ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第1話 平凡の裏返しの世界-3
また時間が過ぎていき、6時間目の終業のチャイムが鳴り、帰りのHRを残しての今日1日が終わった。
「順平!!どう!?見つかった!?」
「ま、まぁ、1人だけな…」
「やるじゃない!!わたしの方も2人捕まえたから2人ともノルマ達成ね!!」
よく2人も見つかったな、とまず思った。…というか、捕まえた…のか?
「HRが終わったら順平もその1人を連れてきてね。わたしも捕まえた2人を呼びに行くからね!!」
だからその言い方はどうかと思うが…そんなことを話しているうちに先生が来て帰りのHRが始まった。
…正直、俺の方は幼馴染に頼みこむ形になった。わけを話し、今日だけでいいから付き合ってくれと。…今度何か奢るという条件付きで。…ふぅ

「みんなよく集まってくれたわ!!」
俺たち五人を残し、誰もいなくなった教室に葵の声が響く。集まったのは、葵、俺、そして俺の幼馴染の社耕一、葵が連れてきたうちの1人大林魅継、そして残った1人、俺の顔馴染みの村沢藤治郎だ。話を聞くに、大林は曖昧な返事をしていたらそのまま葵に丸め込まれ、藤治郎は葵についての噂を聞いていなかったらしく、『可愛い娘だなぁ』と思って話を聞いていたらいつの間にか丸め込まれていた、といった感じの様だ。
「なあ、葵…俺たちは結局何のために集まったんだ?」
そんな俺の質問に他の三人も同じく、といった感じの表情で葵に視線を向けた。葵はというと、また誇らしそうな顔をしてもったいつけて三拍おいてから口を開いた。
「わたしは、まず1つの“会”を作る。まあ平たく言えば、みんなにもその会に入ってもらいたいわけなのよ」
「な、何の会?」
上手い具合に四人全員の声が綺麗にハモった。
葵は、自己紹介の時の様に指、もとい腕をビシィッと頭上に突き伸ばし、一息吸ってから叫んだ。
「その名も!!経済環境問題対策解決委員会。略して“E2PICS”(イーツーピクス)会!!!!」


「・・・」
「いい!?わたしの夢は世界征服、そして、今の世界情勢を正すことなの!!そのためにも、代表的な経済問題や環境問題を筆頭に、身近なところから世界規模の諸問題まで、私たちの手で対策・解決していくの!!」
唖然とする俺たちに向かって、葵は追い討ちをかけるかの様に握り締めた拳を振り回しながらそう叫んだ。…今の言葉、出来れば全校生徒に聞かせてやりたかったな、と心から思う。
「さあ!!わたしの言いたいことは言った。わたしの夢も聞いてもらった。その上でもう一度聞くわね!?一緒に…世界征服を目指さない!?」
その言い方はどうかと思ったが、葵の本当の夢を聞いて俺は素直に感心している。葵は期待に満ちた目で俺たちを順に見てから、突き上げていた指、もとい腕を降ろして腰に当てた。
俺はとりあえず耕一の様子をうかがうことにした。どんな答えを出すんだろうか…というより頭はついていっているだろうか。しかし、耕一の反応は俺の予想を大きく外したものだった。
「すごい夢だよ!!うん、僕も参加させてもらうよ」
…あー、確かに耕一はこの手の話は好きだったな。耕一は乗り気のようだが、他の2人はどうなのだろうか?そう考えて2人のほうに目をやると、残った2人も次々に口を開いた。
「1度やるって言ったことは最後までやらないとな。…俺も参加するよ」
「では、私も、参加させていただきます」
妙に律儀な藤治郎、そして、周りに流されたような気もしなくはないが、大林も参加することになった。
最後に俺が残った。葵が期待に満ち満ちた目で見ている。正直これからのことを考えると、不安もある。だが、それと同じかそれ以上に期待もあった。これから俺は変わる、と、いや、変われるんだと思えていた。
自分では長く思えた、実際には数秒の沈黙。
「俺の返事はとっくに言っただろ。葵、どんなことにだって付き合ってい」
「よぉし!!これで五人、完全にそろった!!これからも頑張っていこー!!!!」
気持ちがいいほどに葵の声が教室に響いた。その声は、これから始まる物語の開始を告げている様だった。
…だけど人の話は最後まで聞けよ。
皆が帰路につき、最後に俺だけが教室に残った。皆が帰った後も、俺は何をするわけでもなくただ窓越しに外を眺めていた。時刻は既に五時半を回っていて、教室の中に夕焼けの赤がいっぱいに差し込んでくる。俺は重い腰を上げ教室を出た。鍵を閉めるために扉に手を掛けたとき、本当に誰もいなくなった教室に、まだ葵の声がこだましていたような気がした。

評価
ポイントを選んで「評価する」ボタンを押してください。

▼この作品の書き方はどうでしたか?(文法・文章評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
▼物語(ストーリー)はどうでしたか?満足しましたか?(ストーリー評価)
1pt 2pt 3pt 4pt 5pt
  ※評価するにはログインしてください。
ついったーで読了宣言!
ついったー
― 感想を書く ―
⇒感想一覧を見る
※感想を書く場合はログインしてください。
▼良い点
▼悪い点
▼一言

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項を必ずお読みください。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。