第10話:変態
前回まで
彼女の犬に好かれた俺。
で、俺はどこに寝るんだ?
「手伝わなくていいのか?」
と言っても、俺は何もできない。日常を一人で生き抜く能力が、俺にはないのだ。
彼女は皿をせっせと洗っている。食洗機が隣にあるが、それを使わない。
「いいよ〜、座ってて、もうすぐ終わるから」
「おう」
俺は片笑んでそっと立ち上がり、忍び足で彼女の部屋へと向かった。
あの未知の空間には興味があるのだ。期待や、疑問もある。彼女の事が知りたい。全て知りたい。これから関係を築いていく上で必要になる思考材料を増やしておきたい。
と同時に、これは色々やるべきだと思った。
彼女の部屋は少し冷えていた。きちんと整ったベッドに寝ころんで、ちょっとエッチな想像をした。それから小さなタンスの中にある彼女の下着を手に取り(一発で下着の入った段を当てた)、匂いをかいだ。もちろんパンツのだ。かぶりはしない。
あぁ、俺は変態なのかも。彼女が俺のことを知らなければ、そして目的がこれだけなら、俺は変質者扱いされて法に裁かれる。これから二人がするであろう行為をもしすれば、俺はレイプ犯として彼女に記憶される。そのキズは癒えることがない。
何が言いたいかって?
人間の関係なんてそんなもんだって事だ。
机に向かい彼女の事を考えていると、いつのまにか寝ていた。
「…ねぇ、ちょっと起きてよ」肩を揺さぶられた。
「うぁ」
「もう夜中だよ」
まだ頭がフワフワしている。
「どうして私のパンツ持ってるの?」
「いや…かぶらないだけましだろ?」
「もぉ…」
彼女は俺に口づけた。髪が濡れている。
「お風呂入ってきたよ…」
お風呂と言っても、シャワーのことだ。
最初から彼女はこういうことがしたくて、俺の誘いをOKしたのか。
寒く静かな部屋で俺たちは一線を越えた。
始めから終わりまで、一言で言うと簡単だった。こんなんで新たな人間が作れるのかと思うと、気持ち悪く(体は気持ちよかった)、また、不快になった。
今更なんだ。なにが、どうしたんだ。突然、涙が出た。後悔した。何が不満なんだ。
本当に俺は彼女が好きなのか?
色々な事をすっ飛ばした気がした。俺以上に、彼女が俺を求め、愛していたのかもしれない。
そのギャップが気に入らないのか?彼女は横で寝息を立てている。俺はカーテンを開け、黒い海に浮かぶ満月を睨んだ。
こんなもんかよ。
それから俺は眠ることもなく、何かするわけでもなく、ただ真っ黒な夜を眺めていた。
体はまだ確かに高ぶっている。燃えそうに熱い。
だけど心は…
あまりにも時間が短いんだ。メールでしか彼女との関係を繋ぐことのできなかった俺が、今こうして彼女を見ている。
結局彼女次第だった。
俺は振り回されただけか?
ああ |