告白をしよう。
と、思ったはいいが……
チラリと視線を室内の中央に向ける。
そこには、数人の美女達に取り囲まれているクロフォードさんが見えた。
ち、近付けない……
クロフォードさんにいざ告白しようと思っても、彼の周りには何時も数人の人がいて、話し掛ける事さえ出来ない。
いいなぁー、私も彼と話してみたいなぁ~。
と彼らを眺めていたら、
「琴海、そんな難しそうな顔して、何見てんの?」
隣の席のあっちゃん――原田あつ子が、不思議そうな顔をして私を見ていた。
「あ、あっちゃん。いや……別に何でも……」
「何でも無さそうな顔をしていたから、声を掛けたのよ。一体何を見て……」
「………………」
「はっはぁ~ん」
あっちゃんは、私が見ていた方向――クロフォードさんがいる方に視線を向けてから、にやにやした顔で私に振り向いた。
うわぁ~……なんつー顔をするんですか、貴女は。
少し身体を引いた私を気にする事も無く、あっちゃんはニシシと笑った。
「これまた、随分とレベルの高い方に目を付けたもんだこと」
「うっ……」
「で? どうするの?」
「……どうするとは?」
「だから、あの銀髪キラキラ男に、どうやって告るかって事」
「……まだ決めてない」
あっちゃんは、私と同じ時期に入社した同期だ。
彼女は大卒。私は高卒入社なので年齢はあっちゃんの方が上なのだが、研修期間に意気投合してからは、親友の様にずっと仲良くしている。
そんなあっちゃんは、私が『面食い』である事を知っていて、イケメンの『彼女無し』の男がいたら即告白します、という宣言も聞いていた。
だから、クロフォードさんを見詰めていた私が、彼に告白すると気付いたのだ。
「早くしないと、他の雌豹達に横から掻っ攫われるわよ?」
机に肘を置いて、頬杖を付きながらそう言ったあっちゃんに、私は頬を膨らませた。
「だぁーって、彼に声を掛けようにも、常に数人の人が周りを取り囲んでるのよ? 声を掛けるどころか……告白なんて無理だよ」
ガクーッと項垂れる私に、あっちゃんは「まぁ、頑張れ」と、とてもアッサリとした反応を寄越した。
私はもう1度、他の人達と楽しく喋っているクロフォードさんを見てから、溜まっている仕事を片付けるべく、パソコンに視線を戻したのであった。
気になる人が出来ると、その人の事を1日中考える様になる。
仕事をしてても、その人の声が聞こえると、一瞬にして意識がそちらの方へ飛んでいく。
『皆とどんな話をしているのかな?』
『どんな女の子がタイプなんだろう?』
『もう、気になっている人とかいるのかな?』
とか、いろいろと考えてしまう。
パソコンに数字を打ちながら、ふと、思い出し笑いをしてしまった。
以前、彼が1人で楽しそうに、指でペンをくるくる回す(凄い高速回転だった!)ところを見たり、ブラック珈琲を飲んでいる様に見せかけて、実はシュガーを何本もコッソリと入れているところを見てしまった事がある。
意外と子供っぽい所があるんだな、と思ったが、他の人達が知らない彼を知れて、ちょっと嬉しかったりした。
彼の恋人になれたなら――まだまだ知らない、彼の本当の姿を知る事が出来るかも知れない。
って……恋人云々の前に、まず初めにやるべき事があった。
彼を取り巻く美女軍団に気圧されて、話すどころかしっかりと目を合わせた事も無いのだ。
多分、彼は私の事なんか知らないと思う。
パタリ……とパソコンの前に突っ伏す。
どうしたら、彼に告白出来るんだろう……。
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