第17話:キス
前回まで
美成は看病するどころか俺の首を絞めた。そしてそのままキュッと殺った。と言っても俺は死んでなかった。ちゃんとこの世に起きた。睡眠から目覚めるように。
「やっと起きたか」
美成は朗らかに笑って言った。
俺はベッドに寝ている。
美成は俺の顔をのぞき込むようにまじまじと見ている。
かわいい顔が肉迫し、俺は少し焦る。
だが俺はここぞとばかりに、じっくり美成の顔を見てみる。
美少女という形容は多分この子のためにあるのだと俺は思う。
眉毛は細く整えられていて、綺麗な放物線を描いている。
目は二重まぶたで、黒目がくりくりしてる。
まつげが長い。
頬の線から首筋に駆けてはシャープで無駄がない。
耳は小さいな。
そして鼻も小さくて形がいい。
唇が薄い。薄いけど、ピンク色で、柔らかそうで、美味しそうだ。俺はその唇が俺のに重なったのを思い出して、もう一度したいと思う。俺はしばらくその念を抱きながら、美成の目を見る。少し、少し、あと少し。俺は口をゆっくり近づけていく。半信半疑で。美成の目はトロっと溶ける。俺は美成も口を近づけるので、してもいいのだと確信する。
唇の先が触れる。
それが少し横に滑る。
やがて決まった位置で止まり、俺はその唇を味わう。
そのとき、俺には美成の筋肉の緊張をも感じ取ることができる。
そして俺たちはつながっているのだと思う。それはエッチよりもあるいはリアルで、躍動感がある。セックスにはセックスだけが持つ形容しがたい魔力のような、世界が別にあるのだと思う。美成が俺の口に吐息を吐く。俺は美成の髪を指ですく。指は何の抵抗もなく落ちていく。そのままその手を首に添える。少し体を引き寄せる。美成の緊張が薄れていく。それが肌でわかる。
冷静になれば、ただのキスだけでこんなに感動できるものなのかと俺は思う。そしてそれは美成だからこそ成立するんじゃないかと考える。俺たちはゆっくり離れる。でも顔はまだまだ近い。おそらく二発目(今日三発目)をどちらともなく待っている。俺たちはまだ一つにつながっている。だからきっと、アクションは同時に起こす。
「何考えてたの?」美成がささやくように言う。
「すごくエロいこと。でも全然エロくないんだ」美成がほっぺたをすり寄せて言う。美成の頬は少し温く、冷たい。「きっと私も同じこと考えてた。えへっ、すごく嬉しい!」俺は美成を抱きしめる。しっかり腕を巻きつける。美成は壊れそうなほど細い。俺は美成の肩をなでる。その手を背中脇腹お尻へと滑らせる。俺は確認するようにそれを触る。美成という人間が確かにここにいるとわかる。柔らかいだけじゃない確実さを感じる。
そして口づける。俺は下唇を挟む。俺の上唇に美成の舌があたる。でもそれはしない。俺はディープは後にとっておこうと思う。このまましたら、死んでしまいそうな気すらする。そして、その濡れた舌の触れ合いと感触は想像するだけにしておく。
「なぁ、俺たちって相性抜群なんじゃね?」俺は美成の隣に座る。
「キスだけでイキそうになっちゃった……すごいね。こんなのもちろん初めてだよ。私の初めて、もらってくれてありがとう」
俺は想像する。こんな芸術的なキスではなく、汗をかき、それに吸い付く生々しい行為を想像する。
「ちょっと触ってみる?」
美成はそう言って、俺の右手を優しく誘導する。そこは湿っている。そして小さな命のように脈打っている。俺の手がそのリズムを読み取る。俺は安堵に包まれていく。美成が息を吐く。
「まだいいよ。夜しよう」しばらく触れて、俺はそう言った。お腹も減っていた。
でも美成となら、死ぬまでやっても悪くはないなという気になった。 |