第14話:風邪
前回まで
衣子も俺も、自分の気持ちを整理することができないままでいる。
さらには、俺も美成も、恋愛を理解することができないままでいる。
俺に限って言えば、そもそも恋愛とは何なのか、錯覚ではないのか。という考えがあるからだ。
妹とメルアドを交換した。それが、三角関係の始まり。
昨日と同じように自転車をすっ飛ばして、衣子の家から逃げるように帰った。
家に付いてすぐ、美成からメールが来た。腹減っていたが、真っ先に俺はベッドに転がった。なんだか気分が悪くて、飯を食べる気が失せた。
「送れた?」
「うん」
すぐさま
「お姉ちゃんと遊びに行ったんだって?ズルいよ!今度は私と行って?」
「あぁいいよ」
枕に顔を半分埋めていると、眠たくなってきた。
「もしかして気分悪い?」
「なぜわかる」
吐き気がしてきた。
「なんとなくだよ……でも気分が悪いときにメールするのは私もムカツクから、また今度にする、明日にでもどう?」
どうしようもなく眠い。頭痛がした。誰かの笑い声が聞こえた。
起きると夜だった。
部屋が酷く蒸し暑い。午後から日が差し込むので、俺の部屋は夜が暑い。久しぶりに窓を開ける気分になった。開けるとのろりとした風がのろりと入ってきた。手に付いたほこりを払った。随分掃除していないんだ。
虫網に息を吐きかけると、喉と頭が熱を持っていることに気づいた。体がだるい。風邪を引いたと思った。
ベッドから落ちて床に転がっている携帯を手に取り、画面を見ると、メール作成画面のままだった。妹に返事を送るのを忘れたと思った。そのままそこに返事を打った。
「わりぃ寝てた、しかも風邪引いたみたいだ」
明日の講習に出られるだろうか。夏休みとはいえ、進学希望者は学校に行かなくてはならない。友達はそのことで俺のことをアホだとか言うが、別に文句はない。自分で選んだ道だ。それに、社会に出る前には勉強しておかなくてはならないハズだ。大学にも行きたいと思っている。つまり俺にとってそれは当たり前のことなのである。
2、3分で返事が来た。
「気にしてないからいいょ、風邪大丈夫?」
「まぁね、でも明日は俺の家族がいないし、講習は休むことにするよ」
美成にまず送信した。そして、その旨を講習担当の先生にメールで送った。
送信と美成の返信がほぼ同時だった。
「イエス!そうだ!私が看病してあげるよ!一人じゃご飯も作れないんでしょ?」
「健康に気を使わなければ、色々できるんだがな……」
カップめんはおいしい。
「せめて病気の時くらい、体のこと気にしたら?」
俺の体はただ、魂の入れ物として存在すると考えている。死ぬのも恐ろしくない。俺がどうなろうと俺には関係ない。
しかし何故か、純粋に来て欲しかった。美成の提案が嬉しかった。
「ありがとう」
俺は他人に一番言いたくないセリフを、美成に送った。ほぼ無意識にだ。
そういえば前に、間違い電話になぜか謝ってしまった。向こうが丁寧にすみませんと言ったから、つられたのだろう。
おそらくそれと同じ、条件反射だ。
「私が言い出したんだから、君がお礼するのはおかしいんじゃない?」
と思っていたら、指摘された。
「そうかな?なんとなく嬉しかったから、言っただけだ」
「うん、楽しみにしてて!じゃあ明日、行くときメールするね」
少し気分が楽になった。下に降りて、カップめんを食べた。すぐ歯を磨いて寝た。
安らかな気持ちであったが、衣子にメールを送るのを忘れた。
だんだんに俺が人間性を帯びてきた気がする。とは言え、認めたくなくとも、俺が人間であることは変わらない事実なのだが。それを許容してもいいと思わせる感情は、何だろう。
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