36、発見
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「分かった…」
小さくそう呟きながら、クレアは疲れた身体を地面に横たえた。
自然に口元には笑みが浮かぶ。
やっと、分かった、心の中でもう一度そう唱える。
瞼は重く、自然と目は閉じてしまいそうになるが、このまま寝てしまうとまた力の使い方が分からなくなりそうで、もう一度だけ出来た事をためそうと集中した。
今度は先ほどよりも簡単に腕が持ち上がった。
コツが掴めたかな、そう思ってもう一度小さな笑みを零した。
心を空にする、これが案外難しかった。
自分の心なのに、なかなか思い通りに静かにならない。
取り留めのない考えがいつまでも続き、心はなかなか静まらない。
そうして心が、波一つ起こさなくなった時、全ての感覚を閉ざす。
目を閉じ、自分という存在を忘れる。
そうして、自分という枠がなくなってきた頃、力が見える。
始めは感じるだけだった。
何も考えない状態ではそれからどうしたら良いか考える事はできず、さらに考えてしまうと先ほどまで自分の中にあったはずの感覚はすぐにクレアの指を擦り抜けて消えてしまう。
だが、何度かそんな事を繰り返すうちに突然力と自分の波長があった。
そうすると、次からは自然と波長の合わせ方が分かった。
波長さえ合ってしまえば後は簡単だった。
腕を持ち上げる、と言ったような事は簡単に出来た。
クレアは小さく安堵の溜息を落とすと、ゆっくりと瞳を閉じた。
たったこれだけの事にとても疲れていた。
『疲れた。あの人は話し掛けてくるし…』
今日の疲れは、力を使う練習のせいだけではなく、アレンがほぼ原因なんだろう。
そう思いながら、隊商に背を向けるように寝返りをうった。
『人間なんて嫌い…』
心の中で誓うようにそう唱える。
人は信用出来ない、誰も信じない、そう思いながらクレアは眠りに落ちていった。
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深夜も過ぎ、見張り役が交代してから、既に時間は大分たっていた。
「ジャン?どうかしたか?」
急に口を閉ざしたジャンに、アレンは声をかける。
「来たよ」
そう短く答えるジャンにアレンは、はっとして頷く。
自分に手伝える事はないだろうから、黙ってせめてジャンの邪魔をしないようにする。
ジャンは動く事なく黙って目を閉じる。
寝ている人たちを起こしたくはない。
少し疲れるが、まだたどり着かないうちに何とかしようと、人の動きを感じるあたりに力を集中させる。
遠隔操作は目で確認するという作業ができず、全てを力に頼る分、力の消費も激しい。
盗賊は二十人と少しだった。
昼間の盗賊に比べると人数が多い。
どうしようか、と少し考えるが、すぐに決まり再び集中する。
アレンは黙ってその様子を見ていた。
盗賊の姿も、何かが起こっている気配も感じられはしない。
見張り役の男も気付いた様子はない。
どのくらいそうしていたのだろうか。
「終わったよ」
ジャンの声に顔を上げると、少し疲れたような笑顔があった。
「そうか…大丈夫か?」
先ほどよりも明らかに疲れて見えるジャンを気遣って、そう尋ねる。
「うん。さすがに疲れたけどね」
「少し眠るか?」
それに少し考えるようにしてからジャンは、いい、と答える。
「どうせもうすぐ朝だし」
ジャンのその言葉通り、しばらくすると東の空が明るくなってきた。
ゆっくりと視界が開け、朝日に誘われるように数人が起き出していた。 |