も、ちかいます。これからもずっと想像します。そして君とご飯を食べ続けます。もちろん死ぬまで」
美成は俺を真似て言う。でも真剣な表情だ。
誓うよ……俺はそう心の中で言う。
美成は俺にキスをする。
誓いのキスを。 |