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親子
作者:二天
「父ちゃん、もっと静かなくしゃみできないの?そんなんじゃあ近所迷惑だ!!」

生意気な子供に育ったものだと、俺は最近良く思う。
彼が母ちゃんに似たのか、それとも父ちゃんである俺に似たのか分からないが、まぁ生意気な子供に育ったものだと思う。
がっかりはしないが、なんとも言えぬ気持ちだ。

俺の子、健太は今年で5歳になる暴君だ。
健太が2歳ぐらいの頃はもっと大人しくて、可愛くて、女の子みたいで・・・それが今となっては・・・これ以上しつこく言うのはやめておこう。

今、この家には俺と暴君の健太しかいない。
母ちゃんは一人で買い物に出かけた。何でも俺と健太がいたら、ろくに買い物が出来ないと俺達を置いていったのだ。
これには少し寂しい気持ちもしたが、まぁ子供のいる前で喧嘩はよくないと思い、何も言わなかった。


母ちゃんが家を出てから20分がたったところである。
俺がくしゃみをしたら健太が怒鳴りやがった。
近所迷惑だって、おめぇはいつから近所のことを気にするようになったんだと思ったが、相手は5歳である。
そんな乱暴なことを言えるはずが無い。
仕方なく俺は抑えて、

「おぉ・・・ごめんな。つい、でけぇくしゃみになっちった」

そういうと健太はまるで勝ち誇ったような表情をして

「次からは気をつけてね・・・父ちゃんのくしゃみはこの世で一番の騒音なんだから」

・・・俺は言い返す言葉が無かった。子供は成長していくものよ。と誰かがいっていたが、この時初めて実感したような気がした。
この世の一番の騒音が俺のくしゃみ、健太よ・・・お前の世界は小さい。この世の何よりも小さい。と言ったら健太はなんと言うだろうか。
俺は心の中でわくわくしたがついにそれを言葉には出来なかった。
健太は相変わらず勝ち誇ったような表情をしている。

俺は健太に何か仕返しがしたくてたまらなかった。それでこう聞いた。

「健太、お前幼稚園に好きな子いるか?」

これは前々から気になっていたことだ。俺はちょうど良い機会だと思い、良心犠牲に聞いた。
果たしてどんな顔をするか、そう期待したが、見事に期待は裏切られなかった。

健太は急に真っ赤になり、汗をかきだした。目はきょろきょろと大きく、鼻もぴくぴくと動いている。

「好きな奴なんて、い、いないやい!」

「そんな嘘、つかなくてもいいんだぞ。顔に思いっきりででるからな」

「ばかぁ!父ちゃんのばっかやろう」

「ははは、面白いな。健太は面白い」

可愛いな。あせっている健太を見てたらそんな感情が出てきた。
変態の意味ではなく、純粋に親が子供を思う気持ち。さっきとは正反対な俺がそこにいた。
健太も子供だ。
俺はそう思った。



――俺のような大人はいつも自分の感情を表に出さない、決して恥ずかしい思いをしてはならないと周りを恐れ、いつも誰かを罵っている。暗い世界だ。

――だけど子供は違う。
子供の世界は純粋で明るく感情をありのままにさらけ出している。それでいて嫌われること無く、自由に育っていくのだ。


「誰にも言わない?」

健太の言葉で俺は我に帰った。

「おいで」

健太の言葉を無視して俺は健太を呼んだ。
健太は一瞬迷ったが、すぐに来た。
すぐに来た健太を俺はぎゅっと、強く抱きしめてやった。

「健太、良い大人になるんだぞ、絶対に悪い奴にはなるなよ」

「うーん、今のオイラは悪い奴?」

「良い子だ、俺のたった一つの大事な大事な宝物だ」

「宝物かぁ・・・オイラ父ちゃんが大好きだ」

俺はさらに強く抱きしめた。
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