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短編集

ちょっぴり恥ずかしい☆ナイショの話

作者:浮羽ゆ-


 中学校帰りの田舎道。
 ボクと幼なじみのリョーコちゃんは、オレンジ色の夕陽に照らされた路線バスに仲良く揺られていた。
「ねえ、ゆーくん内緒の話があるんだけど」
 モケット生地の青い座席で、リョーコちゃんが顔を寄せてくる。

 リョーコちゃんは最近ぐっとオトナっぽくなって、そんな間近で上目使いに見つめられるとボクはドギマギしてしまうのだ。
「な、なに?」
「こんなこと、人に言うべきじゃないと思うんだけど。私、どうしたらいいのかわからなくて…… でも、ゆーくんには、思い切って打ち明けたいの、聞いてくれるかなぁ?」
「もちろんだよ」
 ボクは不自然なほど力強く肯く。

 それでリョーコちゃんは周りの乗客に聴こえないように囁いた。
 桜色の唇が鮮やかな夕陽の色彩を、はね返す。
「昨日ね…… 私、はじめてしちゃった」
「えぇぇ!」
 驚いて、思わず叫び声が漏れる。
 まばらな周りの乗客たちの視線が、一瞬集まった。

「もぉ、ゆーくん声大きいよ」
 リョーコちゃんは学生ズボンの上から、ボクの太ももをつねり上げてくる。
「ゴ、ゴメンよぉ…… で、何をしちゃったの?」

「昨日の夜、お布団の中でね、うとうとしてたら、なんか体がむずむずしてきたの」
 ボクは息を飲み、話に聞き入った。
 見つめてくるリョーコちゃんの大きな瞳が、かすかに妖しく潤んでいる。
 ゴクリとのどが鳴った。

「それでね、あ、なんか変だなと思ってパジャマの中に手を差し入れたの」
 ボクはもう、リョーコちゃんからこぼれる言葉に夢中だ。
「それで?」
 できるだけ落ち着いた素振りで小声で尋ねる。でもどこか上ずった声を出しているのが自分でもわかる。

「うん。そしたらね、なんか電気が走ったみたいになって、体に触れているのに、感触がとろけるというか……」
 リョーコちゃんは喋りながら美しい小鼻を収縮させた。それはすぐ側にあるのに、どこか遠い世界のおとぎ話の女の子を連想させる可愛らしさだった。

「それで、体中がほわ~んとして、しびれるようで、そして次第に血液が熱く巡り始めて、そして、とうとう体から……」



 そこまで言うとリョーコちゃんは、恥じらいでうつむいた。
 ほんのりと染まる頬と夕陽の色が混じって、ボクには不思議と彼女が泣いているようにも見えた。
 顔を覆ったつややかにほつれた前髪がキラキラと光っている。

 体から何? ボクはそう思いながら、黙って彼女の言葉を待ち続けた。
 しばらくして、彼女は顔を伏せたままつぶやいた。


「……出ちゃった」


 出ちゃった? え!? ナ、ナニがぁぁ?
 そして、彼女は意を決した風に顔を上げ、その美しい造りの瓜実顔でキッとボクを軽く睨むように言った。

「だ・か・ら! 出ちゃったのよ体から!」
「体から? だから、何がでしょうか?」



「た…… 魂っ!」



「はぃ? た・ま・しイ~?」

「……そう、昨日の夜。私、はじめて幽体離脱しちゃいました」




    *   *   *



「でね、ゆーくん。ここからが本題なんだけど」
「え? ……本題?」
 まだ、続きがあるみたいだ。


「昨日幽体離脱してから、私ね、魂だけで街中を飛び回ったの」
「へえ~、そんなこともできるんだ。スゴイね!」
「それで、昨日ゆーくん家の横も通り過ぎたんだ。夜の十時ごろ」
「ふむふむ……えぇぇ!!!!」

 リョーコちゃんは、夕陽より、さらに頬を赤らめてボクに告げた。
「……ゆーくん。ああいうことは、カーテン閉めてしたほうがいいよ。外から、丸見えだから」



 恥かしぃ~。
 そう…… 思い返せば昨日の夜。

 ボクは布団の上でパンツ一丁の格好になり、フンフンと鼻息を荒げ、右腕に血管を浮き上がらせるほど力を込め、体中から汗を染み出させながら、鏡に向かって……





 ボディービルディングごっこをしていたのであった。


 

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