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66話 ギアスの生贄っぽい

今回も短いです!

「ベルクさん、それは一体……?」


 ベルクが懐から何かを出した。

 ファイの表情から察するに良くないものだと思うが、訊かずにはいられなかった。


「精霊ってのは嘘ではないようだな」

「そんなことより、それは本物・・なの?」


 ベルクはしっかりと頷いて肯定した。


「……どうやって確かめたの?」

「実際に使った。それだけだ」


 ベルクがそう言った瞬間、ファイの目線が更に鋭くなった。


「誰に使ったの?」

「実際に俺が手を下したわけではないが、兎族の少女に使ったらしい。その後、その少女にギアスを埋め込こんで――――」


 ベルクが言い終わる前に、二人は勇志の視界から消えた。

 遅れて轟音が聞こえたのでそちらを見ると、ファイがベルクの胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。


「ぐっ……ぁ!」

「ベルクさん!?」


 勇志は未だに状況を整理できていなが、とりあえず二人の下に向かう。


「あんた、非戦闘種族の女の子にそれを使ったの? しかも、その女の子にギアスまで埋め込んだ? 外道にも程があるでしょうが!!」


 ファイはより一層力を込めて壁に押し付ける。


「ファイ! やめるんだ!」

「ユウシは黙ってて! この男は……!」

「さっき、ベルクさんは直接手を下してないって言っていたじゃないか!」


 そこまで言うとファイは渋々手を離す。


「ゲホッ! ゲホッ!」

「ベルクさん、大丈夫ですか?」


「ああ……なんとかな」

「……ファイ、説明してくれるか? そのベルクさんが出したもの……そして、ギアスのことも」


 ファイはベルクを睨みながらも無言で頷いた。


………

……


「とりあえず、これ……パニッシュメントについて説明しましょうか」


 ファイはベルクの持ってきたものを勇志に差し出した。


「それは、指定した相手を呪い状態にする禁忌の魔具よ」

「禁忌の……魔具?」


「ええ、まぁ発動させるのにはちょっとややこしいのだけどね……」

「ややこしい?」


「指定した相手のHPを二割以下にして、名前を呼んで返事をさせる。それが条件よ」

「え? 名前を呼んで返事をさせる?」


「そうだけど……なんで驚いてるの?」

「あ……いや……何でもない」


 勇志はその仕組みをどこかで聞いたことがあったのだが、何も言わずに続きを聞く。


「じゃあ続けるわね。その呪いの状態なんだけど……これが中々酷いの。『全ステータス1/4』『魔術使用不可』『スキル使用不可』『状態異常耐性低下』この四つが付属されるわ」

「流石精霊だな。このことについては殆ど知られて――――」

「あなたは黙ってて」

「……」


「ユウシ、これがどれだけ酷いことかわかる?」

「確かに、この世界はステータスが全て……。そこまでされたら……」


「しかも、その呪いにかけられたのが非戦闘種族の少女だというのだから、余計にたちが悪いわ……。非戦闘種族……それに性別が女性となると、魔術系に偏るのが大半よ……その意味がわかる?」

「……魔術、スキルが使用不可になっているせいで唯一の長所が皆無になっている……」


「そう。それだけでも酷いのだけど、もっと酷いのが……ギアスの存在よ」

ギアス……」


「ええ、ユウシは奴隷についてどこまで知ってる?」

「主人の命令には絶対服従、物として扱われて人としては扱われない」


「後者は正解だけど、前者は正解とは言えないわ」

「?」


「まず、一応だけど主人の命令に逆らうことはできるわ。激痛はするけどね。それに、聞こえてなければ命令は命令ではなくなる……。だけど」

「……」


「だけどギアスは違う、完全に絶対服従よ。主人から一定距離離れたら死ぬ。寝てても主人の命令には逆らえず、強制的に激痛で目覚めさせて行動させる。骨が折れていても無理矢理行動させられ、常に痛みで瀕死状態になるわ……。でも、一番酷いのは自分では死ねないこと……。自殺も過労死もできない事よ」

「……」


「まず、自殺しようとすると動けなくなるほどの激痛。過労死はもっと酷い……。痛みと引換にHPが回復して、もっと危険な状態に陥りそれでHPが減っても……といった過程をひたすら繰り返すことになるわ」

「それが……ギアス


「ええ、本当は死罪以上の重罪を犯した者に埋め込まれるのだけど……」


 ファイはベルクを一瞥して悲しそうな顔をする。


「さっきの話を聞く限り、ただの実験として使われただけみたいね」

「……確かに、シッカ王国の住人が行った。未然に防げなかった俺にも否がある」


「で? その少女は今どうしてるの?」

「雪山で魔物に襲われて、その主人は死んだらしい」


「……そう、安らかとは言えないと思うけど死ぬことができたのね」

「ああ」


(ルナさんみたいな兎族もいれば、そんな可哀想な事をされる兎族もいるんだね……。本当に人間と変わらない)


 勇志はそんなことを思いながらも自らの手にある『パニッシュメント』を眺める。


(その兎族の地獄の日々は無駄にしない……! 必ず暗黒騎士を倒してみせる!)


 そう心に決め、勇志は口を開いた。


「ベルクさん。作戦の決行はいつですか?」

「……本当にいいのか? 死ぬかもしれないんだぞ?」


「魔族といつ戦争になるかわからないのでしょう? それだったら戦争になる前に少人数で魔界に行ったほうが乗り込みやすいと思いますが?」

「……わかった。作戦決行は早めにして、それまでお前たちを強化しよう」


「よろしくお願いします」



 こうして、戦争開始の合図に着々と近づいているのであった。

さて、この生贄とは一体誰の事なのでしょうか?

実は登場人物の一人なんです!

ヒントは雪山、兎族、呪い、戒です!

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[一言] 実はというかもろル○やん(笑)
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