第四章「紅の堕天使・紫暗の悪魔」・22
壁にぽっかりと穿たれた穴を呆然と見やりながら、翼は口を開いた。
「それで……お前はどうするんだ?」
それは、いつかは訊かなければならないと思っていたこと。ただそう考えていたのは翼だけではないようで、梓も心配そうな表情を浮かべ、彼の横に立っている。二人の正面にはもちろん真咲がいる。堕天使である天城真咲が。
「私は……」
どうするのだろう……いや、どうしたいのだろう。ミシェルの言葉ではないが、人間と魔族がともに歩むことはできないのではないのか。先ほどはそう思った。だが翼が自分を求めていた。しっかりと誰かのために歩んでいける、そう思わせてくれた。
「私は……人間じゃないのよ?」
そんな思いとは裏腹に言葉は彼らから離れようとする。自分は一緒にいたい。けれどそれで二人やそれ以外の人がどうなるかがわからない。最悪の結果になるかも知れない。昔その手で仲間を殺めたことが脳裏をよぎる。もう過ちは犯したくないのだ。冷静になってみればみるほど、そう考えてしまう。
「いい加減、素直になったらどうなんですか……」
翼が何やら言いたげに口を開いたが、それよりも早く第三者の言葉が滑り込んだ。シルフィードだ。傷だらけの体を壁に預け、立っていることですらつらそうではある。
「今日ばかりは何を言っても見逃してあげますから」
そんな言葉に真咲は苦笑する。自分を逮捕するべき立場の者にまでそう言われるとは。
「自分で言ったんだぞ? 信頼できる仲間がいるって。あんなに恥ずかしいセリフ」
「そうだよ、真咲。一緒にいてくれるんじゃないの? あたしは真咲といたい」
真咲は左手で額を覆った。
もう……止めよう。ああだこうだと考えるのは。
「ありがとう……」
そう答える。それだけなのに、涙が溢れた。紅い瞳から流れ落ちた。
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