Part1:卒業と新たな門出
「孝くん、それホントなの?」
春も近いある日の夕方、松林高校三年五組の教室で男1人、女2人が話していた。
「ああ、本当だ、明日実。オレは東京の大学に進学することが決まったよ」
孝と呼ばれた男子は目の前の女子たち―椿と明日実にそう答えた。
「私たちと一緒に地元の大学に行くって話はどうなったの?」
椿がさらに続ける。
「椿……実はオレ、地元の大学落ちて、東京の一つしか合格してなくてさ。浪人以外の選択肢はそれしかないんだ」
孝は頭をかきながらそう弁解する。
「そうなんだ。それじゃしょうがないよね。卒業式まであと3日、遠距離恋愛になるから今のうちに恋人どうしの感触を体に覚えさせておかなくちゃ」
椿はそう言うと孝に抱きついてきた。
「あっ、椿ちゃんずるい! 私もやるー!」
明日実も負けじと反対側に抱きついてきた。
「あのさ……胸が当たって動きづらいし、見られたら恥ずかしいから2人とも離れてくれないか?」
孝が左右に抱きついてる椿と明日実にそう頼む。
「う、うん。わかった」
2人は今さらながら顔を赤らめてそう言うと腕を離し、「帰ろうか」と言って歩き出した。
(オレたちが再会してから約3年、この高校ともお別れか。長いようで短いもんだな、高校3年間は……)
孝は思い出の詰まった校舎を見上げて心の中でそうつぶやいた。
3日後、彼らは卒業式を迎え、級友たちと涙の別れを惜しんだ。
彼らはこの春松林高校を卒業し、それぞれの道を歩き出す。椿と明日実は地元―長野の4年制大学へ、孝は東京の4年制大学へ。ここから彼らの新たな物語が始まる。 |