Part7:夕方、休息のとき
「おっ、やっと戻ってきたか。八坂、さっき話してたかわいい二人組は誰なんだ?」
椿たちと別れ、705号室に戻ってきた孝は、早速卓巳と義仁に質問攻めされていた。
「ああ、あの子たちはオレの彼女と幼なじみだよ。偶然にも同じ日に親睦旅行に来て同じホテルに泊まるみたいだ」
孝がそう話すと、
「そうか。そいつはすごい偶然だな。で、大丈夫だったか?」
卓巳がひとしきり頷いたあと、不意に孝にそうたずねた。
「ん? 大丈夫だったかって、何がだ?」
孝は質問の意味を理解できず、卓巳に聞き返した。
「ほら、八坂が彼女と話してるところに橋本さんが乱入してっただろ? あれで修羅場になってるんじゃないかって少し心配してたんだよ」
卓巳がそう説明すると、
「ああ、修羅場と言えば修羅場かもな。でも、この女の戦いはどう考えても橋本さんに勝ち目はないな」
孝は笑いながらそう言った。と、そのとき孝の携帯電話が鳴った。
「おっ、椿だ。はい、もしもし」
孝が嬉しそうに電話に出ると、
『もしもし、さっきのことを詳しく聞きたいんだけど、いいかな?』
椿はさっき別れ際に見せたトゲトゲしい雰囲気を感じさせない声で孝にそう聞いた。
「ああ、いいよ。まず橋本さんは本人も言ったとおり、大学でのクラスメートだ。だけど、それ以上の関係はないよ。せいぜい今住んでるアパートで隣同士だってことくらいだ」
孝は桜について椿にそう説明した。
『隣同士って言っても別に何もないんだよね?』
椿がさらに念を押すように孝にたずねる。
「ああ、もちろんだ。やましいことは何一つとしてないよ」
孝も自信を持って椿に答える。
『それならいいんだ。たぶん夕食のときにまた食堂で会うと思うから、話せるといいね。それじゃ、またね。大好きだよ、孝くん』
椿はそう話し、
「ああ、またな。オレも大好きだよ、椿」
孝もそう言って電話を切った。
電話を切った孝が卓巳たちのほうを見ると、2人とも部屋のベッドの上で悶えていた。
「どうかしたか、2人とも?」
孝が2人にそう話しかけると、
「あ、甘い……なんだこの甘ったるい会話は……」
「ああ、これぞまさにバカップル……しかも自覚がないからタチが悪い」
卓巳も義仁も孝の電話の内容があまりに甘ったるくて悶えていたらしい。
「そんなにバカップルっぽかったか? そいつはすまなかった」
孝は素直に2人に謝った。
その後は主に騒動を引き起こす原因と離れているおかげで、何事もなく夕方になった。
「そろそろ夕飯の時間だな。食堂行こうぜ」
孝が時計を見ると、夕方6時15分だった。
「そうだな、そろそろ行くか」
卓巳と義仁も寝転がっていたベッドから起き上がり、3人で部屋を出て、食堂に向かうのだった。 |