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月夜霊
作:小夜



69、天地開闢


 昔々、人の記憶にも残らない程遥かな昔。
 この世は暗い闇に覆われていたと言う。
 人々は、争い、混沌の中で生きていた。
 それを嘆かれた神は人に問われた。
 お前達は何故争うのか、と。
 生きるためです、と人は答えた。
 私達は、苦しいのです。
 私達をまとめる長はどこにもいません。
 私達を守る秩序もありません。
 けれども、私達は生きる必要があります。
 だから、私達を生を勝ち取るために争うのです、と。
 では、と神は再び尋ねられた。
 私が、お前達に秩序と長をもたらせば、お前達は心安く暮らせるのか、と。
 はい、と人は答えた。
 私達もそれを望みます、私達は安寧を求めます、と。
 そこで神はまず、街をお創りになられた。
 たくさんの街を創られ、そこに人を据えた。
 次に、神は神器を与えられた。
 一つの街に、一つの神器。
 そうして、神はこう告げられた。
 この神器は、お前達の長を選ぶ、と。
 神器は、神の力を授けられた者を選ぶ。
 お前達は、その者に従い、穏やかに暮らせ、と。
 こうして、人の世は始まった。
 各地に守護使いの司がたち、神の御業をもってして、人々を治めた。
 これ、天地開闢の時である。

 †††††††††

―…クレア、覚えておいてね……から。とても、大事な事だから。

 そうだ、とクレアは語り終えて、ふと考え込んだ。
 この後に、クレアの母は何か大事な事を言っていたのだ。
 何か、とても大事な事だったような気がした。
 神話は、不思議なほどはっきりと覚えているのだが、その後に言った母の言葉は、おぼろげな記憶の底に沈みこみ、どうしても思い出せなかった。
 そのまま、記憶の世界に入り込もうとしていたクレアを現実の世界に引き戻したのは、ジャンとアレンの会話だった。
「初めてきくな」
「うん…。クレア、それどこで聞いたの?」
 ジャンの言葉に、クレアは軽く首を傾げる。
「お母さんだけど…お母さんがどこで聞いたのかは知らない。でもきっと、お母さんが住んでた街だと思うんだけど」
 言ってみたものの、クレアは母が住んでいた街すら知らないので、それでは答えにはならない。
「まあ、結局今を生きてる俺達には、どうして神器があるのかも、何も関係ないのだけどね。この世に分からない事はたくさんあるんだし。神器があって、その使い方が分かって、そうして街に分かれて人が暮らしてる現実があるんだしね」
 ジャンは、目前に迫った門を見上げて、そう言った。
「どうかした?」
 先ほどからそわそわと、落ち着かないアレンにジャンは視線を向けて問いかけた。
「いや、いつもの事なんだが…苦手なんだよ」
 今にもその場を逃げ出したそうな表情で、アレンは周囲を見回す。
 何が、と問いかける暇もなく、それは始まった。


ニ話連続投稿です!
これからは、暗くなることは今までほどはない、と思われ…あ〜、しばらくはないと思います。
あ、一応言っておきますが、これ異世界ファンタジー+恋愛を目指してるんですよね。
恋愛のれの字もまだ出てきてませんけどね。











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