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月夜霊
作:小夜



38、マーブル


「お、ここを抜けるとすぐマーブルの領地に入るぞ」
 突然話を切って、アレンは辺りを見回してそう言った。
 少しづつまばらになって来た木々は、農地が近づいて来た事を示している。
 アレンはそう言ったきり、黙っている。
 やっと静かになったアレンに安堵して、クレアは視線を上げた。
 目に飛び込んできた光景に、クレアは言葉を失った。
 森を抜けるとそこには農地が広がり、そしてその先にはマーブルが崖にへばり付くようにして姿を現した。
 城壁から建物まで全てが大理石で造られた街だった。
 遠目に見るとまるで茶の崖の中に真っ白な真珠が埋め込まれているように見える。
「綺麗だろ?」
 思わず街の様子に魅入っていたクレアに、アレンはそう声をかける。
「遠目でも綺麗だけど、近くで見るのもまた凄いぞ」


 その言葉は確かに嘘ではなかった。
 城門が近づくにつれ、圧倒されてクレアはただただ見上げる事しか出来なかった。
 やはり大理石で造られた城門には、数々の宝石が埋め込まれ、趣向を懲らした装飾で飾り付けられている。
 工匠の都としてその名を立てている以上、手は抜けない所なのだろう。
 城門をずっと見上げているクレアを見ながら、」アレンは内心首を傾げた。
 驚いているのだろうか。
 クレアの表情はほとんど変わっていない。
 アレンにはその微妙な変化を見極める事はまだ出来ず、熱心に見上げているのだからやはり驚いているのだろう、と結論付ける事しか出来なかった。
 豪華ではあるが、悪趣味な装飾でごてごてと飾り付ける訳ではなく、どこか繊細な印象を受けるのは城門ばかりではなかった。
 街に一歩入ると、町並みまでしっかりと設計されたかのような美しさを見せていた。
 やはり、豪華ではあるが繊細な印象を受けるものばかりだった。
 クレアは、ふと身近な場所から視線を外し崖に目を向けた。
 街自体が崖にへばり付くように出来ているだけでなく、崖も掘られて、住居として使われているようだった。
 門構えだけを見せ、建物の大半は土の中、と言ったものが多くある。
 崖に向かって土地が高くなっていっているので、その様子は城門の近くからでもはっきりと見て取る事が出来た。
「今夜の宿だけど、こっちで準備するからな?一応使用人達は大勢でかたまってなんだけど、ジャンとクレアは特別だし、別に部屋をとるよ」
 あまりに周囲を眺める事に耽り過ぎて、急に声をかけられたのに驚いて、クレアは思わずアレンを振り返った。
「良い?」
 そう聞かれ、クレアは頷く。
 泊まる場所さえあれば、寝る場所など、どうでも良かった。
 ウィリアムはすぐに取引先への挨拶周りに向い、ハーンは商品の管理と使用人達とを宿泊先へと引き連れて行った。
 慌ててジャンを起こすと、取り残される形になった三人は周囲をゆっくりと眺めながら、アレンに付いて歩いた。
 アレンは普段、使用人達と宿泊先を共にするそうだが、今回はジャンとクレアがいるので、別行動、という事だった。
 ウィリアムとクレア達の宿の世話はアレンの仕事のようだった。
 だが、大事な跡取り息子。
 父親と一緒に挨拶周りはしなくて良いのか、とも思うが本人は気にした風もない。
 商人の生活や考え方に馴染みがないからそう思うのか…結局はそうなんだろう、と思うことしか出来なかった。
 アレンが入っていったのは、あまり高級な宿でもない、普通の宿だった。
 ケイネでもそうだったが、高級なところは嫌煙しているようだった。
 単に気性的にそうなのか、別の理由があるのか。
 服装や行動を見ているとやはり、気性的な理由からなのだろう。
 アレンは自分の父親用に一部屋と、もう一部屋をとった。
 部屋に入ると見た目よりも中は広かった。
 三つの小部屋に別れていて、一部屋は居間、後は寝室、といった造りだった。
 寝室にはそれぞれ二つずつベッドが置いてあった。
「部屋一緒で良かったか?」
 今更ではあるがアレンは部屋に入りながらそう聞く。
 それに無言で頷く。
 眠る場所さえあればどこでも良い。
 片方の寝室にアレンとジャンが、もう片方にクレアが寝る事に決めると、アレンはちょっと出かけてくる、と言ってすぐに部屋を出ていってしまった。


街の名前も困りますね。
大理石の産地⇒よし、大理石って名前にしよう。
単純です。











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