Part2:入学式と熱烈的な勧誘合戦
「ここが今日からオレの暮らす家か……」
東京都内のとある街にある一軒のアパートの前で孝は引っ越しの荷物をトラックから降ろしながらつぶやいた。
「でも、いくら23区外とはいえ都会で家賃3万円は安いよなぁ……ま、見た目もきれいだしいいか」
孝はそうつぶやきながら業者を手伝って荷物を部屋に運んでいった。
「ん? 新着メールが2件か……」
荷物を部屋に運び終え、業者が帰った後、孝が携帯を開くと、椿と明日実からメールが来ていた。
「えっと、なになに……『引っ越しのほうは片付いた? そのうち遊びに行くね〜』か……来るとすればGWあたりかな。さて、片づけるか」
孝は2人にメールを返信すると、荷解きをするために立ち上がった。
それから数日後、孝はスーツを着て大学の入学式に臨んでいた。
「なんかスーツを着ると気持ちが引き締まる感じがするな……とにかく、今日から大学生だし、いろいろがんばるかな」
孝は入学式の式場となる体育館に入る前にそんなことをつぶやいていた。
孝の入学した都台大学は、都内の大学にしては意外なほど偏差値が低く、他の大学を受験して落ちた受験生のためにかなりギリギリまで試験を用意している、いわば‘最後の砦’の大学である。
「ふう、なんでこういった式っていつも長いんだ? すっかり疲れちまったぜ……ってなんだこの人ごみは?」
孝が体育館の出口に向かうと、それを待ちかまえるように幾重にも人の環ができていた。先に出ていった新入生らしきスーツ姿の連中がその人波にもまれている。不思議に思いつつも体育館を出た孝もまた、同じように取り囲まれた。
「バスケ部、よろしく! 一緒に大会を目指そう!」
「いやいや、キミは我がバレー部が求めていた人材だ!」
「キミのような人はぜひアメフト部にきてほしい! 今なら部員が少ないから即レギュラーになれる!」
いろんな部活やらサークルやら、あちこちの勧誘を受けて、孝の手の中にはチラシの山ができていた。しまいには孝の勧誘のために同時に話しかけようとした2人がケンカを始めてしまい、騒ぎに発展してしまった。
「とりあえず、家で考えてみます」
孝はケンカしてる2人を含めて勧誘してきた人たちにそう言うと、そそくさとその場を後にした。
「どこもすごい必死な勧誘だったな……ケンカまで始めちゃったけど、アレ大丈夫なのかな?」
帰宅後、孝はもらったチラシと格闘していた。とにかく数が多い。孝は背が高いので特に運動系の部活が目の色変えて勧誘に来ていた。
「でも、のんびりやりたいから‘部活’じゃなくて‘サークル’がいいかな」
そうつぶやいて半分以上を占めていた運動部からの勧誘チラシをゴミ箱へ捨てる。
「残りは……あれ、たった5枚?」
運動部からのチラシを処分した孝の前に残っていたチラシはわずかに5枚だけだった。それらを見てみると、‘週に2回軽い運動で汗を流そう! テニスサークルLPT’とか、あるいは‘物書きさん集合、来たれ文芸部’とか少ないながらもインパクトのあるチラシが並んでいた。
「いいや、もう夜も遅いし、またあとで考えよう」
孝はチラシを片付け、これからの大学生活が楽しくなるようにいろいろ考えつつ眠りにつくのだった。 |