Part16:渋谷でお買い物
東京タワーをあとにした孝たちは、昼飯を近くのファーストフードで済ませたあと、渋谷に来ていた。
「やっぱすごい人の数だな……」
思わず孝がそうぼやく。
「そうだね。でも仕方ないよ。とりあえず行こっ!」
椿はそう言うと、孝と腕を組んで歩き出した。
「ちょっと待ってよーっ! 置いてかないでー!」
明日実も人ごみをかき分け、その後ろを追いかけていった。
「いやー、結構買ったなぁ……」
数時間後、孝の両手には持ちきれないほどの買い物の荷物がたまっていた。
「あはは、ついつい買いすぎちゃったかも……」
椿と明日実は苦笑いで応えた。
「あっ、すまん。ちょっとトイレ行ってくるな」
孝はそう言うと、2人にいったん荷物を預け、近くにあったデパートに入っていった。
残された2人がデパートの前で待っていると、
「ねえねえ、そこの2人さぁ、俺たちとお茶でもどうかな?」
突然数人の男が2人に話しかけてきた。
「いえ、私たちは連れがいますので、結構です」
椿が丁重に断ると、
「そんなこと言っちゃって、断る口実でしょ? いいじゃん、行こうよ」
男たちのリーダーっぽい、茶髪の男が椿の肩を抱き寄せようとしながらそう言った。
「ちょっと、やめてください! 私たちはちゃんとした連れがいるんですから! しかもその連れは私の彼氏です!」
椿が男の手を払いのけながらそう叫ぶ。と、そこに、
「椿!」
孝がようやく戻ってきた。どうやらトイレに行った後、2人に飲み物を買いに行ってたようで、両手にペットボトルのジュースを持っていた。
「んで、あんたらは何か用?」
孝は2人にジュースを渡しつつ、後ろにかばう態勢を作り、男たちに問う。
「ちっ!」
男たちは無言のまま舌打ちすると、その場を立ち去った。
「やれやれ、オレが席を外した途端ナンパか……」
男たちが見えなくなったあとで、孝がぼやいた。
「東京の男ってみんなああなのかしら? イヤがってるのに気づけっつーの!」
ナンパされてる間はずっと黙っていた明日実が一気にまくしたてた。
「……帰るか?」
しばしの沈黙ののち、孝がそうたずねた。
「そうだね。帰ろうか」
2人とももうナンパはこりごりとばかりにうんざりした表情でつぶやいた。
「じゃあ、また荷物はオレが持つよ」
孝は2人から荷物を受け取ると、うまく整理して持つことでさっきより見た目の量を減らすことができていた。
渋谷駅に向かう途中には、さっき孝たちがいた場所からだと細い小路を通らなくてはならない。3人がそこに差しかかったところで、小路の中にあるさらに細い道から、さっきのナンパ集団が現れた。
「おい、そこの兄ちゃんよぉ、後ろの彼女を置いてどっか行ってくんねえか?」
さっきの茶髪の男が孝にそう詰め寄る。
「ふっ、悪いがそれはできない相談だな。あんたらが声をかけた椿はオレの愛する彼女だし、もうひとりも大切な幼なじみだからな」
孝は男たちを鼻で笑い、そう言い切った。
「てめえ、ケンカ売ってるのか? 話し合いで解決してやろうと思ってたが、こうなりゃ力づくででも!」
男たちはそう言うと、孝に殴りかかってきた。
「あんたら、バカだろ? 仮にオレを力づくで倒したところで、それを見ていた椿たちがあんたらについていくとでも思っているのか?」
孝は整理した荷物を地面に置くと、殴りかかってきた男たちに立ち向かっていった。
「孝くん、強〜い!」
数分後、男たちはみんな地面に伏していた。
「さて、こんなところに長居しても仕方ないし、早く帰ろうか」
孝は地面に置いた荷物を拾い上げると、2人を促して歩き出した。
と、次の瞬間。
「このヤロー、ぶっ殺す!」
リーダーっぽい茶髪の男が立ち上がり、ふところからバタフライナイフを取り出して刃を出すと、後ろから猛然と孝に襲いかかった。
「しまっ――」
「孝くん、危ないっ!」
背後からの襲撃だったことや荷物を持っていたこともあって反応が遅れた孝を、椿が突き飛ばした。直後、男のナイフは椿のわき腹に突き刺さった。
「椿ーっ! だ、誰か救急車を呼んでくれ!」
「椿ちゃん! いやあああ!」
孝と明日実の絶叫が夕暮れ前の渋谷の街に響きわたったのだった。 |