WILD CAT(16/83)PDFで表示縦書き表示RDF


WILD CAT
作:館波実笠



第二章「黄金の鈴・漆黒の鎌」・9


「さて、と。俺は帰るかな」
「何でよ。もう少しいてもいいんじゃない?」
 真咲が翼を引き止めようとしたとき、教室のドアが強引に開かれた。
「お前ら! いつまで騒いでいるつもりだ!」
 入って来たのはこの学校の教頭だ。入学式当時は髪が寂しい人だったが、今では十年少し髪が若返っているのではないのだろうか。無意味な努力だな、ずれるだろうし、と翼以下クラス全員はそう思っている。 神経質そうな顔つきで細いフレームの眼鏡をしている。
「教頭?」
 クラス内でざわめきが起こる。
それもそのはずだ。いきなり、怒鳴られては誰でもそうなる。
「倉本。どういうことだ? 今日は文化祭の準備をするんじゃなかったのか?」
 驚きの表情をする梓に教頭は訊く。
「あ、そういうことか……」
 クラスの中で最初に現状を理解したのは翼だった。
「はは、これは……ですね」
 言い訳を言い出すような切り出しで、梓は口を開いた。口はぱくぱくと魚のように動くだけだ。
「教頭! 大変なことになったんですよ」

 と、声を上げたのは新明だ。
彼もこの状況を理解したらしい。
強引にも教頭と肩を組むと廊下に出た。やや演技が大げさなのはこの際目をつむろう。
「相変わらずむりやりだが、今のうちだな」
 翼は教室のベランダへ通じるドアを開けた。そして我先に脱出する。
「あ、私も……」
 横にいた真咲が続く。それに教室にいた生徒たちも。
最後は梓だった。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう