43、呟き
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いつの間にか眠り込んでしまっていたようだった。
まだ、外は暗い。
部屋の外は静かで、アレンもジャンも寝てしまったようだった。
幽かな月明かりの中、手探りで燭台を探し、蝋燭に火をつけた。
ゆらゆらと不規則に揺れる蝋燭の明かりで、おぼろげに部屋が浮かび上がる。
音を立てないようにそっと立ち上がると、ドアまで歩いていき、扉を開けた。
何か目的があった訳ではないが、自然と体が部屋を出て行った。
扉を開けて、初めに目に飛び込んできた物は、テーブルの上に無造作に置かれていたネックレスだった。
心臓の鼓動が跳ね上がり、思わず足を止めてしまった。
少しの間そのまま立ち尽くしていたが、ゆっくりとテーブルに近づき燭台を置く。
燭台とテーブルがぶつかり、カタリと小さな音を立てる。
手を伸ばしてネックレスを手にとってみた。
チャラチャラとチェーンが音をたてて鳴った。
蝋燭の光を反射して光り、ムーンストーンがその色合いを変える。
まさか同じ物ではないのだろうが、やはりそっくりだった。
幼い頃に幾度かねだって見せてもらっただけだが、記憶の中のそれとこれはそっくりだった。
「十五歳の誕生日に、か…」
そう呟く。
最後に見た時、あのネックレスは血にまみれていた。
血だまりの中に落ちていた。
「クレア…」
突然声をかけられ驚いて立ち上がり、その反動で椅子が倒れガタン、と大きな音を立てて転がった。
足から力が抜けてその場に座り込む。
アレンは物音に気付いて、少し前から声をかけようか、と迷いながら様子を見ていたのだが、クレアの驚きようにまた驚いてテーブルを回り込んでクレアの方へと行った。
「大丈夫か?驚かせるつもりはなかったんだけど…」
そう言いながら、しゃがみ込んでクレアの顔を覗きこむようにする。
これも驚いたからだろうか、と疑問に思いながらアレンはクレアを見る。
あえていうなら、恐怖、それも耐え難い程の恐怖を、瞳は映し出しているように見えた。
「…ネックレス、どうかしたのか?」
そう声をかけても、ほとんど反応を返さずクレアは、呆けたようにあらぬ方向を見ている。
「…クレア…?」
少し戸惑いながら呼びかけると、やっとクレアの視線がアレンを捕らえた。
ゆっくりと、焦点があい、初めてアレンがそばにいる事に気付いたように見る。
「あ…」
小さく声を上げ、クレアは部屋を見回す。
安堵感が広がる。
急に声をかけられた時、クレアはどこにいるのか分からなくなっていた。
あの時の事を考えていた。
その時に声をかけられ、頭が真っ白になって本当に八年前に戻ったかのように錯覚していた。
小さく体が震えるのを止める事が出来なかった。
アレンがクレアを抱きかかえるようにして椅子に座らせる。
ネックレスを握り締めるようにして、肘をつき、頭を抱え込む。
「クレア…」
どうしたら良いのか分からず、アレンは、そう声をかける。
「…そっくりなの…」
囁くようにクレアがそう言う。
「お母さんの、ネックレスに…」
―…十五歳の誕生日に上げようね……六月生まれの人のお守りなの。
あの時は遠い未来の事だった。
ただ、無邪気にその言葉を聞いていた。 |