Part5:親睦旅行、バスの中にて
「うん、快晴。旅行日和だな」
数日後、孝たち都台大学の新入生たちは、お互いを知るため、そして大学のことを知るために毎年企画されている親睦旅行のためにバスで群馬の伊香保温泉に向かっていた。
「そうだねー。最高の天気だねー♪」
孝のつぶやきにすぐ隣から男のものではない声が返ってきた。
「おかしいな……確か隣には卓巳がいたと思ったんだが……いつの間に?」
孝が隣の席を見ると、卓巳がいたはずの席にはいつの間にか桜が座っていて、卓巳は後ろのほうで寝ていた。
「席を代わってもらったんだよ。あたしは八坂くんの隣がよかったからね♪」
桜はおそらく並の男なら十中八九陥落するような特上の笑顔でそう話した。
「ふーん、まあなんでもいいけどね。彼女持ちのオレは他の女の子に揺れることもないし」
孝は桜に「彼女持ち」の部分を強調するように言い、他の場所でもわいわい騒ぎながらバスは走っていった。
しばらくして、孝の携帯が鳴り響いた。どうやらメールらしい。
「ん、椿からか……椿たちも今日から親睦旅行なんだな。行き先は……伊香保? まさかな……」
孝は返信でホテルの名前を聞くと、そこまではわからない、と返ってきた。
「同じ伊香保のどこかに椿たちも来ている。けど同じホテルでもない限り会うことはないよな」
孝がそうつぶやいて外を見ると、いつの間にかバスは高速を下りて市街地を走っていた。
とまあそうこうしてるうちにバスはホテルの駐車場に到着した。各自荷物を持ってホテルに入ろうとしたとき、団体客のリストが孝の目に入った。
孝たち都台大学は当然として、その隣にもうひとつ、「光稜大学ご一行さま」という名前もあった。そこに後ろから、
「このツインタワーホテルにはうちの他に長野から来てる別の大学も泊まってるからな。大学生として、自覚を持って行動するように」
と、引率の教授が声をかけた。
(長野の大学……しかもこの光稜大学ってオレが落っこちたところだよな。と、いうことは……?)
孝があれこれ考えを巡らせていると、
「八坂くん、どうしたの?」
桜が団体客のリストとにらめっこしている孝のところに来てたずねる。
「ああ、いや、なんでもない。ほらほら、女子はあっちだろ?」
孝がそう言って桜をツインタワーの左側に続く通路へ追いやり、自らもツインタワーの右側へ向かう。そこに再び椿からメールが入る。
「やっぱり、そうか……椿たちもこのツインタワーホテルに泊まるのか」
孝は自らの考えが間違ってなかったことを知り、彼女に会えるかもしれないうれしさがある反面、熱烈的なアプローチをかけてくる桜と椿たちが出会ったらどうなるのかと不安にもなるのだった。 |