Part10:帰りは帰りで大騒ぎ
騒がしかった夜も明け、旅行もあとはそれぞれの家へ帰るだけとなった。
「それじゃ、孝くん。またね」
「ゴールデンウイークに遊びに行くわ。それと、桜さん。孝くんは私の彼氏です! だからそんなにベタベタしないで!」
「ふふん、ゴールデンウイークまでに孝くんを落としてみせるわ。覚悟しておきなさい!」
椿たちの集合が近づく中、最後まで小競り合いをしている椿と桜だった。
「やれやれ……オレにその気はないから無駄だと思うけどな。とりあえず離れてくれ」
孝は腕に抱きついてる桜をひっぺがし、椿と抱き合った。その後で明日実とも軽く抱き合って、2人と別れた。
と、そこに……
「八坂ー、彼女との別れは済んだかー? こっちも集合だってよー」
卓巳が孝を呼びに来た。
「ああ、わかった。今行くよ」
孝はそう言うと、荷物を抱えて集合場所へ向かった。
帰りのバスの中で、桜は孝の隣の席を望んだが、もともと隣の席にいた卓巳が交換を拒否し、孝の席の周囲が一触即発の危険地帯となって少し騒がしくなったものの、
「アンタはいい加減諦めるってことを覚えなさいっ!」
卓巳とにらみ合いを続ける桜の後ろから別の女子が出てくると、桜にチョップを食らわせて気絶させ、静かにした。
「サンキュー、助かったよ。さすがに女の子は殴れないからな」
にらみ合いをしていた卓巳が緊張をほぐしてチョップを放った子に礼を言う。
「どういたしまして。ああ、そういや自己紹介してなかったかな。アタシは薫、上野 薫だ。桜とは高校からの友達なの」
薫と名乗ったそのクラスメートは気絶した桜を引きずって自分の椅子に戻っていった。
「それにしても、だ。バスが走ってるのによくあんなに動き回れるな」
事の成り行きを見守ることしかできなかった孝がポツリとつぶやいた。
「そういやそうだな。いまどの辺だ?」
卓巳が外を見ると、詳しい場所はわからないものの、バスは高速道路を時速100キロで走っていた。
「橋本さんといい、上野さんといい、走行中のバスで暴れるなよな……」
孝は呆れたようにそうつぶやき、やがて静かになった車内で眠ってしまった。
「ふわぁ……着いたみたいだな」
孝があくびをしながら辺りを見回すと、ちょうど解散場所の駅に着くところだった。
「いたたぁ……あたしいつの間に寝てたんだろ……しかも首が痛い……寝違えたかな?」
ずっと気絶していた桜も目を覚まし、バスから降りたところで一行は解散した。
「やさ……じゃなくて孝くん、一緒に帰ろっ!」
首を押さえつつも、桜は孝を見つけると、そう言って抱きついてきた。
「いちいち抱きつかないでくれ。それに、アパートが隣同士だからって一緒に帰る義理はないだろ? このあとオレはいろいろと買い物しなくちゃならないからな」
孝は桜を突き放すと、駅の方へ去っていった。
「ちょっ、買い物くらいならつきあうよ? あっ、孝くん、待ってぇ〜!」
桜も去っていく孝を追って駅の方へ走っていく。
「たいした買い物じゃないから、ついてくるなぁ〜!」
旅行の疲れもなんのその、駅の中、さらには街中を舞台に日が暮れるまで孝と桜の追いかけっこは続いたのだった。 |