4、捜索
いったいどれ程の時間がたったのだろうか。捜索は二人一組でされる事になり、時間がたつにつれ、人々の焦りはまし、捜索はより広範囲により綿密になされたが、依然司の消息は不明で、全く何の手がかりも見つからなかった。
まだ城門は開いてはいない。まだセレサにいるはだ、いくらそう言い聞かせても虚しいばかりで、時は無情に過ぎていった。
「何で、何でこんな事に…」
相方が小さくつぶやいた言葉にカイは振り向いた。
「俺たちは、どうなるんだ…」
「エーミル…」
「司様は自分の意思で、逃げ出された。俺たちがいくら捜した所で、司様が出て行くと言われたら、止める事なんてできねーじゃねーか。カイ、俺たちは、この街は…」
「やめろ、エーミル。俺たちはそれでも捜すことしか出来ないんだ…」
カイにも、エーミルの気持ちは痛いほど良く分かる。セレサに住んでいる以上、結局は運命共同体。司が居なくなれば、行き着く先は一つしかない。司の守護のない街の行く末。それは、荒廃、略奪、戦争、そして……死。
今この街はひっそりと静まり返っているが、この静けさの中、ある者は外で捜索に加わり、ある者は自分の家で捜索から帰ってこない家族を待ちながら不安と恐怖を胸に抱きながら、最悪の事態を想像し、生き抜く術を考えているのだろう。
「…レナ…」
カイが小さく呟いた言葉を聞き返そうとして、エーミルは危うく出そうになった声を飲み込んだ。カイ、はつい半年前に結婚した、と聞いていた。ついこの間も赤ん坊ができた、とカイが嬉しそうに話しているのも聞いた。やっと結婚を果たし、子供もでき、これから幸せな家庭を築こうという矢先に、この状態だ。
「…カイ、悪かった」
何と言うかいたたまれない気持ちになってエーミルはカイに謝ると、横で失笑する気配がした。
「…別にお前が謝ることはないだろ」
その言葉にエーミルは肩をすくめる。
「まぁ、こんな状況で死ぬ程、俺達も、街の連中もやわじゃねーさ」
軽口を叩くエーミルにカイも微かに笑う。
「…まったくだ…これぐらいで家族を死なせてたまるか」
およそ考え得る中で最悪の状況におちいろうとしている中でも、軽口を叩くエーミルに半ばあきれ、半ば感心しながらカイはそう答えた。
司様が戻らなくたって関係ない。自分自身が、どんな手を使っても家族を守る、つい先ほどまでは考えられなかったような事を思っている自身に驚きながらカイはエーミルを見た。
「エーミル…ありがとな」
エーミルは一瞬カイを見ると、二ヤッと笑った。
「おうよ」
たった一言そう返すと、エーミルはまたカイから視線を外した。エーミルの笑ってみせた顔が、あまりに普段と一緒で、カイもつい笑みが零れた。
エーミルは凄い。自分自身も本当に切羽詰まった状況でも、そうやって相手を勇気付ける事が出来る。たった一言もらした、レナという言葉だけでカイの気持ちを察し、いったん自分の問題は棚に上げてしまえる。
そんな力がこれからは必要かもしれない、とカイはぼんやりと思った。死がいつくるかは分からない。どれだけ苦しい状況に陥るかも、分からない。だが、残された時間が同じなら心穏やかな時間を、少しでも多く過ごしたい。結局は、幸せも、どれだけ恵まれた環境にあったかではなく心の持ち様なのだろう。ならば、こうやって、いつもと同じ様に振る舞え、人の心を照らし、穏やかにする、そんな力が必要になるのだろう。 |