第13話:恋愛観
前回まで
俺は衣子の家に泊まった。衣子はまだ自分の気持ちを把握できていないらしい。
次の日の朝、衣子の妹は突然、俺が好きだと言い始めた。家族いないって言ったくせに。
本当に、俺はこの姉妹に振り回されている。
そりゃもちろん
美少女に好きだと言われるのは悪くない。衣子がこのままはっきりしないのなら、この際妹と付き合うのもよさそうだ。大体、俺だって衣子のことが本当に好きなのかと聞かれれば、自分の気持ちをはっきりと言うことは出来ない。元々愛が思い込みであると思っているからだ。それに友達としての期間が長すぎるとも思う。
ただ衣子だって、俺のことをよく考えてくれている。これからの俺たちの関係をどうするべきか真剣に。それから逃げることは出来ないと思う。
妹は服を着た。姉に問うような目を向けている。こいつの目は奥に信念を持っている。
「衣子、服着てこいよ」まとまった毛先から滴が肩に落ちている。俺も服を着なければならない。それに空気が痛い。
衣子は部屋を足早に出て行った。足跡が水でできた。
「お姉ちゃんに限らず、女は風呂上がりからがまた長いのよ?」
妹、美成は、気の抜けた目を俺に向けた。
「お前も長い?」
「髪はね……」
「それは髪自体が長いのか、髪の手入れが長いのか……」
「質問は風呂上がりの後、時間がどれだけかかるかじゃなかったの?無理に掛けようとしなくていいよ」
「うーん……お前もなかなかやるなぁ」
時間を掛けると、言葉を掛けるか……偶然だろうが、考えてやっているのなら、頭が良い。
「ありがと、でもなるべく名前で呼ぶようにして?そのほうが、より親密な気がする……お姉ちゃんのことだって、君は名前で呼ぶのに」
妹は少し眉を寄せて、不機嫌な顔をした。でも俺のことを名前で呼ぶことはしない。
「あぁわかった、でも美成、美成が姉ちゃんに言ったように、お前には俺のことが好きだっていう確信というか、理由というのがあるってことなんだろうな?言っとくけど、俺は好きって感情、まだ理解してないぞ」
「感覚は、時に理性を凌駕するもの、直感とでも言おうか……初めて、まあ今日だけど、君を見たとき、この人だと思ったの」
美成は含蓄めいた顔をした。
「俺が自分で言っちゃうけど、一目惚れって類のヤツかな?」
俺はジャージをはいた。
「おそらくはね、あぁ……お姉ちゃんのこと言えないなぁ、私も理解できてないみたいだし」
「じゃあこうは考えられないかな?元々俺たちが恋愛を理解することは不可能なんじゃないかな?定義づけられないって言うのかさ」
「うんそうかも」
やはり感情ってのは厄介だ。時に欲と混ざり、時に勘違いに変わる。
「全然話しについて行けないんだけど……」
衣子がすっとベッドに腰掛けた。ジーパンとTシャツ。どこかで見たような感じの。
「お姉ちゃんには無理だよね?」
「あぁおそらくはな」
衣子はムスッとした。聞かれたから、答えただけなのに。
「じゃそろそろ俺は帰るよ、腹減ったし」
「あ、それならアドレス交換しようよ」
と言って美成は衣子を見た。
「私にかまわなくても良いよ」
「あっそう、て言うか別に、気にしてないけどね」
俺は美成に手を引かれたまま、衣子を見ていた。目が合って、衣子はそっぽを向いた。
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