WILD CAT(74/83)PDFで表示縦書き表示RDF


WILD CAT
作:館波実笠



第四章「紅の堕天使・紫暗の悪魔」・15


「な、にを……」
 真咲の言葉にミシェルは不敵に笑うと、梓と視線を合わせる位置に立った。
「神の御子か……そんなことをあいつは言っていたな。まさしく、その通りか。素晴らしい魔力だ……」
 その白い手が梓の頬を舐めるように伝う。まるで壊れやすいものでも扱うかのようなほどゆっくりと。梓はぎゅっと目を閉じ、ミシェルと目を合わせないようにしていた。彼の目を見たら、まるで恐怖を直視してしまうようで、嫌だったからだ。
「最後に訊く。協力はできないのだな、倉本梓?」
 まさしく、最後の通知なのだろう。その言葉に梓は閉じていた目を開け、ミシェルの視線を真っ向から受ける。もう恐怖などない。
 これで梓がノーと答えれば、殺すなりして、梓から魔力を奪うつもり……本気の目をミシェルはしていた。殺すことなど厭わない、無感情の瞳。
 梓はその瞳と倒れたままこちらを見る真咲の瞳を見比べた。
 両方とも真赤の瞳。ルビーを溶かしたかのようと言えば美しいものだが、実際は血を溜めたかのような、どこか生々しい光がそこにはあった。
だがその奥に秘められた気持ちは違う。そこが決定的な、二人の違い。
 だから、彼女はゆっくりと口を開いた。
「当たり前よ。あんたに協力するぐらいなら、真咲と死んだ方がましよっ!」
 梓の叫びにも似たそれが、室内にこだました。反響する声が収まると、
「そうか、実に残念だ」
 芝居がかった仕草で肩をすくめると、ミシェルはその手を彼女の頬に当てた。先ほどよりも強く。
「あ……あああああああああああああ!」
 梓の口から悲鳴にも似た声が漏れ、徐々に大きさを増す。目が見開かれ、口は限界に近いほどに開かれ、声を絞り出している。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう