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閑話2 強斎は地球でもチートっぽい 後編

お久しぶりです

PCと格闘しながらやっと投稿できました

いい加減携帯で投稿できるようにしておいた方がよさげかもしれません…

「た、小鳥遊君!」

(ん?)


 入学して暫く経ち、もう春というには暑いとある日。

 下校しようとした大地の耳に、知った人物の名前が入ってきた。


(校舎裏か……内容は大体予想つくが……)


 大地は少しだけ考えた末に覗く事を決意した。

 好奇心に負けたのである。




「小鳥遊君! す、好きです! 私と付き合ってください!」

「……」


 大地が目撃したのは、ちょうど女子が勇気を振り絞って告白した時だった。

 そこで大地はふと疑問に思った。


(あいつ、ラブレターもらったことないって言ってたが……。嘘だったのか?)


 強斎が手に持っているピンク色の手紙。遠目に見てもはっきりとわかる『ラブレター』である。

 強斎はその手紙を見て、ゆっくりと口を開いた。


「君に質問がある」

「は、はい!」


「何故俺なんだ?」

「それは……その……カッコイイし優しいし……」


 強斎は顔色一つ変えずに再度口を開く。


「君は婚約の予定とかあるのか?」

「こ、婚約!?」


「ああ」

「え、えっと……その……あの……」


 強斎は暫く待つが、女子の方は少し経つと黙り込んでしまった。

 そして……。


「……そうか」


 そう言って、持っていた手紙を女子に渡した。

 そして、その意味は……。


「――っ!」


 女子は瞳に涙を溜めて、勢いよく走り去ってしまった。

 大地はその隙にこの場から離れようとするが……。


「おい、居るんだろ?」


 やはり見つかってしまった。

 大地はおとなしく強斎の前に姿を現す。


「人の告白を覗き見とは失礼なやつだな」

「お前の事だから告白とすら思っていないと思ったが、ちゃんと自覚はあったんだな」


「それこそ失礼だ。俺は女の子の好意に対しては敏感だと自負している」

「それだけは絶対にない」


 大地は大きなため息を吐いて、強斎を睨めつけるように見た。


「なんで断ったんだ?」

「? 断ったつもりはないが?」


 そして、強斎のその一言に唖然とした。


「あれで断ったつもりはないだと?」

「ああ」


「婚約どうこう言ってたじゃないか」

「付き合う前から結婚するかどうかなんてわかるわけないだろう。まぁ、付き合ったなら結婚までいきたいがな」


「手紙を返したじゃないか」

「? それがどうしたんだ?」


「……」

「どうした?」


 大地は強斎を何とも言えない目で見ていた。


(ここまでくると重症だな……いくらなんでも酷すぎる)


「なんだその目は」

「お前、ラブレターもらったことないって言ってたよな?」


「ああ、さっきのが初めてだ」

「初めてか……ならしょうがないのか?」


「何がしょうがな――――」

「ちょっと待って、誰か来たぞ」


「誰か? 誰なんだ?」

「……は? 何にも感じないのか?」


「? 感じるって何を?」

「気配とか――――」

「二人共はっけーん」


 大地が答えようとしたところに、一人の女子生徒が乱入してきた。


「強斎と大地はここで何をやっているのかな?」

「何だ、澪だったか」


 どこかいたずらっぽい雰囲気を漂わせる笑みで質問する澪。

 それを完全にスルーする強斎であった。


「何だとは何よ」

「いや、大地が大袈裟な事言うから警戒していたんだ」


「大袈裟?」

「ああ、気配がどうとか」


「大地……そういうのは中学二年生までにしようよ……」

「…………そうだな」


(気配を隠した俺には気付いて、澪には全く気が付かなかった? あの時の強斎が嘘をついているとは思えんし……)


「強斎、お前は一体何なんだ?」

「わお。唐突に難問出すなよ」

「そ、そんなことより早く帰ろうよ!」


 澪が少しだけ焦り気味だったが、二人はその焦りに気が付くことはなかった。


「あ、俺トイレ行ってくるわ」

「ん、いってらっしゃい」


 三人が校舎裏から出ようとした時、強斎はそう言って早々といなくなってしまった。


「……なぁ」

「強斎はね、多分生まれる世界を間違えたんだよ」


 大地が何かを言う前に澪がポツリと呟いた。


「それはどういうことだ?」


 『生まれる世界を間違えた』

 そう言われたら本来なら軽く受け流す大地だが、この時ばかりは受け流さなかった。


「強斎、さっき告白されたでしょ?」

「……ああ」


「その時に何か疑問に思わなかった?」

「……三つほどある」


「……」

「まず、強斎はラブレターをもらったことがないと言っていたが、あれは嘘だろう?」


「残念。本当だよ。私の知る限りはね」

「高校に入学してまだ半年も経っていないんだぞ? それなのにもう告白されている……おかしいだろ」


「私達の母校は小中一貫だったの」

「それがどうしたって言うんだ?」


「そして、強斎は小学生の時事件を起こした。そして、それがきっかけで強斎は異常に怖がられるようになった……」


 その時、澪が歯を食いしばって苦しそうにしていたのを、大地は見逃さなかった。


「強斎の事を好いているのはその事件に関係があるのか?」

「あはは……やっぱりわかっちゃった?」


「あんなにもアピールしてたのにわからない奴は、強斎ぐらいだと思うがな」

「そんなにわかり易かったかぁ……」


「事件については訊かない方がいいみたいだな」

「うん、そうしてくれると助かる」


「二つ目、強斎はなんであんな質問をした?」

「婚約がどうこう言ってた?」


「よくわかったな」

「うん、あれはただひねくれているだけ」


「本当にそうなのか?」

「多分ね」


「じゃあ三つ目……澪、お前は何者だ」

「小鳥遊強斎の嫁です」


「……茶化すな。何故強斎は澪の気配を感じ取れなかった?」

「だから、そういうのは中学二年生までにしようよ……気配とか私もよくわからないし……」


「……本当か?」

「うん」


(あいつのことを知ろうと思ったら余計に謎が出てくる……。本当に何者だ……?)


 大地が今までの収穫を整理しようとした時、澪がそう呟いた。


「強斎帰ってくるの遅いね」

「俺が見に行ってくる」


(直接強斎に訊きたいこともあるしな)


 そして、大地はその場を一旦去った。

 そんな大地の背中を見て、澪はため息を吐く。


「ごめん、やっぱり全部を話せる勇気は私にはない……大地を信用していない訳じゃないけど、強斎以外の男性はちょっと苦――――っ!!?」

「ちょっと眠っててもらおうか」


 いきなり背後から口を何かで塞がれ、何も喋れなくなった澪。

 校舎裏なので人通りもなく、助けも来なかった。


「んー! んー!!」

(誰!? 誰が私……を……)


 そして、澪は急激な睡魔に襲われ眠ってしまった。


………

……


「……何があった?」


 大地が強斎に合った時の第一声がこれだった。


「ちょっと肩がぶつかっただけだ」

「肩がぶつかっただけじゃ人は気絶しないぞ?」


 そう、二人の目の前には気絶した上級生が五人いたのだ。


「まぁ、いいじゃねぇか。大地、戻るぞ」

「あ、ああ」


 そして、二人がその場を立ち去ろうとしたとき、倒れている上級生の一人が不気味に笑った。


「もう……おせぇよ」

「……何がだ」


 何故か苛立っている強斎は、怒気を込めて問う。


「もう、鷹見さんがあの女を拉致した。俺達の勝ちだ」

「……鷹見?」


 強斎は大地の方を見る。

 大地の雰囲気は怒りに満ちていた。


「あの……クソ兄貴がぁぁ!!」


 大地はそう叫んで走って去ってしまった。


「あ、大地! ……おい、拉致したってどういうことだ」

「そのままの意味だ。鷹見さんは弟の前でその女を犯すんだってよ」


「犯す? 何故だ」

「知らねぇよ。ただ、かなり可愛いらしいから羨ましい限りだ」


「その女の名前は?」

「は? 教える訳ね――――がぁぁぁぁ!!! 教えます! 教えます!!」


 強斎は上級生の足を踏みつけて無理矢理にでも吐かせようとした。


「で、誰なんだ?」

「はぁ……はぁ……その女の名前は……洞爺み――――ぎゃぁぁぁ!! 足がぁ! 足がぁぁぁ!!」


 上級生の足は強斎に踏みつけられ、あらぬ方向に曲がってしまった。


「おい、澪はどこにいる」

「足がぁぁぁ……」


「足がじゃねぇよ!!」

「ぐふっ!」


 胸ぐらを掴み、無理矢理立たせてから腹部に膝蹴りを入れた。


「げほっげほっ!」

「いいからさっさと澪の居場所を吐けや!!」


 もう一度同じところに膝蹴りを入れる。


「ごめんなさいごめんなさい……」

「謝るより先に居場所を教えろって言ってるだろうが!」


 次に太ももを蹴る。

 鳴ってはいけない音が鳴り、5メートル程吹っ飛んだ。


「し、死ぬ……殺される……!」


 上級生は這いつくばって逃げようとするが、強斎は片手で頭を掴んで釣り上げた。


「なぁ、早く言わないと本当に死ぬぞ? お前」

「た、鷹見家です! だ、だから殺さないで!」


 強斎は手を離して、無言でその場を去った。


………

……


(くそっ! 俺の家庭の事情にあの二人を巻き込んでしまった!)


 大地は全力で自宅に向かっていた。

 そして……。


「クソ兄貴はいるか!?」

「結構早かったな」


 自らの家にたどり着き、兄の姿を見るや否や殴りかかろうとする。


「おっと、動くなよ。これが見えるならな」

「この……っ! 外道が!!」


 大地にナイフと眠っている澪を見せ付ける。


「はっ、生意気な……。まぁそれも今のうちだがな」


 大地の兄がそう言うと、ゾロゾロと門下生達が大地を囲んだ。


「お、お前ら……どうして……」

「すまん大地……許してくれ!」


 そう言って、大地に次々と殴りかかってきた。


「ちっ、これも兄貴の……どこまでも外道なやつだ」


 大地は大勢の門下生相手でも決して劣勢にならずに戦っていた……だが。


「っ!!」


 体が急に痺れて動かなくなってしまった。


「まさか……スタンガン?」


(あの野郎……ここまで堕ちたか……)


 大地が脱力したところを全員で取り押さえられてしまった。


「さて、やっと落ち着いたか」

「クソ……野郎……!」


「お前がどれだけ叫ぼうが、俺はお前の目の前でこの女を犯すだけだ。自分の女を目の前で犯される絶望を味わうがいい!」

「違う! そいつは関係ない!」


「近くで見れば見るほど可愛い顔してるじゃん。これからが楽しみ――――ぐはっ!?」

「!?」


 大地の兄が澪に触ろうとした時、何かに殴られたように吹っ飛んだ。


「おい、何澪に気安く触ろうとしてんだ」

「強斎!?」


「大地、後からゆっくりと事情を聞かせてもらうぞ」

「あ、ああ……」


「もう一度問う。何澪に気安く触ろうとしてんだ」

「貴様……飛び道具なんて小癪な!」


「飛び道具? これのこと……かっ!」


 強斎は何もないところを殴った・・・

 そして……。


「ぐっ!」


 またもや大地の兄は吹っ飛んだのだ。


「これはソニックブームと言ってな。手加減が難しんだ……よっ!」


 次に大地を取り押さえてる門下生達に向けてソニックブームを放った。


「まとめてかかってこいよ。澪が起きる前に片付けてやる」


 一対多数の喧嘩の始まりだった。


………

……


「ば、化物だ……!」


 強斎は、大地と大地の兄を残して全て気絶させた。

 その時間、僅か五分。


(あの動き……人間に成せる動きを超越していた……澪が言っていた『生まれる世界を間違えた』とはこのことなのか……?)


 大地はだいぶ動けるようになった体を起こして、自らの兄を見る。


「ひぃっ!!」


 大地の視線に気がついた兄はその場から急いで逃げようとする。


「おい! 待ちやが――――強斎?」


 大地がそれを追いかけようとするが、強斎がそれを止めた。


「なんで止める!? あいつは澪を――――」

「知っている」


「だったらなんで!?」


 強斎は無言で大地の兄が逃げた方向へ指差す。


「もう捕まっているからな」

「どういうことだ?」


「誰かはわからんが居るんだろ? 出てこいよ」


 強斎がそう言うと、気絶した大地の兄の胸ぐらを掴んだ大人が出てきた。


「親父!?」

「……いつから気づいてた?」

「今さっきだ。かくれんぼが得意そうだなおっさん」


「この度は我が息子が無礼を――――」

「そんなんどうでもいいから、そいつ返せよ。骨でも折らないと気がすまねぇ」


「骨……か」


 そう言うと、大地の親は兄の腕の骨を折った。

 その痛みで目を覚ます。


「がぁぁぁぁ!!? お、親父!?」

「もう一本折っておくか」


 そして、その痛みでまた気絶してしまった。


「じ、実の息子だよな?」


 流石の強斎も動揺してしまっている。

 大地が無言で肯定したことにより、動揺に加え苦笑いまでしてしまった。


「まだ足りんか? 次は足を――――」

「い、いや。もう充分だ。俺は澪が起きる前に帰る」


 強斎は澪を抱き抱えて、その場を去ろうとするが……。


「ちょっと待ってくれ」


 大地の親に呼び止められてしまった。


「まだ何か用があるのか?」

「ああ、門下生達の無礼については本当に済まなかった。だが、この門下生達未熟とはいえは全て私が鍛えた者たち。その門下生達を僅か五分足らずで倒した君の実力が知りたい」


「……要するに俺と手合わせがしたいと?」

「ああ」

「強斎! やめるんだ! お前がどれだけ強かろうと親父には勝てない!」


「大地は黙っておれ!」

「っ!!」


(くそっ……本能が親父を怖がっていやがる……。何とかして強斎を止めないといけないのに……)


 大地は強斎の様子を見るが、強斎は全く動じてなかった。

 それどころか微笑していたのである。


「いいぜおっさん。条件付きなら手合わせしてやる」

「ほう。条件付きとな」


「ああ、俺が勝ったら焼肉奢れ」

「「……は?」」


 強斎は冗談抜きにこの条件を出したのだ。

 そのことが大地の親にもわかったようで、肩を揺らして笑いを堪えていた。


「ふふっ、面白いやつだ……。私に勝ったらその報酬に焼肉とな」

「ああ、それなら手合わせしてもいい」


「いいだろう。肉が嫌いになるまで食わせてやる!」

「ふっ、そう来なくっちゃ……。大地、澪を頼む」

「あ、ああ」


 強斎から澪を任された大地は未だに戸惑っていた。


(や、焼肉!? あいつ、焼肉の為に親父と手合わせするのか!? 馬鹿なのか!?)


 そんな大地を置いて、強斎と大地の親は構えを取る。


「じゃあ行くぜ? おっさん」

「いつでもこい!」


 それを合図に二人は地面を蹴った。


………

……


「んじゃ、焼肉食いにまた来るわ」


 強斎はまだ寝ている澪を抱えて大地の家を出て行った。



「……まさか。この私が大地と同じ高校一年生に遊ばれるとはな」

「親父……」


 結果は圧倒的強斎の勝利。

 しかも、開始十分後に澪が起きそうだという理由で瞬殺されたのだ。


「あいつは何者なんだ?」

「俺にもわからん。ただ――――」


 大地はまだ痛む体にムチを打って、家を出ようとする。


「馬鹿だということはわかっている」


 そして、大地は強斎のカバンを持って強斎の後を追いかけた。


………

……


 大地が家を出てすぐに強斎と鉢合わせをした。


「お前、澪はどうした?」

「起きて殴られて逃げられた」


「やっぱ馬鹿だわ」

「うるせぇ」


 強斎は大地からカバンを受け取り、お礼を言おうとするが……。


「おい、大地」

「なんだ?」


「今すぐに病院に行け」

「は? なんでだ?」


(確かにスタンガンにやられたが……病院に行くほどダメージを受けてないぞ?)


「お前、そろそろ倒れるぞ?」

「……は?」


「足の方にダメージが行き過ぎている。手遅れになる前に病院へ行け。行かないと俺が無理矢理連れて行く」

「わ、わかった! 病院に行ってくる」


 大地はそう言って病院へ向かった。


「あんまり走るんじゃねぇ!」

「早く病院に行かせたいのか、行かせたくないのかどっちなんだ!?」


 そんなやりとりをしながら強斎は大地を見送った。

 そして……。


「済まないな。お前の足には何の異常もない。ただの胸騒ぎだ」


 そう言って、強斎はスタンガンを眺めた。


「規定値は超えていないから大丈夫なはずだがな……っと、もうこんな時間か」


 すっかり周りが暗くなっていることに気が付かなかった自分に苦笑いをして、強斎は歩み始めようとする……が。


「あれ? そう言えばもう来週から夏休みじゃん……。よし、夏休みに入ったらこのスタンガンを……ふふふ……」


 そうブツブツ言いながら自宅に帰るのであった。

そして、このスタンガンが鈴ちゃんを助ける武器となるのです!

で、大地くんはそのまま入院させます。


次回からは暫く勇者視点、その後再会まで強斎視点になるかもしれません。



皆さん、クリスマスはどう過ごしましたか?

自分はカラオケ行ってその帰りに車に轢かれそうになりました。

皆さんも車には気をつけましょう。

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